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シンエイ通信【令和6年11月1日作成 179号】

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シンエイ通信【令和6年11月1日作成 179号】

◇九州木材商況 

九州・沖縄8県の8月の新設住宅着工戸数は合計7652戸で前年同月比4.8%増と若干増加した。

住宅需要の低迷は続いているものの、昨年よりは住宅需要が上向いているとも声も聞かれる。来年4月に迫る4号特例縮小を前に分譲住宅やアパートの建設が進んでいる。ただ分譲住宅は在庫が余っている場合もあるうえに建設から1年が経過すると中古住宅となり値下がりする不安材料もある。

九州北部では住宅地の地価が上昇している。人件費や木材以外の資材価格上昇も重なり新築住宅の価格が高騰し、一部地域では行政が募集する新築住宅の購入者向けの補助制度への応募が減少するなど住宅が購入しづらい状況は続いている。プレカット工場の受注や製品の荷動きは徐々に上向いている。ただ例年のように需要期が12月まで続く見込みは少なく、11月以降の荷動きが不安視されている。

製品価格はウッドショック前とほぼ同等の水準まで落ちてきているのに対し原木価格は高値を維持しているため、メーカーでは採算性の悪化が課題となっている。また、記念市シーズンに突入したものの、原木は杉、桧ともに例年より出材は少ない。

【国産構造材】

横ばいから弱含み

9月後半以降九州各地の製品市場で記念市が開かれている。市場では当用買い中心で、製品価格は横ばいから弱含み。ただ、例年の秋需ほどではないものの10月に入り市場への問い合わせは増えてきている。

新築住宅着工減少の影響を受けやすく、外材や杉集成管柱など競合樹種が多く杉KD柱を中心に構造材は荷動きが悪い。製品価格が徐々に下がってきている一方で丸太価格はほぼ横ばいのため、製材メーカーは採算面で苦戦を強いられていおり減産しているメーカーもある。しかし、利益率の向上に結び付けることは難しい。

非住宅木造建築もかつてに比べれば補助金の影響などで保育施設や老人ホームなどの建設が減少している。されなる住宅着工減を見据え、プレカット工場は分需要住宅やアパートなどで地場工務店を支援する策を模索している。

【国産羽柄材】

B品の人気続く

リフォーム向けの荷動きもある羽柄材と比べると比較的荷動きは安定している。見積りは徐々に増えているものの11月以降も順調な荷動きが続くかは不透明だ。

九州南部の製品市場ではグリン材、KD材ともに杉小割と同間柱の引き合いが良く売れやすかった。記念市ではローコスト住宅向けを中心にB品の引き合いは強いものの、A品の需要が低迷している。

製品価格はほぼ横ばいで、価格を無理に下げずに販売する意向の製品市場が多い。

【外材】

様子見姿勢強まる

米松、欧州材などの構造材に動きは停滞気味。プレカット、流通業者は手持ち在庫が減っていないなか、米松大手国内挽きメーカーの値下げなどもあり、様子見姿勢が強まっている。一定の需要が出ても国産材などを含めてすぐに帰るという状況で、必要買いに徹する。米松平角・欧州平角との値差が広がった。

【集成材】

10月積み見送り濃厚

集成材の荷動きは、9月は期待されたほど伸びなかったが、10月に入ると国内メーカー品を中心に上向いてきたといわれている。11月の見通しは不透明感が強いが、例年秋需が出る時期でもあるため、大きく落ち込むことはないとの見方が多い。

9月の荷動きが盛り上がりに欠けた要因の一つには、7月~9月にかけて欧州から輸入完製品の入荷が増えたため、国内の在庫が一時的に膨らんだことがあるようだ。足元の需給バランスが緩み、先行きも見通しにくい中で、年明けに到着する先物の仕入れ意欲は極端に縮小している。そのため、集成材とラミナの第4四半期契約分の交渉は、成約が進まないまま1ヶ月以上こう着状態が続く。

【合板・建材】

安定供給を維持

国産針葉樹構造用合板の荷動きは、秋需時期に入ってプレカット、流通業者からの在庫補充の動きが見られるものの、全体の盛り上がりには欠ける。ただ、九州ではメーカー、流通とも需給に合わせた安定供給に取り組み、価格は横ばい。一部ビルダーなどで住宅価格を少しでも抑えるため資材価格の値下げ要請を進めているところもあるが、影響は広がっていない。引き合いが増えているのは厚物のみ。来年度末に向けた非住宅木造建築の需要が出てきている。

輸入型枠用合板は為替の変動が大きく、港頭在庫は多くないが、先行きが見通しづらくなっている。型枠合板でも針葉樹う製品への移行がみられる。

◇リフォーム時の確認申請で周知チラシ配布 確認申請マニュアルも改訂

国土交通省は、2025年4月の建築基準法改正に伴い、木造戸建て住宅の大規模リフォームで確認申請が必要になることを周知するためのチラシを作成し、関連団体等を通じて配布している。

建築基準法における大規模な修繕、および模様替えに該当するリフォームは、25年4月1日以降に工事着手する場合、建築確認手続きの対象になること、および建築士による設計と工事監理が必要になることを記している。

また改正に向け、昨年11月に発行した「2階建ての木造一戸建て住宅(軸組構法)等の確認申請・審査マニュアル」も9月、内容を一部改訂した第2版を、国交省ウェブサイト内の「資料ライブラリー」で公開している。

 

◇4号特例見直しで木質構造材はどう変わるのか

加工を待つ杉CLTマザーボード

木造住宅等の構造材はこれからどうなっていくのか。4号特例の見直し、省エネ適判の義務化、断熱等性能等級における最低基準の引き上げ——。

プレカット大手の経営者は「工務店の対応が遅れている。私見だが、建築業界は姉歯事件以上の混乱を引き起こす恐れもある」と指摘する。

木材業界では、建築事業者の確認申請停頓だけでなく、確認申請を行った場合でも確認審査の法定審査期間が大幅に長期化することで、法改正と前後して姉歯事件当時のように木材製品の動きが人為的に鈍化することも警戒する。

構造図書、省エネ適判とも確認申請時に提出する義務があり、それができない工務店は確認申請に進めないことになる。また、新築にとどまらず、これまで確認申請が不要であった2階建て以下の木造建築物で主要構造部(屋根・壁・柱・梁・床・階段)のうち1つ以上について半分以上修繕や模様替えする大規模リフォーム等も確認申請対象となることも忘れないでほしい。自力か他力かはともかく、半年といわず年内には法改正に対応できるように準備していくしかない。

4号特例の見直しに伴い、どのような変化が出てくるのか、木材業界も強い関心を示している。

4号特例では建築士が設計する場合、建築確認申請時に構造耐力関係規定の審査を省略できたが、25年4月着工分からは構造に関する図書の提出が義務化される。最大の関心事はこの改正を受けて木質構造部材で工務店等は何を選択するのかという点だ。特に強度裏付けを基準強度に依存する構造用製材関係者は、需要家からの評価を不安視している。

4号特例見直しに伴い、構造計算等を実施する場合、工務店はどのような木質構造材を選択するのであろうか。

◇アルミサッシに貼って冷気の侵入と結露を抑制

窓枠からの冷気の侵入を抑えるDIYアイテム「ワクピタテープ」を発売した。

熱を伝えやすいアルミサッシに貼ることで、室内への冷気の侵入と窓枠の結露発生を抑制する発泡ポリエチレン・PET+アクリル系粘着剤のテープ。冬だけでなく夏の温度上昇の緩和にも効果的とする。
幅4×長720cm、幅6×長400cmの2サイズ。色はホワイト、グレー、ブラウンの3色。税込600円。

◇木造建築物の保全管理でパンフレット作成

国土交通省は10月18日、木造建築物の維持管理方法やコストなどを建築主向けにまとめたパンフレットを公開した。「中大規模建築物に木材を利用する際に知っておきたい維持保全・維持管理の考え方と設計等の工夫」、「技術情報資料」の2種類で、発行は(公財)日本住宅・木材技術センター

木造建築物の維持保全・維持管理の方法を示した資料や情報が少なかったことから、同省内に情報提供のための専門委員会(木造建築物の適切な維持・管理情報の提供事業委員会・大橋好光委員長)を設置。既存建築物の事例調査を経て、耐久性を確保するための留意点を整理した。

◆ダウンロード先
国土交通省HP「木造建築物の維持保全・維持管理について

パンフレット(左)と技術資料の表紙

対象とする木造建築物(イメージ)は、低層を含む4~5階建て程度の非住宅用途および共同住宅。さまざまな構法、耐火要件下で躯体や内装材・外装材に木材を利用する場合を想定している。

主な項目は、▽維持保全維持管理計画▽中大規模木造建築物におけるライフサイクルと維持保全・維持管理▽木材利用部分の維持保全・維持管理▽維持保全コストを低減させる設計・使用材料の工夫▽維持保全維持管理を容易にするための工夫▽維持保全のための資料の整備と保管―など。

構法別の維持管理上の留意点では、例えば両面大壁仕様などで被覆する場合、木造躯体が露出しないため耐久性を確保しやすいが、何らかの理由で内部に水や湿気が侵入すると乾燥しにくく木材が腐朽。その発見は遅くなり、被害が拡大しやすいため、一次防水層 (外装材など)により被覆部分のこまめな維持保全が必要だとしている。他にも、片面大壁仕様などで被覆する場合、室内側に全体現しとする場合、屋外に全体露出する場合などの留意点も示している。

「技術情報資料」では、パンフレットの内容を補足する資料として、▽予防保全と事後保全の費用比較例▽木材に生じる経年変化の強度への影響▽中・長期修繕更新費用の算出▽軒の出の寸法と壁面への作用雨量の関係▽木材保護塗料の再塗装の実施時期▽水が切れやすい部材の納め方の例―などを掲載している。

◇テスラの家庭用蓄電池、ヤマダ電機で購入・設置可能になる

Tesla Japan(東京都港区)はこのほど、同社の家庭用蓄電池「Powerwall」が、全国のヤマダデンキ店舗(沖縄県内を除く)で購入・設置可能になったと発表した。施工はテスラ「Powerwall」認定販売施工会社のアルシスが行う。全国規模の家電量販店での取り扱いは、ヤマダデンキが初。10月25日にオープンするヤマダデンキ Tecc LIFE SELECT 湘南平塚店から、Powerwallの展示を開始する。

Powerwallは、蓄電容量13.5kWh、出力5kWの全負荷型の家庭用蓄電池。4人世帯が消費する約1日分の電気を蓄電することができ、エアコンやIH調理器などの200V機器も利用可能。太陽光発電システムと連携し、日中に発電・蓄電した電力を夜間に利用することで、昼夜再生可能エネルギーで暮らすことも可能となる。10台まで拡張できるため、戸建て住宅のほか、集合住宅、宿泊施設、商業施設、公共施設など幅広い分野で活用できる。