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シンエイ通信【令和2年7月30日作成 128号】
シンエイ通信【令和2年7月30日作成 128号】
国交省、長期優良住宅の工務店への周知推進
国土交通省は、長期優良住宅制度に関する工務店への周知を推進していく。このほど、「長期優良住宅制度のあり方に関する検討会」の最終とりまとめを決定。講習会を展開していく他、住宅性能評価・表示協会(東京都新宿区)のリーフレットや動画の活用も呼びかける。
検討会の最終とりまとめでは中小事業者へ長期優良住宅のメリットや認定基準についての周知も重要としている。国交省では技術基準の計算について、2019年度に耐震について講習会をしており、今年度は断熱に関して開催していく計画となっている。新型コロナウイルス感染拡大の影響もかんがみ、DVD作成やウェブ活用も検討している。住宅性能評価・表示協会が耐震・断熱など技術基準についてのリーフレットを作っているが、今年度さらに改良する見通し。同協会では「3兄弟の家」と題した長期優良住宅について分かりやすく解説する動画をYouTubeにアップしている。
実は簡単!リフォームで自宅価値を上げる方法
2018年の国土交通省の調べによると、「住宅着工戸数」の年率換算値は日本では約95万戸、アメリカでは約120万戸でした。人口は日本が1億2600万人で、アメリカが3億2700万人であることから、いかに日本が住宅を建てているかがわかります。
しかも日本では、売買される住宅も9割が新築ですが、アメリカでは中古が8割、イギリスが9割、フランスが7割弱です。もう、日本人は異様な新築好きといってよいでしょう。
理由はいくつかありますが、総じて日本人は「キレイ好き」「清潔好き」ということが言えると思います。他人が使った後は何だか嫌だという潔癖な感じです。さらに横並び意識もあるので、周囲が新築を買う人が多い中で、中古を買うことは体裁が悪かったりして躊躇することもあるようです。
また、地震が多い国であることから、中古は耐震性についての不安があるのかもしれません。古い建物でも耐震診断をうけて耐震改修した物件もあり、それは重要事項説明書にも記されているのですが、あまりそういうことは知られていません。
また、税制や住宅ローンなどが、新築よりも条件が厳しかったりします。例えば、築年数が経っているものだと、住宅ローンを組むのが難しかったり、返済期間が短くなったりする場合があり、制度自体が中古の流通を難しくしています。
中古物件を売却するときも、売り急ぐ場合が多いためか、見栄えをよくリフォームするなどして付加価値を付け、少しでも高く売ろうとはせず、低価格での取引に妥協してしまいます。
こういう状況が、土地は価値があるが、古家はタダ同然、というゆるぎない価値観を植え付けてしまったのだと思います。
これらの要因の根底にあるのは、日本の住宅が極めて短命なことにあります。これから詳しく述べていきたいと思います。
日本の住宅の寿命は、平均して26年程度といわれています。欧米ではその3倍または、それ以上の住宅寿命であるのに対して、極端に短いのです。なぜでしょうか?
理由の1つは、戦後の復興期を経て日本政府の「持ち家政策」により戸建て住宅が急激に増加したからです。すなわち安価な材料と簡便な工法による決して良質とはいえない住宅が普及することになって、ウサギ小屋と揶揄されるような住宅が数多く供給されてきました。そうしてできた住宅は増改築が非常にやりにくい構造になっていることが多いです。
理由のもう1つは、日本人の核家族化とライフスタイルの変化です。かつて、日本の住宅が田の字の和室群で成り立っていた当時は、ふすまで仕切り、またはふすまを外すことによって多様な可変性を持ち合わせていました。もともと和室は極めてフレキシブルな空間なのです。つまり、家族の変化に対応できるつくりだったのです。
しかし、高度成長期、日本人の住まい方は劇的に変わっていきました。生涯において家族数がピークの時期に住宅を新築し、子どもに専用の居室を与えるようになりました。
敷地の狭さにかかわらず、浸透していった洋室志向、個室志向によって、壁で細かく仕切られた一室一室はその用途でしかなくなりました。
そしてその壁には筋交いが入れられました。耐震性を考えよかれと思って筋交いを入れるのですが、それは将来、間仕切りを壊すことを想定していないことになります。
やがて、このことが、日本の住宅の寿命を短くする一因になったと私は考えています。家族構成の変化、生活様式の変化が生じたとき、間取りを変えていくことが極めて困難となってしまったからです。
戦前に建てられた住宅の寿命のほうが長いことからもそれはうかがえるのではないでしょうか。また、日本では竣工時にすべてを完成品にすることにこだわりすぎている傾向があります。例えば、欧米では古い建築ほど価値を見いだし、日曜大工にいそしみながらとても大切に住み続けています。
以前、オーストラリアの知人のお宅にお邪魔した際、そこの主である老婦人が、「このテーブルクロスは私のひいお婆ちゃんが編んだものなんです。ずっとこの家で大切に受け継がれてきたんですよ」と自慢げにレース編みのクロスのお話をしてくださいました。繊細な素材であるがゆえ丁寧に手洗いしてきたとのことですが、何よりもその精神にはっとさせられました。
最近の日本の住まいは竣工時がいちばん美しく、年月とともにどんどん老朽化して数十年後には建て替えるのが当たり前になっています。それは「スクラップ・アンド・ビルド」などといわれる悪しき風潮でしょう。日本は伊勢神宮ですら、20年で壊して建て替えています。木造だからでしょうか? いいえ、法隆寺は木造でも1400年経っています。
日本では、土地だけが価値を持つものとされています。それは日本が農業国だったときの、土地だけが農作物という形の利益を上げられるという考え方に起因しているのかもしれません。日本では土地が有料で家は無料の感覚ですが、アメリカですと、家が有料で土地が無料という感覚です。
実際アメリカの家は100年以上経っているものも多いです。一方、日本の住宅は二十数年で建て替えられるのがほとんどで、耐用年数70年といわれているコンクリート造でさえそうなのですから、もったいない話です。
しかし、もうそんなことが通用する時代ではありません。本格的な「ストック」となりうるものを目指し、維持・改修を重ねていけるものにすることこそ、私たち日本人が置き忘れてきたものであり、取り戻さなければいけない精神なのではないでしょうか。
例えば、不変ではない家族の形にあった住まいにするためには、最初からつくりすぎないのも1つの方法です。人目につかない部屋の内装仕上げは後の楽しみにとっておくとか、最初から○○室、○○室と決めるのではなく、サブリビングとして利用し、子どもたちが成長したら2部屋にするなど、家族とともに成長する住まいの形があってもよいはずです。
ライフサイクルを建て主自身が考えて、セルフビルドの精神で住まいを変えていけたら、そしてそれが容易な構造であったら、従来の使い捨てにも似た日本の住宅事情を少しでも改善していけるのではないかと思います。
今年の3月までの20年間で、筆者が担当したCM分離発注方式の工事は計135件ありました。その内63件がリフォームなどの小規模な改修工事で、その割合は全体の47%に上ります。設計の依頼は新築が圧倒的に多い中でCM分離発注方式にはリフォームが約半分を占めているのには訳があるのです。
2006年に実施した住宅のリフォーム工事の実例を基にご説明しましょう。このプロジェクトでは建て主は当初、設計は筆者が担当し、工事は総合建設会社への一括発注を予定していました。
建て主は建築経験が豊富な方でしたので、知人の建設会社2社から見積もりを徴収しました。しかし同時にCM分離発注方式の場合の見積もりも徴収してみたいという建て主の強い希望がありましたので、専門工事業者からも見積もりを徴収し比較したものです。
実はリフォームの工事費を正確に見積もるのは簡単ではありません。築年数にもよりますが、新築よりも難しい部分がとても多いのです。
建設時の図面が残っていないケースも珍しくありませんし、図面があっても工事中に変更をしたり、何年か前に増築などを行っていて、現況の把握が困難なこともあります。そんなときは床下や小屋裏に潜って実測調査を行い、現況図を復元してからリフォームの設計に入ります。
それでも壁の中の壊さないと見えない構造の部分や、経年劣化や漏水による腐朽、そして白アリ被害など正確に把握することは非常に困難なのです。
このように現況の状態を正確に把握できない中で、リフォーム工事の見積もりを総合建設会社から取ってみると、見えないリスクが上乗せされ高額な見積もりになることが多々あります。元請けの総合建設会社も下請けの専門工事業者も、それぞれリスク負担を上乗せしますので、二重の負担が加算されるのが原因の1つだと考えています。
一方でCM分離発注方式では、総合建設会社が入りませんのでリスク負担は基本的に専門工事業者だけになります。結果的に一括発注と比較した場合、工事費見積もりに大きな差が生じていると筆者は分析しています。
さらに1000万円に満たない比較的小規模なリフォームでも設計専業の設計事務所によって設計と監理が行われますので、CM分離発注方式を実施する建て主のメリットは大きいのです。そして今後、より多くの人が住宅の価値を上げるリフォームを実践できれば、日本の住宅事情もよりよい方向へ変わると思います。
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