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シンエイ通信【令和5年9月1日作成 165号】
シンエイ通信【令和5年9月1日作成 165号】
◇九州木材商況
九州・沖縄8県の6月の新設着工戸数は合計8,891戸で、前年同月比4.1%減となった。持ち家、分譲ともに多くの地域で減少している。
半導体工場の進出を理由に、大手住宅メーカーは熊本県に産業用、従業員の住居用の土地を取得し整備を進めている。九州内の地場ビルダーも熊本での営業に力を入れるところも複数ある。
台風接近やお盆の長期休暇を前に手当に動く動きがあり、杉KD羽柄材など個別には荷動きが上向きつつある。ただ肝心の住宅需要は盛り上がりに欠け、大手プレカット複数社からは「お盆明けも大きな期待はできないのではないか」との声が聞かれる。
7月上旬の大雨や連日の猛暑で、原木市場の出荷量は減少。原木価格は杉で地合いが固まりつつあり、桧は再び値上がりに転じた。
そうしたなかでも、製材メーカーが製品に価格を転嫁させることは難しく、需要者側からは依然として値下げ要請が届いている状況だ。
製品価格がここで下げ止まるのか今後もじりじりと値下げていくのか流通、需要者でも見方は分かれ、メーカーにとっては踏ん張りどころとなっている。
【国産構造材】
住宅需要の低迷や国産材を挽く製材メーカー間、杉集成管柱との競合など様々な要因が重なり、杉KD柱角の荷動きは上向かない。
採算性の悪さから九州外消費地への出荷量を大きく減らすメーカーもある。7月の大雨で原木出荷量が減り、丸太価格が上昇した地域もあるものの製品価格に転嫁できる雰囲気ではなく、取引先からの値下げ要請に頭を悩ませる製材メーカーや流通業者は多い。
価格が現状で下げどまるのか、弱含み基調が続くのか需要者側も半信半疑という状況だ。
【国産羽柄材】
構造材が振るわないなか、値上げは難しいものの羽柄材に比較的動きがあることは製材メーカーにとって好材料となっている。
製品市売で販売店頭に在庫を積み増す姿勢は見えないが、大手メーカーからは間柱、小割について「もう少し生産量を増やしてもよいかもしれない」との声も聞かれる。間柱は3メートル材や側取り材などの一部に品薄感もあるという。
【外材】
米松国内挽き製品価格は変わらず、KD平角はRウッド集成材平角をにらんだ価格設定で取引されている。米松KD小割も国産製材品同様に、住宅需要に沿った荷動きが続く。木造トレーラーハウスや大型物件などでは構造部に外材を採用する事例も多い。
小割は九州では杉材の市場で、地場メーカーが同材を安定供給している。米松材やWウッド材を採用する地域は九州北部など一部に限られるとみられている。
【集成材】
木造住宅の新築着工戸数が、昨年4月以降15ヶ月連続で前年同月比減となり、構造材の需要が前年に比べ少ない状態が続く。ただ、盆前上棟は少ないながらも動きをみせ、4~6月に比べ7、8月は引き合いが増えたとして手応えを抱く向きは多い。
盆明けの荷動きに目立った変化はなく、9月にかけて大きく増えることはないが、急な落ち込みもないとみられている。7月以降は、国内メーカーへの樋引き合いが上向いてきたとの声が聞かれる。輸入集成材の入荷量が昨年11月から低水準で推移しているため、過剰だった在庫の調整が進んできた影響とみられる。
ただ、木材市況の全体的なぐずつきで、構造用集成材も長引いていた欧州産地と日本側との第3・四半期契約分の交渉は、ようやくめどが立った。
Rウッド集成平角が第2・四半期交渉から約30ユーロ下がった。ただ、記録的な円安の影響で、構造用集成材の輸入コストは前回の成約分からほぼ横ばいとなる見通しです。7月積みは大半がスキップとなり、全体の成約量も抑えられたため、集成材とラミナの入荷量は年末まで低水準が続くこととなった。
【合板・建材】
8月は盆休みがあるため、国産材を扱う合板メーカーは通常月よりも減産幅が大きくなる見通しだ。そうしたなか需要家は仕入れに動いており、荷動きは若干上向く気配も出ている。輸入型枠用合板は産地価格が下げ止まり、輸入コストも上昇傾向にある中価格も底入れの気配が出ている。
国産材を扱う建材メーカーも住設展示会などを通じて自社製品を請求している。九州外消費地の需要獲得を目指し消臭・抗菌機能などを持つ高付加価値商品を海外で拡散したり、燻煙処理した杉床(12mm)の関東、関西での販売を開始したりする動きもある。同杉材については九州で一定の販売実績を上げたうえでの売込みとなる。
◇伊藤忠、TOBで大建工業を完全子会社化
伊藤忠商事(東京都港区)は8月10日、建材事業などを展開する大建工業(富山県南砺市)に対して、完全子会社化を目的としたTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。同社は大建工業の株式(947万5,300株)のうち36.3%を有する筆頭株主。
今回のTOBにより大建工業の東証プライムへの上場を廃止し非公開化することで、相互の知見・ノウハウの共有を強化する考え。大建工業側も「同社グループとの間でシナジーの創出を見込むことができ、企業価値の向上に資する」との判断からTOBに合意した。
公開買付者は、同社が2023年2月に設立し、100%出資するBPインベストメント合同会社(東京都港区)。
買付価格は1株につき3,000円。買付予定数の下限は所有割合31.83%に当たる829万8295株とし、上限は設定しない。買付期間は8月14日から10月10日までの40営業日。同社以外の大株主は、日本マスタートラスト信託銀行、住友生命保険相互会社、日本カストディ銀行、日本生命保険相互会社、三井住友銀行、農林中央金庫、ジューテックなど。
シナジー効果への期待大きく
大建工業はTOBに合意した理由として、▽同社グループの非住宅分野に対する知見の活用▽非住宅分野における既存製品や既存事業の売上拡大▽製品の拡充▽デベロッパーなど事業主に対するコンサルティング業務の拡大▽空間設計や内装工事など隣接事業への事業拡大―といったシナジー効果への期待を挙げた。
また、サプライチェーン強化による在庫や物流の最適化、グループネットワークでの調達力の活用、リソースの共有による原価・販管費の低減などを通じて、国内住宅事業の収益力強化が図れるほか、北米を中心とした海外市場における事業強化にもつなげられるとしている。
なお、大建工業の2024年3月期通期決算は、売上高が前年比2.7%増の2,350億円、営業利益が同18.8%減の80億円、最終利益は同41.9%減の60億円となる見込み。
◇CCUS登録技能者124万人に 事業者は23万者
建設業振興基金が8月15日に公表した「建設キャリアアップシステム(CCUS)の運営状況」によると、2023年7月末時点の登録状況は、技能者が124万1,884人、一人親方を含めた事業者が23万4,642者。就業履歴数の累計は、2019年の運用開始以降で9,699万3,947件となった。当初に目標として掲げていた「5年間で全ての技能者(330万人)が登録」には及ばず、ようやく“3分の1”にまでこぎつけた。
本人情報や資格の真正性を確認し、登録を行う認定登録機関は全国238カ所に拡大。主に、都道府県に所在する全国建設労働組合総連合(全建総連)や、建設業協会、建設産業ユニオンなどが対応する。CCUSに関する専門的知識を修得し、登録や運用についての質問・相談に応じる「CCUS認定アドバイザー」は330人、登録手続きを代行する「CCUS登録行政書士」は922人となった。
システムについては、就業履歴登録アプリ「建レコ」に対応した標準カードリーダーを4機種(Windows対応1機種、Windows・iOS 対応2機種、iOS対応1機種)を販売。2023年7月には、カードリーダーのみで就業履歴が登録できる「ロギング機能」を搭載した。他にも携帯電話(ガラケー・スマートフォン)から電話を掛けることで就業履歴登録ができる「キャリアリンク」(コムテックス)、顔認証入退システム(日本電気、他)など、民間システムとのAPI連携にも対応している。
10月から事業者更新手続き開始
建設業振興基金では、2019年の運用開始当初に登録した事業者に対し、2023年10月から更新手続きを開始する。2018年度(2018年5月~ 2019年3月末)に登録した事業者の有効期限は2024年3月31日まで。有効期限満了の1カ月前に当たる2月末までに更新手続きを行う必要がある。申請先はCCUS ホームページまたは認定登録機関。更新登録料は事業者の規模により異なり、更新手続き後に送られてくるメールに記載されている。
◇住宅ローン減税24年に変更
住宅ローンを組んで家を買うと所得税などが減ることがあります。「住宅ローン減税」と呼ばれる制度で、家計への影響は大きくなりがちです。
ただし2024年からは対象となる条件などが変更されます。
住宅ローンを組んで家を購入すると、年末のローン残高に応じて所得税や住民税が軽減されます。床面積などの条件を満たせば、新築住宅のほか中古住宅やリフォームも対象になります。新築の場合、入居から最大13年間、年末のローン残高の0.7%を本来の納税額から引きます。
対象となるローンの残高には上限があり、それを超えた分は減税対象とはなりません。
2024年からは新築住宅の減税となる条件が変わります。現在は省エネ性能などに応じて、対象となるローン残高の上限が4段階あります。上限が最も大きいのは
①「認定長期優良住宅」「認定低炭素住宅」で5,000万円
②「ZEH(ゼロエネルギーハウス)水準」で4,500万円
③省エネ基準を満たさない住宅は3,000万円となります。
2024年からは省エネ基準を満たさない新築住宅は原則、住宅ローン減税の対象にはなりません。
制度移行時は特例あり、23年中に建築確認を受けた住宅や24年6月末までの竣工なら、省エネ基準を満たさなくても対象になります。
(ただし、住宅ローンの上限は2,000万円となり、控除期間も10年と減税効果は小さくなります。)
◇カネカSC、再熱除湿機能を備えた全館換気の新仕様発売
カネカソーラーサーキットのお家(東京都港区)は、全館除湿換気「ソーラーサーキット リフレア™」の新仕様を開発。全国のカネカのお家 ソーラーサーキットの契約工務店を通じて発売する。
「ソーラーサーキット リフレア」は、室温を下げずに除湿ができる再熱除湿機能を備えた換気システム。
高断熱住宅のエアコン冷房は一般的に、温度と除湿のバランスを両立させて快適性を保つのが難しいとされるが、この換気システムでは除湿することで冷えてしまう空気を温め直して室内に供給するため、室温の下がり過ぎや高湿度による不快をなくしてサラッとした空間がつくれるとする。
2023年9月1日から10月31日まで、新規導入検討者を対象に、ソーラーサーキット リフレア機器を特別価格で提供するモニター募集キャンペーンを実施している。
◇アネシス、県産材利用2割増めざす 熊本県と協定締結
アネシス(熊本県熊本市)はこのほど、持続可能な県産材利用促進のため、熊本県と「建築物木材利用促進協定」を締結した。協定名称は「きづくりつづく 県産材活用促進協定」。県や関係各所の協力を得ながら県産材の活用に取り組んでいく。
具体的には
(1)安定発注を通じた木材の安定供給体制構築への寄与
(2)県産材を活用した愛着ある空間づくりの提案
(3)研鑽材活用方法の創造——を掲げる。
これらにより、2023年度~2028年度までの5年間で、自社物件における県産材使用量の20%増を達成したい考え。また、地域の木材関係者とも連携し、施主を対象に森林体験活動を年1回以上開催し、木材利用の意義についてPRを実施する。
同社は、構造や内外装に県産材を積極的に活用するとともに、木材利用を通じて森林保全、環境教育に取り組むことで「2050年熊本県内CO2排出実質ゼロ」の実現や持続可能な地域社会の実現に貢献していくとしている。