シンエイ通信【令和7年9月1日作成 189号】
◇九州木材商況 大幅な着工減続く
九州・沖縄8県の6月の新設着工戸数は合計5899戸で前年同月比26.5%減。
改正建築基準法が施行された4月以降は大幅な減少が続いている。着工戸数と持ち家の着工面積はともに九州全域で減少しており、住宅・木材業界全体が厳しい状況だ。
住宅会社の戸建て販売状況は二極化している。顧客向けの宣伝活動が得意な住宅会社は安定して受注できており、好調な住宅会社関係者は「住宅需要の落ち込みは法改正前に発生した駆け込みの影響を受けた一時的なものだ」と先を見据える。
一方、住宅価格上昇によりローンが通りづらい状況が続き、戸建て購入希望者が減少し苦戦を強いられる住宅会社も多い。住宅購入を断念しアパートに流れる若者が多いとの指摘もある。
そのため製品需要も落ち込んでおり、プレカット工場も販売店も全体的に仕事量が少ない。長らく丸太高製品安が続くことからメーカーの採算を危惧する声が複数聞かれた。
製品価格は維持しているものの製品市場での販売量は減少しており、市場関係者が集まる会議では市場の存在意義を模索する必要性や市売をコンパクトにせざるを得ないことなどが議論される。
【国産構造材】
製品市場は販売苦戦
住宅着工の減少に合わせ製品需要の低迷が続いている。製品市場では4月~6月の売上高が前年より3割~4割減少したところがある一方、非住宅物件への製品の販売などで前年並みを維持しているところもある。
材木店やプレカット工場が仕事の確保に苦戦する中で市場は工夫して販売しているが、「製品市場が延びる希望が見えない」との声も聞かれる。
製品価格はほぼ横ばい。盆休み以降は秋需により少しでも荷動きが上向くことが期待される。
【国産羽柄材】
メーカーは採算悪化
リフォーム向けは比較的安定して需要があり、構造材よりは引き合いがあるものの住宅向けが低調で足を引っ張っている。少なくとも盆前までは厳しい状況が続くとみられており、先行きが不安視される。
今年に入りメーカーの倒産が続いているため、メーカー関係者からは「明日は我が身。荷動きは悪く必要な丸太のみを手当てしている」との声が聞かれた。
製品価格は横ばい。杉KDの引き合いは減少しているが、杉グリン材の引き合いは更に減少している。
【外材】
国産欧州材製品には手当て
足元の住宅需要は厳しいままで、プレカット工場や流通業者は横架材なども必要買いに徹している。
九州北部は米松平角や異樹種構造用集成材、中南部は杉平角を中心に対応するが、欧州材輸入製品の入荷量が少なく、国内での供給メーカーも絞られてきているため、国内産欧州材構造用集成材には一定の引き合いが続く。集成管柱は有力ビルダーを中心に杉の採用が増えており、価格競争力も含めて荷動は堅調。
異樹種製品を含めて集成材の中での国産材比率はじりじり上昇している。
小割材も杉・桧KD製品への移行が進んでいる。米材輸入製品、原板などは産地価格の上昇で手当てが難しくなっている。
【集成材】
引き合い一服
着工戸数の落ち込みを背景に、構造材の需要は7月以降、全体的に低調が続いている。そのなかで、年初から比較的堅調に推移してきた国内産構造用集成材の引き合いも8月は一服している。
夏季休暇でプレカット工場の稼働日が少ないことや、5月以降、輸入完製品の入荷が1月~4月と比べて多い水準が続いている。
内外産とも需給が引き締まっていた上半期に比べ、7月以降、構造用集成材は樹種を問わず全体に需給がやや緩んでいる様子。ただ、集成材工場も8月は稼働日が少なく、連休の猛暑による熱中症対策で生産効率がやや低下していることもあり、今のところ需給は若干緩い程度に収まっている。
9月以降は、上半期に比べ実需が多少上向くとの見通しは多い。一方で、5月以降増加した輸入完製品の入荷量は再び減少する見込みだ。さらに、国内の集成材メーカーでは、7月末に1社が生産を停止し、8月中旬に1社が火災で1ラインを焼失。小断面集成材を中心に国内産の供給能力が縮小したこともあり、9月~10月で需給は引き締まってくるとの見方が出ている。
6月以降の記録的な円安の影響を受け、ラミナの仕入れコスト上昇は年内いっぱい続く見通し。集成材メーカーは、7月の値上げが浸透した後も引き続き採算が厳しい現状を踏まえ、もう一段のコスト転嫁を図る意向を強めている。
【合板・建材】
厚物に引き合い増も
住宅需要は建築確認申請の遅れなどで停滞しており、 針葉樹構造用合板の荷動きも活発さに欠ける。ただ、秋に向けてこの反動である程度の仕事は出てくるものとみられ、プレカット工場、流通業者などは冷静な対応。
価格は値上げの動きは落ち着いた様子。非住宅木造物件向けの荷動きも端境期に入っている。
ただ、今後出てくる住宅需要はGXや省エネ対応型となり、厚物を中心に引き合いが増える可能性がある。
輸入合板への引き合いは薄いまま。各種資材高により建設需要自体が少なく型枠合板の需要量が停滞。入荷は少ないがコスト高は変わらず、必要になった時に手当されている。
◇コスト高と板挟み 「中国木材」
米国の関税政策や内需の停滞が商品市況の先行きを読みにくくしている。
2025年末に向けての見通しを各分野のキーパーソンに聞いた。住宅の柱や梁に使う製材品の値上げを打ち出しています。「輸入丸太を使う一般流通材で1立方メートルあたり3,000円前後の値上げを打ち出した。原材料高のほか、人件費や物流費の上昇が大きく影響している。工場の修繕費や火災で破損した工場の再建費用も膨らんだ。全体的に採算は厳しい」国内の製材品の需要は落ち込んでいます。
建築基準法が改正された4月以降、改正前の駆け込み需要の反動減が想定以上だった。これまで建築確認が不要だった規模の木造建築物でも確認が必要になったのに加え、省エネルギー対策の断熱性能の審査に時間がかかるようになったのではなかい?特に中小工務店による着工が大きく減小している。
住宅需要そのものは厳しい状況。例えば中国地方では、自動車メーカーのマツダへのトランプ関税による産業への不安感がある。木造を含め全体的に住宅価格が上昇していることや金利の上昇でローンの返済負担が増えていることも、買い手の慎重な行動につながっている。
従来は需要減を受けて製品価格も下がり易かったが、足元は下げる余地が限られている。
原料を含めコストの上昇分を転嫁しなければ生産を維持できないからだ。
遅れている建築確認の審査が進み、着工が順調になれば製材品の需要が増えると期待したい。
世界的な木材相場の高騰「ウッドショック」を受け、輸入丸太を使う事が多い製材品の相場が乱高下しました。国産丸太の利用は増えていますか。
当社でも国産の杉を使った柱材は出荷量が前年を上回るペースで推移している。全国で安定した品質で製品を供給できるようになったことが大きい。一方、気を伐採したあとの植林率は採算が悪く低水準だ。
長期的にみると国内で供給できる丸太の量が減っていくことを懸念している。
価格変動の抑制が課題
2021年頃に始まった「ウッドショック」以降、主要通貨に対する円安の進行も重なり、輸入原料を使って製材品は採算の厳しさが続いている。
人件費の高騰など国内の構造的なコスト要因もある。住宅需要が伸び悩んでも簡単に値下げできないというのがメーカー側の事情だ。
木材業界としては、コスト高の構造でも品質と価格を安定させる体質へと強化していくことも欠かせない。
製材品価格を大きく変動させないことが住宅需要の安定にもつながりうる。
◇居住サポート住宅改修事業を募集
国土交通省は「2025年度 居住サポート住宅改修事業」を募集している。
既存住宅等を改修し、高齢者や子育て世帯など住宅確保に配慮を要する人に見守りなどの入居中のサポートを提供する住宅「居住サポート住宅」とする民間事業者等を支援する。
支援要件は、居住サポート住宅の認定を受けること、公営住宅に準じた家賃の半額以下であることなど。
補助内容は、バリアフリー改修工事、耐震改修工事、子育て世帯対応改修工事など。
補助率及び限度額は、費用の3分の1とする。(1戸当たり上限50万円)
応募締め切りは12月12日までとなる。
「居住サポート住宅」は低所得者、高齢者、障碍者、子育て世帯といった住宅確保要配慮者向けに、見守りなど入居中のサポートを合わせて提供する住宅です。
◇大建工業、吸音性を備えた防音室向け断熱材
大建工業(大阪市)は、初の断熱材製品として、吸音性能を備えた壁・天井用の「断熱吸音ウールR」と床用の「断熱吸音ウールB」を6月23日に発売した。
同社は、吸音天井や防音ドアといった建築音響製品の開発・製造・販売を1982年から手がけており、住宅分野ではホームシアターや楽器の演奏、在宅ワークに応じた防音室の音の測定から設計、提案までを得意としている。
今回発売する壁・天井用、床用の断熱材は、音響事業で使う「吸音ウール」の吸音性能に断熱性能を担保したもの。素材はポリエステル繊維で、壁・天井用は2.7㎡・K/W、床用は2.4㎡・K/Wの熱抵抗値を確保した。
1枚で断熱性能と吸音性能を兼ね備えているため、防音室で断熱材と吸音材を別々に施工する必要がなくなるとともに、壁厚や床高を増やさずに広い空間を確保。省施工にもつながる。
また、構造・外装材・構造面材・内装材との様々な組み合わせで国土交通大臣認定を取得しているため、防火構造・準耐火構造が求められる地域にも対応する。
左:「断熱吸音ウールR」
ポリエステル繊維13K。熱伝導率0.039W/m・K、熱抵抗値2.7㎡・K/W。厚106mm、430mm×10.9m/巻。税別5万38800円/梱(3巻入り)
右:「断熱吸音ウールB」
ポリエステル繊維・20K。熱伝導率0.038W/m・K、熱抵抗値2.4㎡・K/W。厚90mm、820mm×910mm。税別3万35700円/梱(6枚入り)
◇パナソニック 極細フレーム「内窓」種類・色拡大
パナソニック ハウジングソリューションズ(大阪府門真市)は、 スリムな枠が特徴のリフォーム用内窓の窓種を拡充して8月25日に発売する。同社は昨年7月に、「リフォーム用二重窓パナソニックの内窓」を発売。
今回、品揃えを大幅に強化する。これまでは引違い窓2枚建のみだったが、引違い窓4枚建、開き窓、FIX窓、浴室用などの窓種を追加し住宅のほとんどの窓に内窓が取り付けられるようになった。開き窓は内側に開くデザインで、テラスドアや勝手口ドアにも対応する。
引き違い窓の枠幅寸法は55mm、開き窓・FIX窓は48mmと、「業界最細」というスリムな枠フレーム設計により既設の窓枠内にすっきりと納まる。約半日~1日で窓リフォームが完了。