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シンエイ通信【令和5年5月1日作成 161号】
シンエイ通信【令和5年5月1日作成 161号】
◇九州木材商況
新年度に入っても、市況に転機の気配ない。プレカット工場の稼働率は一部の大手を除いて低調で、設備増強を図ったプレカットも1ヶ月分の仕事を埋めることは簡単ではない。
国産材ムク製品の荷動きも振るわない。同材と競合する杉集成管柱や米松KD平角も値下がりし価格にはばらつきがある。
需要者は国産無垢材への値下げ圧力を強めており、メーカー次第で外材などの価格を意識した価格調整が進む可能性はある。ムク製品価格を維持する根拠の一つとなっていた原木価格の下落も気になるところだ。春になり出材量が安定したことで丸太も年明けごろの価格水準を維持することが難しくなってきた。
製品の特別市に立ち会った製材大手社長は「外材などにより安値を付けようとすると、ウッドショック前の価格にいよいよ近づく。利益を確保できなくなると追加の設備投資がままならなくなり、生産性をあげられない。業界に人も入って来なくなり、国産材製材が再び盛り返すことは難しくなるのではないか」と不安を口にした。
【国産構造材】
外材等に押されている。
国産ムク構造材は同集成材のや外材に押され、守勢に立たされている。ウッドショック時に広く求められていた杉KD柱角に当時の勢いはなく、杉集成管柱がムク柱材よりも安値水準で取引されている。米松国内挽き最大手がKD平角の値下げを打ち出したことで、杉同材も価格調整が進む可能性はある。
量産工場は「値下げ要求を突っぱねようとしても、外材などに先行して下げられると難しい」とこぼす。
杉KD柱材は熊本県の製品市場でも弱基調。
【国産羽柄材】
構造材と比較すれば荷動きがあるものの、勢いは徐々に弱くなっている。両製品ともに製品市場では当用買いが中心で杉KD小割はリフォーム向けも含めて動きはある。同間柱に不足感はない。
製品価格は地域差がある。横ばいを維持する所もあるものの、全体的には弱基調。熊本県の製品市場で杉KD間柱芯去り材30巾45巾ともに弱基調。
【外材】
競合にらみ値下げ
米松製品は国内挽き最大手が米松KD平角の値下げを打ち出した。競合するRW集成平角の価格を意識したものの、同罪の流通価格は安値水準だ。米松グリン平角も安値で取引されている。
同KD小割材も全体的に荷動きが乏しく、羽柄材は九州では、杉材への依存度が高い。小割類で米松材、間柱材などを採用する地域は、九州北部の一部に限られているとみられる。
【集成材】
集成材の荷動きは、3,4月で大きく変わってはいない様子。国内集成材メーカーでは、地域や売り先によっては3月に比べて受注が上向いたとの声が聞かれる。一方、季節要因を抱える北海道や東北を中心に出足の鈍さを訴える声も多く、ばらつきが見られる。
需要の盛り上がりに欠けることに変わりはなく、集成材の地合いは弱い状態が続き、内外さん含めて3月からおおむね5,000円程度下押しされてきた。先安懸念が拭えない買い手側は、供給側の採算の厳しさを把握しつつ、限界ラインを伺っている様子もみられる。
国内メーカーや産地側の採算は厳しさを増す一方で、わずかな荷動きの回復を足掛かりに底値固めを図りたい意向は強く、売り買い双方で底値を探る動きが本格化してきた。
欧州産地との第二・四半期交渉は、4月中旬時点でも大勢が固まらず、買い手によっては、4月積みはスキップの可能性も強まってきた。官製品は3月中にオファーがほぼ出そろい、集成管柱については一部大手サプライヤーを軸に制約が進んできたともいわれる。ただ、日本側は先行き不安が拭えず、集成平角を中心に仕入れを決めかねる状況もみられる。
ラミナは産地側の値上げ姿勢が強く、特にWウッドは交渉が本格化する前にオファーを引き上げるサプライヤーも出始めるなど、前回までとは異なる様相も伝わっている。
【合板・建材】
減産を継続
合板メーカーは顧客からの注文量に合わせた生産を徹底しており、減産を続けている。針葉樹構造用合板価格は前月比横ばい。
輸入型枠合板は現地価格が下落。流通価格は前月比100円安。ムク壁、床材は、大手ムク建材メーカーは非住宅向けの販売が好調。
ただ、「非住宅向けは次の仕事があるかは分からず、水物と考えている」とし、同分野向けの出荷比率が増加傾向にあることを警戒している。
国産材を活用するムク建材で、眞たに海外に向けた市場を開拓する動きもある。
◇世界的な“木材需要低迷局面” 「国産材活用に舵を切れ」
米国市場におけるカナダ西部内陸産SPF製材価格は2×4は2021年5月の1640ドル(工場渡し)を最高値に、2023年3月下旬には364ドル(同)まで下落している。
2022年末から400㌦割れとなっており、これを受けてSPF製材の主産地であるカナダのブリティッシュコロンビア州(BC州)内陸製材産地は現在、恒久的な閉鎖、長期一時閉鎖、シフト削減などで生産能力の30%規模の減産に入っている。この大規模減産により2023年2月のシカゴ製材先物市場価格は500㌦前後まで反発したが、その後4月13日には395㌦まで下がっており、2021~22年のような製材価格高騰は当分の間起きることはない。
BC州内陸産地最大の不安は州有林伐採水準が激減している点が気になるところだ。BC州有林丸太伐採量(沿岸部も含む)は2018年の4700万㎥規模から2022年には3000万㎥強まで減少した。BC州の製材産業は恒常的な原材料丸太不足を余儀なくされ、さらなる製材工場永久閉鎖が出てくる恐れもある。
空前の好景気に沸いた北米製材産業に何が起きているのか―。
まず、北米製材価格の急騰であるが、400㌦前後であった先物価格が短期間に1600㌦まで跳ね上がるだけの需要面の根拠は全くなく、多分に投機的な思惑を背景としたものであった。
その思惑の呪縛は完全に解け、次に来たのがインフレ抑制という名のもとに断行された連邦準備制度理事会の政策金利短期連続引き上げであった。2023年2月1日にも0.25%の引き上げが実施され、2022年からの8回にわたる引き上げ幅は実に4.5%にもなり、さらに米国の政策金利急上昇は各国間の金利差を広げ為替動向を不安定にしている。
政策金利引き上げを受けて米国の住宅金融各社は住宅ローン金利の大幅引き上げを開始し、30年物固定の住宅ローン金利は直近底値の2.74%(2021年1月)からピーク(2022年11月10日)7.08%まで急上昇した。2023年4月上旬金利は6.28%まで下降しているが、新設のみならず中古住宅市場にも冷や水を浴びせかけ、米国の住宅需要は急ブレーキがかかっている。
◇アキレス、製品内部にCO2を吸収・固定化した壁紙を開発
アキレス(東京都新宿区)は、製造時にCO2を製品内部に吸収・固定化したカーボンリサイクル型のビニル壁紙「e-タン クロス」を業界で初開発。2023年中の販売開始を予定する。
ビニル壁紙の製造において通常用いられる鉱山由来の天然炭酸カルシウムに替えて、大気中の排ガスに含まれるCO2を固定化した合成炭酸カルシウムを配合し、同社従来品と変わらない物性や機能を実現する製法を新たに確立した。
新製法によるビニル壁紙では、製品重量の約10%が排ガス中のCO2を固定化したものとなる。
◇古河電工、27倍に膨張して遮炎・断熱する耐火シート開発
古河電気工業(東京都千代田区)は、火災時に遮炎性・断熱性を発揮する建築物向けの「薄肉高熱膨張耐火シート」を開発した。
従来の熱膨張耐火シートは、膨張時に形成される炭化物がもろくて断熱性が不十分だったり、膨張不足により隙間から火を通してしまうといった課題があった。
今回開発した「薄肉高熱膨張耐火シート」は、壁・通気孔の目地材や構造体の耐火保護材としての施工に適するよう、通常時の厚さは2mmで柔軟性があり、火災時には400℃の熱で体積が約27倍まで膨張(厚さは最大45mm)して炭化物を形成することで延焼を防ぐようにした。また、炭化物は型崩れせず、従来品よりも火や熱を通しにくい。
厚2mm×幅750×長1000mm。
◇太陽光使用済みパネル ピーク時は年間50万トン以上にも
経産省および環境省が再生エネルギー発電設備の廃棄・リサイクル有識者会議で示した資料によると、固定価格買取制度導入後のFIT・ FIP認定量・導入量は、件数ベースで合計245万件。このうち住宅用太陽光は約177万件(約853万kW)、 非住宅太陽光は約68万件(約5200万W)となった。同制度下で設置した使用済み太陽光パネルが排出されるピークは2030年代後半以降で、年間50~80万トンが排出されると想定している。
撤去工事件数は年々増加
環境省が全国の解体工事業関係の団体を対象に実施した「太陽光パネルの解体・撤去工事に関するアンケート」(回答数122社)によると、直近3年で工事を請け負ったことがある事業者は18社で全体の14.8%。相談を受けたことはあるが撤去経験がないのは26社(21.3%)、相談を受けたことも撤去経験もないのは78社(63.9%)だった。実績のある7社によると、撤去工事の件数は年々増加傾向にあるという。
工事実績のある事業者に課題と認識していることを尋ねると「処理費用が高く、発注者の負担が大きい」「大量排出時に備えて受入先(処理先)を増やしてほしい」などの回答が得られた。