お知らせ
シンエイ通信【令和6年4月1日作成 172号】
シンエイ通信【令和6年4月1日作成 172号】
◇九州木材商況
住宅需要の不振で木材の荷動きは良くない。資材高騰などで住宅価格が上昇し、ローコストビルダーも住宅を売りづらくなっている。1月の九州沖縄8県の新築住宅着工数は合計7278戸で前年同月比6%増となったが、実感は乏しい。
プレカット工場の稼働率も全体的に底ばいで、九州の大手プレカット工場社長は「坪受価格の下落と受注減のダブルパンチ」と現状を語る。木材市場流通があるもののプレカット工場が構造材・羽柄材を積極的に手当てしないため、木材の荷動きも停滞化が拭えない。プレカット工場では営業の広域化のほか、固定費を優先することで対応している。製材メーカーも営業強化に加え、原木価格の居所が高いなか、従来は小径木を挽いていた工場が比較的安価で手当てできる中目材に手を伸ばすケースもある。構造材よりも動きのある羽柄材を多く挽いている製材工場もある。
製品価格を上げられる状況ではなく、逆にメーカーには値下げ要請も届いている。人件費や製材加工費など様々なコストが上昇傾向にあるなか、メーカーは現在の価格水準で踏みとどまりたい構えだ。
【国産構造材】
柱不振長引く
製材メーカーによって受注状況はまだら模様だが、住宅需要が弱く、杉KD柱角の販売不振が長引いている。荷動きはあるが、売れ筋を見つけづらい。製材・加工コストは上昇傾向だが、製品全般の価格を上げられる雰囲気はない。
原木価格が高止まりするなかで、製材メーカーは比較的割安感のある原木を手当てするため、扱う丸太を小径木から中目に変えたり、羽柄材の量産化も含めて製材品目を工夫したりする動きがある。
【国産羽柄材】
セット販売も不発
杉KD小割製品のうち、胴縁などは長さの違いで売りやすさが変わってくる。メーカーでは、加工の過程で生じる売りづらい悩みの種になっている。羽柄材の量産メーカーは、売りづらい製品を杉KD間柱芯去り材などの売れ筋と抱き合わせて販売しているが、在庫として残ることが多い。
WウッドKD間柱などから杉KD材への代替需要は顕在化していない。杉AD材でも高値で取引されている。
【外材】
荷動き一服気味
住宅着工が振るわないなか、米松KD平角の荷動きは落ち着いている。価格も全体的に横ばい。
Rウッド集成平角材なども含め、国産材より居所は高い。
九州は国産材を使った家造りが中心で、構造・羽柄材で外材を使用する部材や地域は一部に限られる。
流通業者からも「小割などでも杉材への樹種の意向が徐々に「進んでいる」との話が聞かれる。
【合板・建材】
市況に沿った荷動き
針葉樹構造用合板は市況に沿った荷動きが動く。メーカーも荷動きは年明けから大きな変化はないとして、減産を継続している。プレカット工場や販売店なども手当てを急ぐ様子はなく、価格の変動よりも安定した製品調達を望む傾向にある。
価格は横ばいで推移している。
塗装型枠用合板も荷動きに大きな変化は見れれない。南洋材製品もあるが、メーカーは外材リスクなども踏まえた製品請求を続けている。
戸建て住宅の実需が低調ななか、建材メーカーでも住宅向けの製品荷動きが伸び悩んでいる。このため、メーカーは非住宅、海外向けの商品開発や提案を強化している。
◇タルキ留めビスで「屋根飛び保証」品質・性能にあんしんを付与
シネジックは保険会社と連携し、3月から同社のタルキ留めのビス「タルキックⅡ」「タルキックS」で施工した新築建物が竣工後10年以内に「屋根飛び被害を受けた場合、500万円を限度に補修費用を補償するサービスを始めた。
施工標準書に基づく適切な施工と事前登録が要件で、ユーザーの保証料は無料。同社が絶大な自信を持つ製品性能に「安心」という新たな価値を付与することで、さらなる販売拡大を目指す。
タルキックⅡ、タルキックSはタルキと横架材を接合するビスで、ネジ部の高い引き抜き強度と大きな頭部の押されつける力で強風による屋根の吹上がに抵抗する。タルキックⅡ1本でZマークのひねり金物ST-12と同等以上、タルキックS1本で同ST-15と同等以上の耐力があることを公的試験で確認しており、これらの金物の代替えとして利用できる。
ビス1本で施工できるため、施工時間をひねり金物の約5分の1に短縮できるほか、化粧タルキなどで金物を目立たせたくない場合や、金物が干渉して機密の確保や仕上げが難しい場合、軒の出がなくて金物が取り付けられない場合などにも施工できる利点がある。
施工の際は、施工標準書に従って、軒の出や屋根の形状、地域ごとに異なる風速に応じた商品を選定し、軒桁だけでなく、母屋棟木までタルキと交差する横架材すべてをビス留めすることで、屋根組全体を強固にする。
新サービス「屋根飛び保証500」では、ユーザーが事業者登録し、規格内にウェブで物件登録すれば無料で保証書が発行される。シネジックは施工標準書に従って施工していること、建築基準法の所定の件さに合格していることを要件に、ビスの引き抜けや破断が原因で保証適用範囲内の風速の強風で屋根が破損し、機能しなくなった場合に補修費用を補償する。タルキックⅡ、タルキックSの累計販売実績は2億5000万本で、同社推定の木造住宅のタルキ留め接合具のシェアは60%。現在も販売数量は拡大しているという。
苅部社長は「長年の供給実績と販売シュアを根拠に、品質、性能に加え、保証による安心という新たな価値を提供できるようになった。自然災害が多発し、被害も拡大傾向にあるなか、住宅所得者の安全・安心に少しでも貢献できればありがたい。24年度以降は新たに創設された製品JISの取得も予定しており、保証と合わせてビスの信頼性向上につなげていきたい」と話す。
◇火星で3Dプリンター住宅整備へ
Libworkは、「3Dプリンターによる火星住宅建築プロジェクト」を目指していくと発表した。
同社は新たな挑戦として「これまでの宇宙探索事業とは一線を画す、画期的かつ持続可能な方法として、火星現地にある素材を使った3Dプリンターによる住宅建築を目指していく」としている。
リブワークは3Dプリンターを活用した住宅を推進しており、2月には地元の山鹿市内で3Dプリンターハウス「LibEarthHouseモデルA」の記者会見を行っている。
モデルAは壁の原料として主に土を活用している。平屋で広さ15平方メートルで住設などは備え付けられていないが、同分野で年内にトイレや風呂場、居室などを設けた一般住宅(100平方メートル規模)としてのモデルハウスを完成させる予定。
来年には一般販売を開始し、さらに全国のハウスメーカーや工務店へ本事業をフランチャイズ展開していく蒼写真を描いている。その先にあるのが、冒頭の火星住宅建築プロジェクトとなる。
火星にある土を採堀し3Dプリンターを使って住宅を建築することで、同社は「従来の宇宙探査プロジェクトと比較した場合の大幅なコスト削減」「迅速で効率的な建築」を図れるとしている。
◇住宅ローン市場動向調査 住宅金融支援機構
住宅金融支援機構は、同機構が実施した住宅ローン市場の動向調査結果を公表した。住宅販売価格上昇に伴う「フラット35」利用者の住宅ローン借入額の増加のほか、返済期間35年超の割合増加などの実態が明らかとなった。
同機構の調査によると、住宅販売価格は指数ベースで10年前比約3割上昇した。それに伴い、フラット35利用者の所要資金やローン借入額も増加。所要資金は2012年度に3257万円だったが、22年度は3925万円と1.20倍になった。
ローン借入額も12年度の2781万円から22年度は3445万円と1,24倍に増額している。
一方、世帯年収は10年前比でほぼ変わらず、返済負担率は12年度21.9%から22年度は23.1%と1.2ポイント上昇した。住宅売価の上昇要因は、建築関係の労務費単価上昇が一因。調査によると、型枠工、大工、左官などの職種で労務費単価が大きく上昇している。同機構は「24年問題もあり、労務費は今後も上昇傾向」との見方を示す。
住宅ローン利用傾向については、同機構が全国約300の金融機構を対象に調査。金融期以降によるローンの商品力強化の傾向が見られるとともに、「返済期間35年超のローンの提供」が取り組みとして多くなっている。加えて、住宅取得者の返済期間35年超のローン利用割合も23年4月と10月の「調査でそれぞれ12.8%、12,7%だった。22年以前の調査では8~9%台で増加傾向は顕著だ。
住宅ローンは金融機関、住宅取得予定者・住宅取得者ともに変動型が多い。特に住宅取得予定の時点では変動型希望割合は約40%だが、実際にローンを利用する取得者となると、変動型が75%に迫った。
変動金利ローンの利用者の金利上昇に対する意識調査では、今後1年間の金利見通しとして、「現状より上昇する」が42%となている。
◇4号特例縮小で商品開発
ダイドーハントは、2025年4月の建築基準法改正に対応した製品開発を進めている。
同改正により必要壁量や柱小径に関する規定も強化される。これに対して柱軸力評価を考慮し、土台プレートの改良、引き抜き金物やリフォーム用の金物開発を進めている。社内ラボに3Dプリンターを導入し、樹脂成型で試作品を作り、納まりを確認できるようになった。さらに、製造コストや取り扱いのしやすさを追求した筋違金物、柱脚金物も開発中、材料費の高騰などを極力内部で吸収できるように取り組みも進めている。同社が栗山百造と共同開発してきた「フロッキン金物」に対応できるプレカット工場も増加している。最近では、他社のワンスリットタイプの金物から切替得を希望するプレカット工場が複数あり、供給体制を拡大していく方針だ。
4号特例縮小で今後、構造計算物件が増加することを見込んでいる。「フロッキン狭小壁」を使うために許容応力度計算を実施する案件の増加により、壁倍率5倍相当の性能が構造計算で生かされることになった。このため、従来は3階建て住宅がほとんどだったが、今後は2階建てでも構造計算の実施により採用が増えることを見込んでいる。