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シンエイ通信【令和4年5月1日作成 149号】

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シンエイ通信【令和4年5月1日作成 149号】

◇円安で輸入コスト負担増

欧州材第2四半期交渉は産地が値上げに動いた。欧州内における木材価格上昇と需給ひっ迫が主な値上げ要因だ。

輸入構造用集成材はWウッド集成管柱、Rウッド集成平角とも前回比30~50ユーロ高で、ラミナは前回比50~100ユーロ高となった。

円建て輸入コストは交渉期間中の円安進行を受け、前回から大幅高。供給は輸入完成品、ラミナいずれも通常比60%程度にとどまる。だが足元の在庫が多く市況不安も抱えている輸入元には契約に慎重な姿勢も見えた。

今月は、交渉時期直前の2月下旬にロシアによるウクライナ侵攻が発生し、スケジュールが混乱した。産地、輸入元とも情勢の見極めを優先、3月中旬に入ってようやく主産地企業からの提示が出始めた。

成約価格は集成平角、集成管柱が前回比30~50ユーロ高の960~990ユーロ、ラミナが同590~610ユーロを中心にまとまったと見られ、両品目とも2021年第4四半期の価格帯に迫った。交渉開始時点ではもう一段階高の提示もあったが、急激な円安で輸入コスト増となる輸入元の反発もあり、産地が若干の価格調整を行った模様。

それでも円換算のコストは、為替を1ユーロ139円(4月22日現在)と仮定すると、上値は平角、管柱が13万円台半ば(主要港オントラ、立法㍍)ラミナ8万円半ばとなる計算で、集成平角、集成管柱、ラミナとも前回比1万円以上(立法㍍)の上乗せとなる。

産地の値上げは、欧州内における木材価格上昇と需給ひっ迫が背景にある。そのため日本向けは値上げとともに供給減も顕著となった。交渉開始の遅れや契約残の出荷を優先する判断も加わり、4月積みをスキップする産地企業もある。総供給量は通常比60~70%にとどまった。

一方国内の現状は、輸入構造用集成材を中心に市中在庫は十分で、集成材メーカーもラミナは適正水準を保つ。ただ、今回制約品を含め、欧州材入荷は数量、次期ともに安定に欠ける。現在、日本には主に1,2月積みが入荷している段階で、昨年契約分も一部含まれている。この先もコンテナ手配難や中国・上海のロックダウンによる遅延が考えられるため、今回制約分は8月ごろに本格入荷となる見通しだ。

輸入元は産地の販売・供給動向を踏まえつつ、足元の在庫と製品市況を重視した交渉となった。また、先物輸入コストの急上昇は現物価格にも影響が及ぶ。

 

◇九州商況

九州・沖縄8県の2月新設住宅着工数は合計6829戸で、前年同月比1.2%減となった。住設機器や半導体不足の影響で地場工務店の仕事量が少なく、販売店は在庫を抱えているため、全体的に製品の荷動きは低調だ。

ロシア産アカ松垂木の入荷不安視されるなか、国産材への代替需要増かを見据え、杉KD小割や同間柱を5000円~1万円(立法㍍)値上げした九州内の製材メーカーもある。ただ、住宅着工が好調ではない為同小割や同間柱のに動きが低調という製材メーカーもある。

受注状況はまだら模様だ。そのため、今後製品を値上げする動きがどこまで広がるかは不透明だ。

関東関西からの問い合わせが増加しており、5~6月頃から製品の荷動きが良くなるという見方もあるが、今後は見通しづらい。

製品価格は横ばいを維持。原木は4㍍材は値下がりしている。

【国産構造材】

九州北部の製品市場では、杉KD柱が完売するなど、同柱に安定した引き合いがある。それ以外の杉構造材は、製材所により受注状況は様々だ。

関東や関西の大手商社で杉製品を集める動きがまだなく、製品市場では買い方の様子見で売れ行きは低調。

桧KD土台に荷動きは悪い。杉KD柱、杉KD母屋、杉KD平角等の価格は横ばい状態。

【国産羽柄材】

杉KD間柱45ミリ厚は用途が増えた上に、WウッドKD間柱からの代替需要もあり、量産メーカーで好調な受注が続いている。

一方で杉KD間柱の荷動きが低調な製材工場があり、地域やメーカーで明暗が分かれている。小割はロシア産アカ松タルキの代替需要で、関東や関西からの問い合わせが増えているという声が複数聞かれた。

杉KD間柱は、製材メーカーによっては目先の販売を優先せず、秋の需要期に向けて在庫を蓄えようと知る動きもある。

【外材】

米松材は製品市場を通じ割安な古材が流通しているが、それ以外の価格は横ばいを維持しているが、産地価格の上昇も伝えられており、今後の値上がりが懸念される。九州地域では小割は杉材の市場のため、ロシア産アカ松タルキの市場はほとんどない。

同材を取り扱う流通業者は限られ、工務店等への影響もない。

輸入材全般に慢性的な入荷不安がり、国産材への切り替えを模索する動きが見られる。

【合板・建材】

国産材を扱う合板メーカーではロシア産単板の輸出禁止による直接の影響はなく、国産針葉樹合板の価格は据え置きとなっている。

一方、輸入型枠用合板は円高の影響で調達コストが上昇し、前月比100円高となっている。

PBも供給に滞りがある。床工事業者などは針葉樹構造用合板に代替を求めているが、手当は容易ではない。国産材を活用する塗装型枠用合板の荷動きも堅調だ。国産材を使うムクフォローリングは、抗菌効果を付与した製品が幼稚園などへの販売量を伸ばしている。

【ロシア状況】

ロシアからの木材輸入は先の読めない状況が続いている。8日に岸田文雄首相がロシアへの追加制裁に「一部木材の輸入禁止」を発表。

同日、EUが追加制裁でロシアからの木材輸入の全面禁止を発表しただけに、業界に緊張が走った。

結果的には、原木や単板など3月にロシアが輸出禁止にした品目を指定するだけにとどまった。しかし、ウクライナ侵攻に関連して、ロシアへの国際的な非難が日々強まるなかで「日本がEUと同様の措置に踏み切らない、とは否定できない」と懸念は拭えない。

SWIFT(国際銀行間通信協会)からの排除や米国による対ロシア金融規制強化で決済手段の選択肢が月を追うごとに狭まっており、船を確保できるかどうかも問題になっている。このため、日本側は、支払い条件を製品の船舶積み込み後とするよう現地メーカーに求めている。

しかし、現地メーカーは資金繰りから難色を示しており、価格以前の交渉で暗礁に乗り上げている。日本側も新規契約には慎重にならざるを得ず、各社と長期的かつ継続して手当てしているメーカー以外から購入するのは難しい状況だ。こうした動きは、6月以降の入荷量に影響すると見られる。

新規契約に加え、新たな価格交渉も進んでいない。このため、現地挽きアカ松KDタルキの現地価格は800ドル程度(立法㍍)で保合。ただ、国内価格は現地価格が横ばいでも、円安や関税率の引き上げなどで値上りしていくとみられる。

 

◇グリーン化事業の変更点や配分方法を公表 公募開始4月下旬

国土交通省は4月18日、2022年度の地域型住宅グリーン化事業について、昨年度からの変更点や配分方法など実施予定の内容を整理し公表した。

公募開始時期は4月下旬頃としている。

昨年度事業からの主な変更点として

▽ゼロ・エネルギー住宅型に「ZEH Oriented 」を新設

▽ゼロ・エネルギー住宅型(ZEH Oriented を除く)の長期優良住宅認定取得による補助額引上げ

▽加算メニューに地域住文化加算とバリアフリー加算を新設

▽高度省エネ型の性能向上計画認定住宅、優良建築物型、省エネ改修型を廃止

▽認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の省エネ性能基準の引き上げ(本年秋頃予定)への対応として、引き上げ後の基準を満たすことのできない住宅に対する経過措置(9月30日までに交付申請した住宅が補助対象)――などを挙げた。

各グループへの採択の配分方針としては

①住宅のタイプごとの要望等を勘案して配分

②ゼロ・エネルギー住宅型等については、断熱材、太陽光パネル等の荷重を見込んだ構造計算を実施して耐震性を確認したもの、または耐震等級2水準以上相当のものを優先配分(経過措置の対象を除く)――としている。

 

◇地方公共団体や民間事業者、専門家が連携した空き家対策募集

国土交通省は4月20日、「住宅市場を活用した空き家対策モデル事業」の提案の募集を開始した。全国の空き家対策を一層加速化させるための、地方公共団体や民間事業者、専門家等が連携した取り組みを支援する。応募期限は5月20日。

支援対象となる事業は

①専門家等と連携した空き家に関する相談窓口の整備等を行う事業

②住宅市場を活用した空き家に係る課題の解決を行う事業

③ポストコロナ時代を見据えて顕在化した新たなニーズに対応した総合的・特徴的な取り組みを行う事業――の3タイプ。

このうち①は、(1)地域の専門家団体等との連携体制の構築、(2)相談員や専門家の研修・育成、(3)空き家対策の執行体制の整備等について、全国の地方公共団体を対象として先進的な取組事例の全国展開等を図る取り組み、(4)その他、本事業の効果を一層促進するために必要な取り組み、(5)(1)~(4)で実施した取り組みの取りまとめ・公表――等が対象。

②については、▽災害時に応急的な住まいを確保するために、空き家の部分貸しなどにより空き家活用を検討する取り組み、▽空き家等をその所有者とは別の管理者が活用することを前提として、所有者が負担なく空き家管理を委託できる取り組み、▽地域特性や立地等に適した空き家の利活用を企画・提案し、事業主の資金調達から事業運営まで一貫したサポートを行うビジネスモデルを構築する取り組み――等が期待されるとしている。

また、③については、移住・定住、二地域居住・多地域居住やサテライトオフィス、ワーケーションといった社会ニーズに応える空き家・空き店舗等の利活用のスキームを構築する取り組みとして、▽シェアリング・サブスクリプション等を活用したビジネス化・産業を展開し、空き家の潜在的需要を喚起する取り組み、▽空き家・空き店舗等をテレワークスペースやコワーキングスペース、サテライトオフィス等に転用する取り組み――などを期待される事業として例示している。

事業実施期間は原則として今年度の事業期間内。ただし、単年での事業実施が困難な場合に限り、最長2年間までを認める(毎年度応募、採択が必要)。

補助対象事業者は、地方公共団体、民間事業者、専門家等により構成される団体、協議会等。①に関しては、地方公共団体と専門家等が連携して行うことが必須。

 

◇古民家再生で職人の修復技術を継承 収益化まで落とし込む

古民家カフェや古民家レストランなどを改修して営業店舗とする事業は、人気があるものの収益化するのは難しいと言われる。

 

兵庫県丹波篠山市を起点に始めた古民家再生ビジネスは現在完成したものだけで全国に24カ所、100棟と広がりを見せ、さらに拡大を続けている。事業のポイントは“なつかしくて あたらしい 日本の暮らしをつくる”ことにあるというが、そこには歴史的価値を持つ古民家再生を全国展開することで各地に残る建物を修復できる技術を継承したいという目的もある。

同市の農村集落丸山集落で全12世帯のうち空き家だった3世帯をリノベーションし1棟貸しの宿泊施設「集落丸山」として再生する事業をスタートした。集落の住民がNPO団体を設立してNOTEとLLP(有限責任事業組合)を組んで採算のとれる手法と運営で成功を収めている事例だ。

NOTEは「目を向けたのは昔ながらの暮らしや日本の文化。添加物の一切入っていない食材が並ぶ食卓や美しい農村風景など、都会では得難い文化がここにある」と歴史的民家に特化した地域デベロッパーとして魅力を語る。

NOTEが大切にしたのが徹底した住民との対話。空き家というと条件次第で簡単に売買や賃貸契約ができると考えがちだが、「地方の空き家は所有者が簡単に手放すことはない」。「下手に知らない人に貸して集落の人に迷惑をかけたら」などの不安があるからだ。集落丸山を始める際、住民が何に困り、何を求めているのかを知るために集落のほぼ全世帯が参加するワークショップを開いた。この中で集落の持つ歴史や文化が住民に再認識された。

◇朝日ウッドテック、一部床材の受注停止を解除

朝日ウッドテックは4月20日に、フローリング一部製品の受注停止を解除すると発表した。

安定供給に向けて調達手段の見直しに取り組んだ結果、改善が進み生産数量も通常まで回復したという。

同社は昨年12月から、新型コロナに端を発する世界的な海上輸送の混乱によるコンテナ不足や船便不足の影響を受け、フロア基材に使用する材料(MDF)が予定通り入荷できずに受注停止に追い込まれていた。