シンエイ通信【令和7年11月1日作成 191号】
◇九州木材商況 着工戸数は改善
九州・沖縄8県の8月の新設住宅着工戸数は6140戸で前年同月比20.9%減。改正建築基準法が施工した4月以降6月まで大幅な減少が続き、7月は同6%減まで回復していたが、再び大幅減に転落した。熊本以外の全県で持ち家が減少。
秋需の兆しが見え受注が増えたり、これまで少なかった輸出や直販などのルートでグリン材のまま出荷したりといった事情で忙しい製材メーカーもあるが、九州全体では厳しい状況が続いている。
販売店関係者からは、マンションや大手ハウスメーカー住宅の割合がふえているため、地場工務店の受注と地場企業のかかわる仕事量は数値以上に大きく減っているとの指摘が上がる。リフォーム向けは好調だが、細かな対応が必要なうえ、新築向けと異なり製品の必要量が読みづらい。
南九州では畜産業の売れ行き不振が影響し、牛舎の受注が少ない。非住宅の案件があっても大手ゼネコンが関わることで地場企業に仕事が回ってこない場合もあり、住宅向けが落ち込む分を非住宅で賄おうとしても厳しい。
天候の安定や猛暑からの解放により林業事業体の作業時間が増え、出材量が回復。杉は弱保合、桧は弱含んだ。
【国産構造材】
丸太高製品安続く
住宅着工戸数の減少により、製品需要は長らく低迷している。特に構造材は影響が大きい。メーカー、製品市場ともに若干の秋需の兆しが見えており、9月以降、徐々に受注が伸びてきた。ただ、住宅需要は回復していないため、取引のあるプレカット工場や工務店の受注状況により、荷動きが二極化している。
製品価格はほぼ横ばいだ。メーカー関係者は「丸太高製品安で価格があっていない状況。
全体的に5,000円/㎥づつ上げたいが、現状の需給状況だと難しい」と話す。
【国産羽柄材】
価格は安定
羽柄材の荷動きはリフォーム向けの好調を受けて構造材よりも良い。杉羽柄材専門メーカーは仕事が多く、当面の間忙しい見通しだ。だが、新築向けは不振が続く。
丸太高製品安は続いており、製材メーカーは値上げしたい意向でタイミングを探っている。ただ、需要が上向かない限り値上げできず、厳しい状況に置かれている。
製品価格はほぼ横ばい。グリン材のまま輸出して、中国で乾燥後2次加工され国内ビルダーに戻る場合もある。
【外材】
需要回復みられず
住宅需要に盛り上がりは見られず、米松平角、欧州材構造用集成材などの荷動きは横ばい。プレカット工場の稼働率は回復しつつあるが、遅れていた現場への対応などが多く、資材発注を増やす動きには至っていない。
米松平角は、KD材・グリン材ともに変わらず横ばい。構造用集成材は国内メーカー品の先高観があるため、一定量を手当てする動き。米松集成材が居所高の為、米松・杉異樹種構造用集成材に引き合いが出ている。
小割材は米材、赤松とも居所高が続き、一定の需要層からの引き合いにとどまる。
【集成材】
円安で交渉難航
構造用集成材の荷動きは、8月に落ち込み、9月下旬から上向き始め、10月は全体的に需要回復の実感が出てきた。
国内集成材メーカーのなかでは、8、9月は生産量を抑える様子も見られたが、10月の生産量は今年上半期のピークだった6月に近づく見通しとなっている。非住宅建築物向けの大断面サイズも一定の引き合いが出ているようだ。地域によってばらつきはあるものの、11月も同程度の荷動きが続くとの見方が多い。
需要に相場を押し上げるほどの勢いはないが、高値ラミナの消化が進み始めたメーカーからは、コスト転嫁を図るべく、11月納品分を目指した値上げのアナウンスが出始めた。
欧州産地との第4・四半期契約分の交渉は、積み月の10月に入っても長引き、中旬時点で大勢がまとまっていない。もともと年明けの需要不透明感を背景に日本側の買い気は低かったが、10月上旬から為替が1ユーロ177円と対ユーロ史上最安値を更新する急変を見せたことで、交渉がさらに難航している。
構造用集成材は、為替の急変前に、一部の大手サプライヤーが提示数量の成約を固め、ほかにも一定の成約が見られたが、ラミナはほぼまとまっていない状況だ。時間的に10月積みの成約数量が限定的となることは確定で、年明け1~3月の入荷量は、今年と同様に低水準となる可能性が高まった。
【合板・建材】
冷静な荷・値動き
針葉樹構造用合板の荷動きは横ばい、秋に向けた盛り上がりには欠ける。他地域ではコスト増などから値上げ唱えとなっているが、九州内は居所高で安定していたことから、買い方は冷静な対応。価格は変わらず横ばい。ただ、他地域からの供給が多い長尺合板などは強基調にある。
厚物合板への引き合いは堅調だが、非住宅物件や省エネ対応などが支えてり、戸建て住宅向けは伸び悩む。流通業者も積極的に在庫を積み増す状況にはない。
◇林野庁が「木の街」宣言企業を募集 改正「SHK制度」の活用促す
農林水産省・林野庁は、建築物における木材利用の推進や、木材利用効果の「見える化」に取り組むことを宣言する「『森の国・木の街』づくり宣言」への参加自治体や企業、団体を募集している。宣言の趣旨に沿った取り組み内容を検討の上、登録フォームから申請することで、宣言した自治体・企業・団体として認められる。
宣言を行った企業などには、農林水産省から木材利用などに関連する情報が提供されるほか、自社のウェブサイトや名刺などで取組をPRすることが可能となる。応募期間は、2026年3月331日まで。10月15日時点で16自治体、97企業・団体が同宣言を行っている。
同宣言の柱の一つとなる木材利用効果の「見える化」では、26年4月に改正・施行を予定している「SHK制度」(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)の積極的な活用を勧めている。「SHK制度」は、温室効果ガス(GHG)を一定量以上排出する企業などに、GHG排出量の算定と国への報告を義務付けるもので、報告を受けた国がデータを集計し、公表する制度となっている。
今回の改正で、企業や自治体などが木材を使って新築・所有する建築物の炭素貯蔵量を、GHG排出量から差し引いて報告することが可能となる。「SHK制度」の特定排出者数は全国で1万3000事業者を超え、企業などの排出量の約7割を占めている。
報告が可能となる建物は自社などが所有する建物で、中高層建築物では自社ビル、賃貸ビル、賃貸マンション、低層建築物では自社事務所、店舗、倉庫などが想定される。なお、「SHK制度」で炭素貯蔵量の報告が可能な木材は、「合法性が確認された国産材」であることから、地域材の利用を進める上でも有効となる。
◇大屋根リング材 能登の復興住宅資材に生まれ変わる
石川県珠洲市は22日、大阪・関西万博の大屋根リングの木材の一部を日本国際博覧会協会から無償で譲渡されることが決まったことを受け、同市が進めている災害公営住宅資材の一部に利用する方針を明らかにした。大屋根リング解体から木材加工を経て復興資材として再利用される時期は未定だ。
珠洲市は7月末に日本国際博覧会協会による大屋根リングの再利用に応募し、9月末同協会は珠洲市への無償譲渡を決めた。
市によると、無償で得られる木材は42センチ角の柱や21x42センチ角の梁合わせて1535本のほか、幅90、2398x8220ミリをはじめとするCLT51本など、合わせて1200立方㍍。年内に譲渡契約を結ぶ予定という。
解体された木材の一部はファーストウッドの木材加工場で再整備されて住宅資材として再利用される。設計会計者は、可能な限り原型を尊重して建設する考えという。
大屋根リングは全周2キロ、木材2万700立法㍍による巨大木造物だが、万博閉幕後は全体の10分の1を残して解体される計画だ。珠洲市が譲受する木材はそのうち4・4%分に相当する。
珠洲市は能登半島最北端にあり、2024年1月の能登半島地震で死傷者406人の被害に遭った。
住宅被害は全壊1754棟を含み、全5598棟に及ぶ。市は29年度までの5ヵ年計画で災害公営住宅を700戸建設する計画で、その計画に大屋根リングに使われた木材の再利用を考えている。
市の環境建設課によると現在2団地で30棟(1棟当たり9戸)が建設済みという。
1戸の床面積は45平方㍍、55平方㍍、65平方㍍、75平方㍍の4タイプ。
同課は、災害復興住宅地の選定から竣工までには時間を要するとして、建設時期は明らかにしていない。
◇高気密型床下点検口 熱貫流率0.26W/(㎡・k)の高断熱タイプ
城東テクノ(株)の人気シリーズ「高気密型床下点検口」の高断熱026型のご紹介。

(高気密型床下点検口 高断熱026型)
法律の改正に伴う住宅の高断熱化もあり、床下点検口部とまわりの床の温度差を無くしたいという要望に応え、熱貫流率をこれまでの0.36W/(㎡・k)から0.26W/(㎡・k)へ大幅に上げております。
今回の高断熱026型のラインアップ追加により、これまでの断熱型、高断熱型と合わせて3種の断熱性能からニーズに合わせてお選びいただけるようになりました。
■床全体と床下点検口部の温度差イメージ

また、フタ部分のシールパッキンと枠部の気密材の二重の気密対策、さらにはJoto製の高気密型床下点検口の大きな特徴である「スライドコア方式」により、施工者の技術レベルに左右されることなく省施工で高い気密性を発揮します。
◇LIXIL、電気錠「FamiLock」と決済スマートリングの連携開始
LIXIL(東京都品川区)は、玄関ドアのスマートロックシステム「FamiLock(ファミロック)」の登録可能キーの1つに指輪型決済端末を追加した。
「ファミロック」は、スマートフォン、リモコンキー、タグキーなどからカギを選べる電気錠。スマホやリモコンキーをポケットに入れたままワンタッチで玄関ドアの施解錠ができる利便性が支持されている。
今回新しいキーデバイスとして、決済スマートリング「EVERING(エブリング)」が加わった。
EVERING(東京都中央区)が2021年から展開するVisaタッチ決済対応のスマートリングで、特徴は充電不要、防水仕様であること。
鍵やスマホを持たなくても指1つで玄関ドアの施解錠が可能になるうえ、充電切れの心配がなく、日常のアクセサリーとして常に身に着けているものであることから外出中の鍵紛失リスクを軽減する。