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シンエイ通信【令和7年6月1日作成 186号】
シンエイ通信【令和7年6月1日作成 186号】

◇九州木材商況
九州・沖縄8県の3月の新設住宅着工戸数は合計1万804戸で前年同月比23.8%増と大きく伸びた。
2月に続き3月も、改正建築基準法施行前の駆け込み需要の影響が大きかった。大工不足などで工事が延び、4月までは着工数は堅調だったとみられる。5月までは仕事を確保できているプレカット工場もあるが、駆け込み需要分の仕事が終了した後の製品の荷動きや仕事の確保を懸念する声が多く聞かれた。
住宅着工が伸びたことで順調に仕事を確保できているプレカット工場も、今後に向けては、非住宅向けの加工で住宅向けの落ち込みを補う方針のところが多い。
着工増に加え外材の代替需要も後押しし、国産材製品の荷動きは好調だ。KD材製品は全体的に価格を維持した。丸太高製品安は続いており、メーカーは依然として厳しい状況に置かれている。今後も今以上の価格で販売していきたい考えだ。
国産材原木は、米国の関税措置により輸出向けの引き合いが弱まっているものの、C材はバイオマス向けなどの需要もあるため問題視はされていない。ただ、原木価格が全般に弱含む可能性はあるという。
【国産構造材】
4月までは順調
国産構造材の荷動きは、改正法施行前の駆け込み需要による仕事のずれ込みで4月までは比較的順調だった。
外材の代替需要はあるものの、住宅需要の減少は避けられないとみられており、5月以降は本格的に製品需要の落ち込みが懸念される。
メーカー関係者からは不安の声が聞かれた。
構造材は特にメーカーからプレカット工場への直送が多いため、製品市場は駆け込み需要の恩恵を受けられない場合もあり、販売に苦戦している。
【国産羽柄材】
間柱中心に好調
外材の代替需要や2月~3月の住宅需要が好調だったことが影響し、好調な荷動きが続いている。特に間柱は引き合いが強い。価格は構造材と同様、メーカーによる粘り強い価格交渉で1000円~2000円の値上げが浸透して以降は変わっていない。ただ、丸太は高値を維持しており、メーカーの採算状況の改善には至っていない。住宅価格の高騰でリフォーム向けの荷動きは長らく好調で、この流れは続くとみられている。
【外材】
全般に値上げ進む
外材構造材は、全般に強気調で推移している。国産欧州材構造用集成材、米松国内挽き製品ともメーカーによる値上げが進み、米松平角KD材・集成材ともに値上げとなってきた。住宅需要は低調から抜け出せないが、杉KD製品など国産材も値上げ唱えとなっており、プレカット工場、流通業者とも全般に値上げを受け入れざるを得ない。米松羽柄・小割材は、居所高が続き、引き合いは弱い。Wウッド間柱と競合している。
【集成材】
輸入品の入荷低水準
木材全体の荷動きは、5月の連休明けも比較的落ち着いている。3月の着工数が前年同月比39.1%増と大幅に増加した分の需要が、荷動きに反映されてきたとの声もあるが、手ごたえが薄いとの実感も多く、バラツキが見られる。そのなかで構造用集成材の荷動きは、輸入品の入荷量が少ないため、国内集成材メーカーに補充買いが入り、国内メーカーの受注は少なくとも前年同月並みは確保されているようだ。
輸入構造用集成材の3月の入荷量は2万7000立方㍍で、2010年2月以来15年ぶりに月間入荷量が3万立法メートルを下回った。1月~3月の累計入荷量も前年同期比22.6%減で、輸入品入荷量の減少ぶりがうかがえる。一方、国内集成材メーカーの生産・受注は年初から比較的堅調で、おおむね前年同期並みか若干増が毎月確保されている。堅調な引き合いを背景に、国内メーカーは生産コストの上昇分を転嫁する動きを続けている。特にWウッド・Rウッドラミナは、産地価格が上昇した25年第1・四半期契約分が入荷の中心となってきたことで、メーカーの負担が増えている。ただ、住宅会社からプレカット工場への値下げ圧力が続いていることや、輸入品と国内産が同水準の価格帯になっていること、構造用集成材全体では需給が均衡していること、6月の需要の不透明感などが重なり、値上げ交渉は難航しているようだ。
【合板・建材】
堅調も生産は慎重
針葉樹構造用合板の荷動きは堅調。非住宅木造建築や賃貸住宅などで一定の需要があり、厚物などを含め手当さえれている。価格は横ばい。他地域でメーカーによる値上げが進んでいるが、九州では価格変動が少なく、買い方は必要買いを続けている。一方、戸建て住宅需要の先行きは不透明で、梅雨入り後は合板に動きも停滞することが予想されるため、メーカーは生産に慎重な姿勢をとっている。輸入型枠用合板の荷動きは低調。円高傾向にあるとはいえ、価格は居所高のままで、需要に応じた手当にとどまる。非木質建材は、省エネ対応住宅への補助事業などが出ており、問い合わせや見積りなどが増えている。
◇GX志向型住宅への申請、開始1週間たらずで予算の7%に到達。
国土交通省と環境省が実施する子育てグリーン住宅支援事業で、新築の注文住宅の交付申請の受け付けが5月14日に開始され、GX志向型住宅で予算総額の7%に達した。
GX志向型住宅の申請受け付けは3期に分かれており、このうち第一期(5月14日~5月31日)の予算額は、総額500億円の30%にあたる150億円が上限となっている。したがって、受け付け開始から1週間たらずで第一期予算の26%に達したことになる。

第一期・第二期では、各期の予算上限額に達した場合に一旦受け付けが停止されるが、翌月から申請受け付けが再開される。さらに各期の予算が上限に達しなかった場合は、残予算が翌期へ持ち越されることとなっている。そのため各期内に申請が間に合わなくても、次期の早いタイミングで申請すれば、補助金が受け取れない状況は回避できる。
一方、7月1日から開始される第3期では、予算上限の500憶円に達し次第、受付を終了する。したがって申請が遅れた場合に、予算切れによって補助金が受けられなくなる場合も想定される。

GX志向型住宅は通常の住宅よりも高い省エネ性能が求められるため、建築コストが高くなる傾向がある、予算達成状況を日々公開するとともに、なるべく早めの申請を呼び掛けている。
◇長期優良リフォームの事業者登録開始 交付申請は5月下旬以降
国土交通省は5月20日から、2025年の長期優良住宅化リフォーム推進事業について、事業者登録および住宅登録の受け付けを開始した。今年度は、Ⅰ期とⅡ期に期間を分割して交付申請を受け付ける。Ⅰ期の交付申請受け付けは5月下旬以降に開始する予定。同事業は、インスペクションを行い維持保全計画・履歴を作成したうえで、改修後の耐震・省エネ性・耐久性が向上する性能向上リフォームに対して支援を行う。補助率は3分の1で、認定長期優良住宅型は160万円/戸、強化基準型および提案型では最大80万円/戸を上限とする。
受付期間のⅠ期は、事業タイプと建物の形態ごとに設定。認定長期優良住宅型の戸建て住宅は5月下旬から9月末とし、認定長期優良住宅型の共同住宅及び評価基準型は6月下旬~9月末とする。
尚、Ⅰ期は区分ごとに上限額を設定。予算が残余が出た場合はⅡ期(10月上旬~12月22日迄)に繰り越すが、Ⅰ期で年度予算の上限に達した場合Ⅱ期の受付は行わない。

◇改正下請法が成立、運送委託も対象に「下請」の呼称も変更
事業者間の取引適正化を図るための「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)が5月16日、参議院本会議で成立し、2026年1月1日に施行されることとなった。今回の改正では、中小事業者の利益保護を強化するため、協議を行わずに価格を据え置くことや手形による支払いを禁止。さらに適用基準に従業員基準を追加し、規制・保護の対象を広げる。また、これまで対象外だった運送事業者への委託も新たに対象となり、中小企業同士や下請法の対象外の取引にも指導・助言・勧奨が行われるようになる。

企業間で発注者と受注者が対等ではないという印象を与える「下請」の呼称についても見直しされた。「下請事業者」を「中小受託事業者」、「親事業者」を「委託事業者」に変更する。これに合わせて法律名も改正される。
手形禁止で資金繰り改善へ
価格を据え置く取引への対応では、十分に協議することなく価格を据え置いたり、コスト上昇に見合わない価格を一方的に決めたりする行為を禁止。中小受託事業者が価格協議を求めたにもかかわらず委託事業者が協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりする行為も禁止される。

手形払いの禁止では、下請代金の支払い手段の一つとして用いられている手形による支払いを禁止。受注者に資金繰りに係る負担を求める商慣習を是正する。電子記録債権やファクタリングについても、支払期日までに代金に相当する現金を受領できないものについては認めないこととなった。これにより受託事業者が現金を受領するまでの期間が短縮される。

対象基準の見直しでは、実質的には事業規模が大きいにも関わらず、資本金を調整することで適用を逃れる企業があったことから、従業員数300人(製造委託などの場合)または100人(役務提供委託などの場合)の区分を新設した。これにより資本金の規模を問わず、一定規模以上の事業者が規制の対象となる。
中小企業振興法も改正へ
今回の改正では他に、下請け中小企業振興法の改正も合わせて実施。▽多段階事業者の振興事業計画への承認・支援▽対象取引への運送委託の追加▽地方公共団体との連携強化▽主務大臣による執行強化を盛り込んでいる。
◇最大21kWh、高耐久・省施工なハイブリッド蓄電システム
エクソル(東京都港区)は、太陽光発電と組み合わせて使用するハイブリッド蓄電システムの新モデル3機種を発売した。
住宅から産業用まで幅広く対応。
電気機器の防塵性・防水性を示す国際基準・IP等級で「IP66」を取得し、筐体を水深40cmに72時間浸すテストを実施してクリアした。塩害地・寒冷地のような過酷な環境に設置でき、台風で停電しても安全に動作し、蓄えた電気を使うことができる。
蓄電池内には充放電の中枢となる電池セルが配置されており、熱・湿気から守るための温度調整システムを搭載。
内部の故障などが原因で電池パックの温度が上がった場合には、酸素を排出して酸素濃度を下げることで、燃焼を止める設計になっている。
太陽光発電とハイブリッドパワーコンディショナの設置後の追加設置に対応。蓄電池システムの容量は最大21kWhまで後付けで増やすことができる。
蓄電池制御ユニットと電池パックの接続はケーブルが要らず、同社従来製品と比べて施工時間を大幅に短縮する。

ケーブルレス接続で施工時間を大幅に短縮
