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シンエイ通信【令和6年6月1日作成 174号】

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シンエイ通信【令和6年6月1日作成 174号】

 

◇九州木材商況 

九州沖縄8県の3月の新設住宅着工数は、合計6477戸で前年同月比28,4%減と大幅に落ち込んだ。戸建ての需要が減少し市況が冷え込む中、プレカット工場、メーカー、市場は厳しい状況にある。大型連休でメーカーの生産量が落ちるため製品価格は保たれるとの予想もあるが、流通関係者は「5月~7月とプレカット工場、販売店の仕事量は少なく、石油気が不安定だ」とこぼす。

プレカット工場は住宅向けの苦戦を非住宅向けで補う。ただ、九州南部では牛舎が落ち着くなど昨年より伸び悩む地域もあり、先行きが不安視される。

「物流の2024年問題」を受け、運送会社は運賃の引き上げを要請している。関東、関西など遠方に出荷する九州のメーカーには、長距離輸送は重要だ。運賃上昇を価格に転嫁するため、宮崎県都城や九州北部のメーカーは製品価格を引き上げる意向だ。しかし、九州以外の顧客からは比較的理解を得られているが、九州城内での周知は難しい。

原木集荷は4月以降回復してきたが、需要は減少。丸太価格も本格的に下がり始めた。メーカーでは採算の悪化を歩留まりを良くすることで補っている。

【国産構造材】

メーカー値上げの方針

杉KD製品は特に正角の引き合いが弱く、市場では当用買いが目立つ。運送会社から値上げ要請を受け、宮崎県都城や九州北部のメーカーは製品価格への転嫁を始めている。

九州南部は杉ムク材で住宅を建てることが多いが、杉集成材とムク材の価格差の縮小で、梁桁を中心に集成材への変更が進む。

九州南部のメーカー関係者は「1戸当たりの出荷量が減り、生産調整をしないと厳しい」と話す。

【国産羽柄材】

桧小割の需要低迷

杉KD間柱は比較的に荷動きが良い。だが、米松やアカ松など競合樹種があるうえ、国産材メーカーの供給量も多い杉KD小割には若干荷余り感が出ている。

桧KD小割は昨年末まで米松KD小割の代替需要があったが、現在は引き合いが落ち込んでいる。

【外材】

荷動きは低調

プレカット工場の稼働率は回復が遅れ、横架材などの手当ても先を見据えた在庫補充ではなく当用買いが中心。価格も横ばい

米松、アカ松の羽柄小割は先行観があり、居所高で推移している。ホワイトウッド製品も今後は産地価格高、入荷減が予想される。杉KD製品などへの代替も進んでいるが、住宅需要が低迷するなかで全般に荷動きは良くない。

【集成材】

構造用集成材の荷動きは、4月にいったん上向いた様子が見られたが、実需が落ち込んでいる為か想定より消化が進まず、再び市中在庫が溜まった模様。

冬場は品薄感もあった市中在庫が一定程度充足した要因として、冬場に入荷が遅れていた輸入完製品が3、4月とまとまって入ってきたこともあるようだ。

大型連休明けの需要も4月と変わらず、構造用集成材の引き合いも再び一服感が出始めた。それに伴い、値上げの動きも様子見の雰囲気が濃い。「物流2024年問題」の影響で、国内の集成材メーカーが負担する輸送費は上昇しているケースが多い。

メーカーは上昇分を製品価格に転嫁する動きを強めているが、需要の追い風が弱いため、進まない様子もうかがえる。

【合板・建材】

価格修正で在庫補充も

住宅需要は低調なままで、針葉樹構造用合板の荷動きも活発さに欠ける。ただ、前月から他地域に比べ居所高だった九州では価格が調整され、本州との価格差が縮小したことでプレカット工場、流通業者など在庫補充の動きも見られる。

輸入合板は入荷減などから居所高で、円安による先高観もある。建築需要も回復せず、引き合いは弱い。

合板の需要として同行が注視される非住宅木造建築向けは、足元の荷動きが続いているものの、先行きの仕事量は減少見込みだ。ただ、各地でスポーツ施設の整備などが進み、厚物床用などに引き合いがある。

◇子育てエコホーム事業で注意喚起 「不正は厳正処分」

国土交通省は2023年度に実施した「こどもエコすまい支援事業」で不適切な申請があったことを受け、24年度事業の「子育てエコホーム支援事業」への登録事業者に対して注意喚起を行った。不適切な行為によって補助金の交付を受ける、または受けようとした場合には厳正な処分を行うとしている。

同省によると、23年度の事業では▽工事請負契約書などの改ざん▽建築着工日・工事着手日の改ざん▽同一の工事写真を複数の申請に流用▽建築確認済証の改ざん▽新築の住宅性能証明書の改ざん▽リフォームの性能証明書等の改ざん・偽造▽住宅でない建物の申請▽同一工事における他事業との重複申請―などがあったという。

23年度事業では、交付規程と事業者登録規約により、事業者や消費者に対して立入調査(現地調査)に協力することを義務化。事務局が無作為に選んだ補助対象住宅で調査を実施している。立入調査では、事務局の調査員が対象住宅を訪問し、実際の工事状況や原本書類が申請書類の内容と一致しているかを確認。工事箇所の写真撮影を行う。交付申請した事業者にも調査への同行を求めている。

一方、24年度事業では不適切な申請と疑われるものについて、電話による問い合わせや追加書類の提出、補助対象住宅への現地調査を行う。現地調査で不正が確認された場合は事業者名の公表に加え、交付決定の取消し、交付済み補助金の返還、他の事業への参加停止、住宅局所管の補助金に3カ年参加停止、警察への通報などの厳しい措置が行われる。

ワンストップ申請の受付開始に遅れも

「住宅省エネ2024キャンペーン」の5月24日午前0時時点の補助金申請額の割合は、「子育てエコホーム支援事業」の新築が16%、リフォームが8%、「先進的窓リノベ2024事業」が8%、「給湯省エネ2024事業」が23%に到達。「賃貸集合給湯省エネ2024事業」については、4月の交付申請件数が116件(3683万円)に達している。

また、「給湯省エネ2024事業」で別途支給している電気温水器、電気蓄熱暖房機の撤去に対する加算措置の申請額が、5月20日時点で予算枠の30%に達したと発表。予算額は設置事業とは別に40億円を確保しており、上限に達した段階で受付を終了する。

他に、4月中に開始が予定されていたワンストップ申請の受付がまだ始まっていないとの報告も寄せられている。

24年度版「中小企業白書」人手不足・賃上げ・価格交渉に重点

2024年版「中小企業白書」「小規模企業白書」がこのほど閣議決定された。

能登半島地震の状況と、新型コロナウイルス感染症で受けた影響について分析したほか、中小企業の現状と直面する課題、今後の展望などについてまとめている。

中小企業・小規模事業者が直面している課題では、企業の人手不足が深刻化していることを取り上げた。少子化により就業者数の増加が見込めない中、省力化への投資や単価の引上げを通じた生産性向上が求められている。

主な内容は次の通り。

能登半島地震の被害は広範囲に

◇能登半島地震では、北陸三県、新潟県などに主要な生産拠点を持つ企業や地場企業、セットメーカーなどの広い範囲で、建物や設備の損傷などの被害を受けた。その被害額は約1.1~2.6兆円と推計されている。(※内閣府調査)

◇BCP(事業継続計画)を策定する企業は、2023年時点で15.3%にとどまっているが、近年災害が増加傾向にあることを背景に年々増加する傾向にある。BCPを策定している企業のうち、約半数が「従業員のリスクに対する意識が向上した」と回答している。(※東京データバンク調査)

◇コロナ禍では、約半数の中小企業が「持続化給付金」「政府・民間系機関による実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」「雇用調整助成金」を利用。ゼロゼロ融資を利用した割合は、建設業では「政府系」が40.8%、「民間系」が43.8%だった。ゼロゼロ融資を受けた企業の倒産率は、比較的低い水準(5.7~8.3%)に抑えられたことが分かった。(※東京商工リサーチ調査)

ゼロゼロ融資利用後の倒産件数

能登地震発災から4カ月 恒久的な木造長屋100戸が完成

石川県が4月25日に公表した、能登半島地震発災から4カ月後の復旧状況によると、4月末までに着工した応急仮設住宅は5687戸で、完成した住宅は3368戸となった。完成した住宅のうちプレハブが3268戸、長屋が100戸となっている。(※数字はいずれも見込み)

着工した住宅のうち24%は、恒久的な住まいとすることも可能な木造住宅で、輪島市の南志見地区に2月中旬から着工。木造長屋づくりの平屋で、県産木材を外壁や床材などに活用した。また、屋根には黒瓦が採用されている。

木造住宅建設現場(輪島市南志見地区)

会見では、記者から「プレハブが優先されるのは分かるが、高齢者が多い地域だからこそ、永住できるような応急仮設住宅が必要なのではないか」との質問があった。これに対し、馳浩知事は「どこに住むかというのは個人の判断。私ならばにぎやかな方が好きなので木造長屋型を選ぶが、実際にプレハブを選ぶ人が多いのは、早く落ち着いた場所に入りたいからではないか」と回答している。

◇柱間にはめ込んで施工するだけ 多機能耐震パネル「タフボード」

ビスダックジャパン(大阪府堺市)は、柱間にはめ込んで施工するだけで、壁倍率4.5倍(※タフ900の場合)の耐力壁を施工できる「タフボード」を販売している。壁倍率が高強度なだけでなく、壁変形率が15分の1以下と“ねばり”があり、「新パネルの中では唯一、限界計算に対応することができる製品」という。国土交通大臣認定で、4号建築物の許容応力度計算が可能。

タフ455では、柱芯寸法455サイズの狭小寸法で、壁倍率3.5倍を実証し、袖壁や狭小の耐力壁の追加で耐力を確保する。プレカットに含めるなどの手間は不要で、耐震建材として柱間にはめ込み釘止するだけの簡単施工。和室などの真壁の収まりが可能、ホールダウン金物と干渉しない、メーターモジュールに対応、工場生産による均一化でコストダウン化といったメリットがある。

また、簡単に「立ち」「対角」が出せ、水平構面にも使える「タフトライ」も発売予定。現在、販売代理店を募集している。権利金・保証金・加盟金は不要。