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シンエイ通信【令和6年9月1日作成 177号】
シンエイ通信【令和6年9月1日作成 177号】
◇九州木材商況
九州・沖縄8県の6月の新設住宅着工数は、合計8026戸で前年同月比9.7%減と減少した。
九州全域で注文、分譲を問わず、戸建て住宅の需要低迷が続く。今後住宅需要が増える要因は少なく、「年内は厳しい状況が続くのではないか」との声が多く聞かれた。
例年並みの秋需は期待できないとの見方が強い。ただ、買い方は在庫を抱えておらず、流通関係者は少しでも需要が上向けば荷動きも若干活発になるのではないかと指摘する。
製品価格は若干弱含み傾向にある。九州向けよりも、関東・関西向けの荷動きが芳しくない。価格を下げても翌月の出荷量増加につながりにくく、製材メーカーが置かれている状況は厳しい。一方で丸太価格は安定しているため、メーカーでは採算が悪化し、先行きを不安視している。
アパートなど非住宅やリフォーム向けは比較的好調だ。加えて1坪当たりの木材価格を下げるため、プレカット工場が樹種や等級を細かく提案していることも影響し、KD材B品の引き合いが高まっている。そのため製品市場ではB品の売行きが良く、メーカーにも問い合わせがあるが、B品の生産量のみを増やすのは難しい。
【国産構造材】
今年中の荷動き不安
造・改築向けの荷動きは比較的安定しているが、新築住宅向けの需要は振るわず、全体的に引き合いが弱い。
価格は若干弱含みだが、丸太価格は安定しているため、製材メーカーは採算が悪化。メーカー関係者は「粗利が上がらないため、生産量を増やして補う必要がある」と話す。今年いっぱいは厳しいとの見方が多く、先行きが不安視される。
市場では当用買い中心で弱い引き合いが続いている。
【国産羽柄材】
杉KD小割が荷余り
間柱は比較的荷動きがあるが、新築住宅向けの需要減少により小割は荷余りしている。
マンションやアパート、非住宅向けは好調で一般住宅向けでもB品の需要が増えている。だが、製材メーカーはKD材B品の生産を増やすのは難しいという。住宅向けの引き合いが伸びる要素は少なく、先行き不安が続く。
製品市場は特売に力を入れているところが多く、特売での販売は比較的安定している。製品価格が弱含んでも荷動きは鈍いため、メーカーは厳しい。
【外材】
値上げ揃うも在庫増
国内挽き米松製品が値上げを実施し、国産欧州材構造用集成材とともに、外材構造材は全般に値上げ環境が整った。ただ、プレカット工場などは遅れて入荷している輸入製品などの在庫を持ち、新規発注を可能な限り抑えている。「今後、国産欧州材構造用集成材の値上げが通っていくかが注目点」と指摘する。
米松平角は、KD材が強含みで、国産欧州材構造用集成材と根差が縮小している。ただ、引き続き長尺材などには不足感があり、米松構造用集成材にも引き合いがある。
【集成材】
8月は木材全般に需要が低迷し、集成材の荷動きも停滞している。輸入完製品の入荷は順調だが、浮き玉への引き合いは薄い。
国内集成材メーカーへの注文も、盆休み前の8月上旬は鈍化が目立ち、盆明けは多少引き合いが戻った様子も見られるが、全体としては停滞感が続いている。
構造用集成材の需要のベースとなる在来木造住宅の着工数が上半期で前年比4.7%減となり、需要の小山となる盆前上棟や、盆明け用の資材手当の動きを鈍らせているとみられる。
荷動きが停滞すると相場は緩みやすくなるが、集成材は強含んでいる。輸入完製品は、戦地価格上昇と記録的円安の影響を受けた第2・四半期契約分が本格的に入荷し始め、入荷コストが前年比1万円高/㎥に急上昇した。
【合板・建材】
流通在庫で需要に対応
針葉樹構造用合板の荷動きに回復感は見られず、流通業者やプレカット工場は必要買いに徹している。九州の合板工場では設備更新により生産量が一時的に減少していたが、その間もメーカー・流通在庫で需要に対応し、混乱はなかった。価格も横ばい。他地域で値上げが唱えが進むなか、運賃などを考えても、買い方は冷静な手当て。厚物合板も引き合い、価格とも横ばい。非住宅向けは底堅い需要があり、来年に向けても回復見込みが出ているという。
輸入型枠用合板の荷動きは低調。円高傾向により先高観が弱まっており、日露応回姿勢が強まっている。港頭在庫は適正水準だが、高コスト玉が課題になる。
◇万博のシンボル、1周2キロの大屋根「リング」が一つの輪に
来年4月に開幕する大阪・関西万博のシンボルとして、大阪湾の人工島・ 夢洲 で建設されていた大屋根(リング)が21日、組み上がり、一つの輪につながった。
リングは1周2キロ、幅30メートル、高さ12~20メートルの世界最大級の木造建築物。「多様でありながら、ひとつ」という万博の理念を表している。建設費は344億円。会期中、来場者が屋根の上と下を歩いて回遊できる。
大手ゼネコンの大林組、竹中工務店、清水建設のそれぞれが共同企業体を組み、三つの工区に分けて、昨年6月から工事していた。この日午後、クレーンで最後の木材がはめられ、組み上げが完了。人員配置の効率化などにより、当初予定より約1か月、工期を短縮したという。今後、エレベーターを設置するなどし、来年2月に完成させる。
内側に配置される海外パビリオンの建設は遅れが指摘されており、本格化するのはこれからだ。
◇能登半島地震の被災地「MIRAIE採用495棟 全半壊なし」
住友ゴム工業は、1月の能登半島地震の被災地である石川県珠洲市など震度6弱以上のエリアで、同社の住宅用制振ユニット[MIRAIE」を採用した住宅495棟の被害状況を調査した。
MIRAIEは、同社の高減衰ゴムを採用した精神ダンパーで、「伸び縮みを繰り返し使用できる」という特徴を生かし、地震による運動エネルギーを瞬時に熱エネルギーに変換することで揺れを吸収し建物を守る。
同社は「ゆさゆさと揺れて木造家屋に大きな被害をもたらすキラーパルスが珠洲氏を中心とした地域で観測され、珠洲市などの地域では木造家屋の全半壊の東が多かった」と分析。余震は6か月で約1800回、震度5以上の地震も1月1日から19回以上が発生している。同社のMIRAIEを採用した住宅は、当該地域を含む新潟県長岡市214棟、̪志賀町23棟、七尾市115棟、穴水町12棟、能登町24棟、珠洲市21棟、輪島市29棟、中能登町57棟など4市、4町で495棟が建設されていることが分かった。
◇セブン&アイ 実はお買い得
セブン&アイ・ホールディングスがカナダのアリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けた。
日本企業最大手の巨大企業がターゲットとなったことに驚きが広がっているが、Ⅿ&A(合併・買収)のバリュエーション(投資尺度)の観点でみれば、ある意味必然だったとも言える。
「実現したら間違いないく過去最大のアウトイン案件だ」。買収提案が明らかになった19日、投資銀行業界も大騒ぎになった。直前のセブン&アイの時価総額は5兆円弱。全額現金によるTOB(株式公開買い付け)で、プレミアム(上乗せ幅)がM&Aで一般的な3~4割程度と仮定すると、少なくとも6兆円台の超大型案件になるからだ。
レコフデータによると、海外企業が日本企業を買収するアウトインは、米ベインキャピタルなどが2018年に東芝メモリ(当時)を約2兆円で買収したのが過去最大だ。
2024年4月期の売上高が約10兆円で、11兆円を超えるセブン&アイ(2024年2月期)を下回るアリマンタシォンにそんな巨額買収が出来るのか、懐疑的な声も出た。提案が明るみに出た後、アリマンタシォン株が下落したのも、高値づかみや財務体質悪化への懸念だろう。
だが、Ⅿ&A業界で物差しとして使われるバリュエーションをみると、別の側面が浮かび上がる。
時価総額に純有利子負債を足して算出する事業価値(EV)がEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の何倍かを示すEV/EBITDA倍率は、買収資金を何年で回収できるかの目安にもなる。QUICK・ファクトセットによるとセブン&アイの銅倍率は買収提案が明らかになる直前で6.98倍、提案が市場に伝わり急騰した株価でも7倍台半ばにとどまる。
つまり7年で投資回収できる計算になる。ライバルのイオンは10倍弱、アリマンタシォンは約11倍で、セブン&アイは目立って低い。アリマンタシォンは20年にも買収提案しており、当時のセブン&アイ株は1000~1200程度。新型コロナウイルス禍で銅倍率は3~5倍しかなかった。
足元のセブン&アイ株は、今年に入り株式分割を考慮した上場来高値を更新するなど当時の倍近い水準だ。それなのに買収提案をなぜ今再び、まだかなり割安なのだ。
グローバル比較をすると、より際立つ。KPMGFASの調査では、日本の消費財・小売業界のEV/EBITDA倍率の平均は12倍。米国は17.1倍で中国は21.7倍もある。つまり海外では小売業の投資回収に20年近くかかるのが一般的。セブン&アイは「買収資金さえ調達できれば金額自体は大きいが、高値づかみどころかお買い得」なのだ。
こうした事象は日本の他業種でも同様で、トヨタ自動車のEV/EBITDA倍率は9倍強だが、自動車・耐久消費財業界の同倍率は米国で19倍、中国で11.7倍だ。
日本の各業種のトップ企業は買収指標でみると海外からは軒並み「お買い得」に見えてしまう状況にある。KPMG FASの石井秀幸執行役員は「バリュエーションの日米差は成長期待、収益性、資本効率の差からきている」と指摘する。
日経平均株価は再び高値圏に向かいつつある。たとえ上場来高値を更新したとしても、Ⅿ&Aの投資尺度で見ればまだ割安であると、経営者は肝に銘じなければならない。今回の事例はそれを示唆している。
◇リブワークの3Dプリンターハウスが建築確認済証を取得
Lib Work(熊本県山鹿市)はこのほど、建設用3Dプリンターを活用した住宅「Lib Earth House “modelA”」について都市計画区域内で建築確認申請を行い、建築確認済証を取得したと発表した。同社独自の土を主原料とした3Dプリンターハウスが、法適合した住宅として正式に認定された。
「Lib Earth House “modelA”」は、地上1階、建物高さ約3.2m、延床面積約15㎡。建築物を支える主架構を集成材によるラーメン造とし、周囲に3Dプリンティングによる土壁を設置している。土壁は構造的に分離・自立しており、主架構へ負担がない外装材となっている。今回、国土交通省を含む行政との協議により、同建築の土壁が外装材として法的に問題ないと判断され、建築確認申請の決裁を得ることができたという。
建設用3Dプリンターを活用する住宅建築は、大幅なコスト削減や工期短縮に貢献できるほか、職人の高齢化や人材不足といった建設業界が抱える課題の解決につながるとして、同社は開発を推進。同モデルハウスでは、3Dプリンティングに2週間(延べ72時間)、木工時に2週間、そのほか工事を合わせて合計3カ月の工期を実現した。3Dプリンティングの材料は土が約75%、そのほか結合剤として石灰やセメント、繊維材として藁、骨材としてもみ殻を混ぜ合わせたものを使用。IoTを積極的に導入し、玄関ドアに顔認証の自動ドアを採用した。
2024年度中にLDKやトイレ、バス、居室などを設けた約100㎡のモデルハウスを完成させ、2025年に一般販売を開始すべく開発を進めるとしている。