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シンエイ通信【令和7年3月1日作成 183号】
シンエイ通信【令和7年3月1日作成 183号】

◇九州木材商況
九州沖縄8県の2024年12月の住宅着工戸数は合計7035戸で前年同月比15.3%減と大幅に減少した。
4号特例縮小など法改正を控え、駆け込み需要が若干発生しているとの声も聞かれたが、着工数に影響しなかった。
プレカットは順調に受注している工場がある一方、苦戦が続くところもあり二極化し、各社は非住宅の受注に力を入れている。
製品の荷動きもそれほど落ちず、比較的好調なメーカーが多い。ただ価格は長期にわたり徐々に弱含む一方、丸太の仕入れ価格の上昇で採算性が悪化。国内の外材在庫量が減少するなか、安定供給が可能な国内材の価格が再認識されることを期待しつつ、メーカーは値上げを模索している。
製品市場では、引き合いが好調ではなく、買い方は様子見の姿勢を貫いている。市売りの来場者も減少するなか、複数の製品市場が市場としての在り方や市売の方法の再検討を課題に挙げている。
丸太は1月中旬以降、降雪のため再び出材が減少。熊本県で開かれた記念市では一般材の集荷が減った。
桧合板メーカーが積極的に集荷しているため、昨年末の高騰時の価格に戻った。杉も南九州を中心に高騰している。
【国産構造材】
価格横ばい
構造材の荷動きは羽柄材より鈍いものの、昨年末よりも好調さが続いている。ただ、原木価格が高止まりし、丸太高・製品安の状況を脱することができない。
メーカーは採算性の向上を目指して製品値上げに対する意欲が高く、実施に向け方法を模索している。外材の国内在庫量が減少しているため、国産材に注目が集まるのではないかとの指摘もある。だが構造材は、とくに4号特例縮小に伴い、約3か月後から新築住宅需要が減少し、製品の荷動きが低迷するとの見方が強く、見通しは難しい。
【国産羽柄材】
価格転嫁に苦戦
丸太高・製品安で値上げができていないという課題はあるが、荷動きは順調だ。ただ、製品市場では買い方の様子見と手当て買いが続いている。昨年末には外材の代替需要により桧小割の引き合いが高まっていたが、現在は落ち着いている。
製品価格は長らく変わっていない。新築以外にもリフォームなどで引き合いがある羽柄材は、構造材と比べると6月以降も荷動きがあるとみられる。
【外材】
需要引き締まりも
欧州材などの入荷が不安定ななか、国内挽き米松平角、国産欧州材構造用集成材には在庫を補充する動きがある。先行きの住宅需要には懸念も残るが、供給面から製品需給全体が引き締まる可能性が指摘される。価格は横ばい。杉KD平角も堅調な荷動き。Wウッド羽柄・小割材については、産地高などは米松など他の外材製品と同じく先行観が出てきた。
【集成材】
値上げ気配浮上
構造用集成材の荷動きは、大雪の影響で現場や物流が停止している地域もあるが、この時期の国内集成材メーカーの受注としては悪くない水準との声が多い。
昨年2月も、国内挽き米松KD平角が品薄だった影響で、代替需要が集成材に集まり、引き合いは堅調だった。
今年は米松KD平角の不足感はないが、同正角は品薄が続いている。
昨年10月からは輸入構造用集成材の入荷が低水準で推移しているため、国内集成材メーカーの補充買いが引き合いに反映されているようだ。また、3月の需要が一定程度見えてきたことで、流通川中が在庫手当てに動き出したとの見方もある。
不需要期の荷動きが大きく落ち込んでいないことを受けて、国内集成材メーカーは3月~4月をめどに製品価格の一段高を目指す意向を強めているようだ。背景には、来年年始を挟んでまとまった2025年第1・四半期契約分の交渉で、WウッドとRウッドの構造用集成材とラミナが全面高となったことがある。
【合板・建材】
堅調な手当て
九州の住宅需要は停滞感から抜け出せていないが、プレカット工場、流通業者は建築基準法改正などを控え、針葉樹構造用合板の手当を進めている。他地域で安値からの値上げが打ち出されるなか、12ミリ厚・厚物合板も安定した荷動きで、省エネ基準義務化への対応や非住宅木造建築向けなどで引き合いが継続している。
輸入型枠用合板は公共事業などが少なく荷動きは停滞気味。一方、円高傾向とは言え、手持ち玉のコスト高は変わらず、価格は居所高で売りづらくなっている。
非木質建材は省エネ対策などで問い合わせが増えている。フローリングは体育館向けなどに引き合いがある。
◇3省連携の住宅省エネキャンペーン、総額4480億円で25年も実施へ
国交省事業のリフォームはZEH水準が必須に

住宅の省エネリフォームなどに対する国の 大型補助金「住宅省エネキャンペーン」が2025年も継続して実施されることとなった。予算総額は4480億円。2024年12月17日に成立した補正予算に加え、同27日に閣議決定された当初予算から250億円が計上された。
国土交通省、環境省、 経済産業省は3省連携による4つの補助金事業に予算総額4480億円を計上した。国会審議を経て2024年12月17日に補正予算案が成立し実施 されることが決まった。
国交省と環境省は住宅 の開口部や躯体等に対する一定の断熱やエコ住宅 設備の設置等を補助する 「子育てグリーン住宅支援事業」に2500億円を計上した。うち新築は 「GX志向型住宅」と呼ばれる断熱等性能等級「6以上」、再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量の削減率「35%以上」といった基 準を満たす高性能住宅 に、最大160万円の補助金が出る。
また、リフォームにおいては開口部の断熱改修、躯体の断熱改修、エコ住宅設備の設置など、ZEH水準に相当する省 エネ性能以上の改修工事に最大60万円が補助され る。
さらに今回、特筆すべき点として、分譲住宅・ 賃貸住宅も補助対象とな った。国土交通省住宅局の楠田幹人局長は「すべての住宅の平均がZEHレベルでないと、政府目標のカーボンニュートラルは達成できない。新築はZEHを超える『超省エネ住宅』に対して厚めの支援を行う。
賃貸住宅においても、入居者の環境意識が高まっているため、需要はある」と意義を訴える。
環境省は「先進的窓リ ノベ2025事業」を実施する。熱損失が大きい窓の断熱性能を高める改修工事を促進し、住宅の省CO2化を支援する事業だ。予算は1350億円。補助率2分の21相当、最大200万円とい う高額補助が維持される見込みだ。
経産省は「給湯省エネ2025事業」に580億円を計上した。高効率給湯器の導入を促進し、2024年度から開始さ れ好評だった「既存設備 撤去における加算補助」も継続予定だ。さらに「賃貸集合給湯省エネ2025事業」にも50億円 を計上している。

国土交通省と環境省が合同で実施する「子育てグリーン住宅支援事業」のウェブサイトが、2月7日に公開された。
環境省所管で実施されるGX志向型住宅においては「高度エネルギーマネジメント(HEMS)の導入」が要件に追加された。また、申請の際は事業者に対して「GXへの協力に係る意思表明」を求めることが明らかになった。
導入するHEMSの要件は後日公表される。また、申請時の証明書として、BELSの評価書が必要となる。
GXへの協力に係る意思表明(以下「協力表明」)を行う必要があるのは「工事請負契約を締結し、GX志向型住宅を建築する者」。分譲住宅で、販売事業者と建築事業者が異なる場合、協力表明を行うのは建築事業者で、販売のみを行う事業者が協力表明を行う必要はない。また、意思表明を行った事業者は「【GX建築事業者】」として、ウェブ上で事業者名を公開する。
表明の具体的な内容や書式は後日公開予定。国土交通省の所管で実施する長期優良住宅、ZEH水準住宅、リフォームへの補助を申請する場合は意思表明の対象外となる。
◇ノダ HBW半割品、構造計算に適応

ノダは、構造用MDF「HBW(構造用ハイベストウッド)」の455ミリ幅が許容応力度計算に対応できることの周知を進めている。これは、HBW(9mm厚、3×10判)を半割して施工するだけで狭小耐力壁を設けられるもので、プランが制約されやすい3階建て住宅などの設計自由度を広げることができる。
HBWは、木造軸組み工法で壁倍率2.5倍、2.7倍、4.0倍の構造用MDF面材。
優れた透湿性能で内部結露を防ぎ、建物の長寿命化に貢献するほか、繰り返しの地震に強いという強みを持つ。また、耐震趣味レーションソフト「wallstat(ウォールスタット)」にも対応している。
同社では、東京大学と東京都市大学との共同研究を進め、HBWを横幅方向に切断した場合の性能を確認。4月の建築基準法改正で4号特例が縮小されることに伴い、木造平屋や2階建てで延べ床面積300平方メートルを超える場合、また木造3階建てで構造計算が必要となることを受け、HBWの455ミリ幅でハウスプラス確認検査の構造評価を2024年10月3日付けで取得した。評価値は、短期許容せん断耐力7.01kN/㍍(壁倍率3.5倍相当)。
今回、455ミリ幅で構造評定を取得したことで、耐力面材としてだけでなく、狭小耐力壁としての利用度も高めた形だ。
狭小耐力壁は近年、地価の上昇や建設地不足等を背景に、ビルトインガレージを備えた木造3階建て等でニーズが拡大しており、専用金物を用いた京商大力壁システムが多く採用されている。また開口部を広く取れるとして、木造3階建てだけでなく、集合住宅や事務所・店舗など狭小耐力壁ニーズそのものの市場も拡大している。
同社では、こうした狭小耐力壁ニーズに対し、専用の金物を用いず、現場で半割するだけで狭小耐力を設けられるとして、HBWの訴求力を高めていきたい考えだ。また、狭小耐力壁システムに比べコスト優位性が高く、建築費の軽減につながる点も訴求していく。さらに、ZEHの普及による太陽光パネルの搭載や複層ガラスの採用等で建築物の重量化が進んでおり、必要な壁量の増加が求められている。
これに対して、雑壁をHBWに置き換えるだけで壁量を追加確保できる点などをセミナーを継続的に開催することで周知し、「工務店やプレカット工場の提案力の向上に努めていきたい」という。
◇2024年度住宅ローン調査、「返済期間35年超のローン」が大幅増
住宅金融支援機構(東京都文京区)は2月7日、住宅ローンを取り扱う金融機関に対して実施した「2024年度住宅ローン貸出動向調査」の結果を発表した。回答機関数は301機関。新規の住宅ローンへの取組姿勢について「積極的」と回答した金融機関は、前年度比0.3%減の71.8%で全体の7割を超えた。「現状維持」は27.6%(同0.3%減)、「消極的」を選択した金融機関は前年度の0%から0.7%に増加している。

「積極的」を選択した理由で最も多かったのは「貸出残高増強」(73.0%)で、次いで「家計取引の向上」(67.9%)、「中長期的な収益が魅力」(34.9%)が続いた。上位2つが約7割と3位以下を大きく引き離しているが、3位の「中長期的な収益が魅力」、4位の「貸倒が少ない」は増加傾向で推移している。
積極化方策では、6割以上が「商品力強化」(64.7%)をあげており、「金利優遇拡充」(42.3%)などが続く。「商品力強化」の取り組みでは、「返済期間35年超のローン提供」が最も多く、前回の57.0%から75.8%と大幅に増加した。また、今回から選択肢に入った「団体信用生命保険の保障内容の充実」は44.1%だった。
日本銀行の金融政策変更を受けて、利用率の高い変動型住宅ローンに関して調査したところ、顧客からの金利見直しについての照会が1年前(2023年6月)よりも「増えている」「多少増えている」金融機関が、53.2%にのぼることがわかった。「変わらない」は45.5%、「やや減っている」「減っている」は1.3%だった。金融機関では、照会対応として新たに「面談を通じた案内の開始、充実」(16.2%)、「定期的なフォローアップ訪問の中での案内の開始、充実」(9.8%)などに取り組んでいる。
「リバースモーゲージ」の2023年度新規貸出件数は、前年度比6.4%増の2405件と増加傾向が続いている。取組姿勢については「現状維持」が66.2%で最も多く、金利タイプは「変動型(ノンリコース)」(78.5%)が約8割を占めた。資金使途は「リフォーム資金」「自宅の建設・購入資金」「既存住宅ローン借換資金」と、自宅を対象としたものがそれぞれ8割を超えた。
保証会社等の利用は「住宅金融支援機構の住宅融資保険(リ・バース60)」(55.3%)が最も多く、取り扱い上の課題として「高齢者及び相続人への商品説明」などがあげられている。