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シンエイ通信【令和4年4月1日作成 148号】
シンエイ通信【令和4年4月1日作成 148号】
◇ロシアリスク(ウクライナ侵攻による供給への影響)
ロシアのウクライナ侵攻による木材供給への影響は現時点では見られないが、輸入材の供給動向はさらに不透明になった。
プレカットの引き合いはハウスメーカーを中心に強い。ただ、大工が年度末の物件完工に向けて動いていることから新規の上棟件数が少なく、加工坪数も減少した。合板不足は続いているが、加工坪数が落ち込んだことで何とか間に合わせた感じだ。
【国産材構造材】
製品の荷動きは、杉・桧とも前月同様に動きが鈍い。販売店も在庫を持たずに販売しており、流通在庫は増えている。
現状、輸入材製品が安定して入荷していることから、今後の製品価格は、価格が下がったまま上昇しないで推移する見込み。
【米松製品】
2月製品入荷量は昨年12月にまとまった量が入荷した反動で大きく減少した。
米松丸太価格は産地需要が高まっているため高値で張り付いている。前月と同様に米松、米ツガとも105ミリ角の引き合いは好調で、90ミリ角の引き合いは落ち着きが見られる。
【集成材製品】
2月集成柱・集成平角ともに生産・輸入コストに応じた高値で維持している。
しかし、3月半ばを迎えた現在、欧州産地企業との新規交渉の遅れやウクライナ問題の長期化への懸念が強まったことで、先行きの供給に対する不安は市中に広がりつつある。ロシア産構造用集成材やラミナの入荷はもちろん、中欧の港や地中海航路の使用可否が不透明な欧州材も十分な数量が供給されるのか心配の声が上がり始めている。
輸入構造用集成材やラミナの主産地である欧州では、産地企業ごとに生産・供給体制が異なっている。WウッドKD間柱を主とする羽柄材も同様です。日本への供給意欲が著しく低下した訳ではないものの、原料のタイト化や輸送コンテナ確保の難航で思うように生産及び出荷に結びつかない事情もある様子。
【合板製品】
ロシア政府が10日に発表した単板の輸出禁止は、国産針葉樹合板市場に大きな衝撃を与えている。
針葉樹合板が生産減となれば、昨年から続く品不足が一段と強まる可能性がある。ロシア産単板を使用している国内合板メーカーでは国産材をふくめた代替材を模索しているが、容易ではない。特に合板用国産丸太は全国的に不足感が続いており、高値圏で推移している。このため、国内合板メーカーがカラ松単板の代替を国産材に求めれば、国産材丸太の争奪戦がさらに激化する恐れがある。さらに値上げの要請も考えられる。
◇建材価格が“軒並み急騰中” 材木や石膏や建材など深刻
米労働省労働統計局がこのほど発表した「生産者物価指数(Producer Price Index)」で、アメリカ国内で住宅建設のために使用される資材価格が、1月に3.6%上昇したことが明らかになった。
針葉樹材の価格が25.4%、外装・内装塗料の価格が9.0%と、高い上昇率を記録したことが影響したとみられる。
建築資材の生産者価格は過去4カ月間で8.4%増加し、前年同月比では20.3%の上昇を記録した。一昨年同月比では28.7%の増加となる。
針葉樹材の生産者物価指数は、前月の21.3%を上回る、25.4%の上昇。2021年9月に底を打った針葉樹材の生産者価格は再び高騰し、この4カ月で73.9%も上昇している。
シカゴ・マーカンタイル取引所(アメリカ・イリノイ州シカゴ)における材木先物価格は、3月10日現在で1216米ドル(約14.3万円)となっており、アメリカ国内における「ウッドショック」が残した爪痕の深さを示唆している。
建築用塗料の生産者物価指数は、外装・内装共に9.3%増加した。前年比では、外装塗料が30.3%、内装塗料が21.2%もの上昇となった。
建材価格の高騰は材木価格上昇の影響も大きいが、建築用塗料の価格上昇も無視できないものとなっている。
石膏製品の生産者物価指数は3.4%増加し、11カ月連続の上昇となった。
コロナ禍の影響で住宅価格が上がり始めた2020年の8月以降、石膏の生産者物価指数は一度しか下落しておらず、この1年半を通して上昇を続けている。前年比で23%の上昇は、データが閲覧可能となった2012年以来最高の上昇率となる。
主要な建材の価格が高騰する中で、鉄鋼製品の生産者物価指数は約1年半ぶりに低下したが、それでもこの1年で価格が2倍以上になっている。「ウッドショック」が業界内外で注目を集めているが、あらゆる建材の価格が軒並み高騰しているため、「建材ショック」ともいうべき様相を呈している。
◇ノーリツ、給湯器など価格改定
ノーリツ(兵庫県神戸市)は、7月1日受注分から、希望小売価格を最大10%程度値上げする。対象商品と値上げ率は以下の通り。
原材料価格やエネルギーコスト、物流費の上昇に対して、全社をあげて生産性の向上や合理化によるコストダウンを行ってきたが、企業努力ではコストアップに対応することが困難な状況になった。
◇パーティクルボード、4月から一律20%値上げ
日本ノボパン工業は、4月1日からパーティクルボード(PB)全製品を一律20%引き上げることを発表し、関係取引先に理解を求めていく。
PB製品にかかわる製造コストがすべての面で急速に上がってきたことによるもので、今年1月から値上げした価格に上乗せするかたちとなる。
同社がPB全製品の値上げを打ち出したのは、原料であるチップや接着剤が昨年から一段高になったため。同社が投入するチップはリサイクルチップが大半を占めているが、工場近隣からのチップ確保が限界にあり、やむなく遠隔地からの入手機会が増えてきた。なかでもガソリンの値上がりやトラックの確保、運転手への支払い等の輸送費が15~20%上がるなどし、工場着のチップ価格が5~10%値上がりしている。
また、接着剤は原油の値上がりがベンゼン、ナフサ価格に波及し、玉突き的な動きでユリア、メラミン樹脂やMDIなどの製品が、同社試算でも30%近い値上がりとなる。
同社は昨年11月30日に今年1月からの構造用(STPⅡ)やプレハブ住宅メーカー向け床下地、野地板の12~15%の値上げを発表した。
しかしその後、ロシアのウクライナ侵攻などで原油価格が100ドル(1バレル当たり)を突破しるなどエネルギーマテリアル両面にわたってコスト高要因が相次いだことで、今回これまでの値上げ価格に更に追加することを決めた。
PBは原料問題に加えメーカーの工場内トラブルなどが重なり、化粧用や置床用など様々な商品分野で需給がタイトになる状態が続いている。
同社は本社、筑波工場で月間2万5000㌧を製造する国内最大のPBメーカーで、他のメーカーも追随することが考えられる。
◇第3四半期リフォーム・リニューアル受注高は住宅17%増
国土交通省は3月11日、「建築物リフォーム・リニューアル調査報告」の2021年度第3四半期受注分を発表した。リフォーム・リニューアルの受注高は前年同期比21.6%増の3兆1581億円。このうち住宅は17.1%増の1兆332億円、非住宅は23.9%増の2兆1249億円となった。
住宅を工事種類別に見ると、増築工事が50.4%増の120億円、一部改築工事は15.2%増の200億円、改装・改修工事が31.1%増の8397億円。維持・修理工事が16.7%増の1614億円となった。
住宅の用途・構造別では木造戸建てが4532億円(5.0%減)、コンクリート系構造の共同住宅が4368億円(54.2%増)の順に多い。発注者は個人6252億円(0.8%減)、管理組合1678億円(93.6%増)の順となっている。工事目的別の受注件数(複数回答)は、「劣化や壊れた部位の更新・修繕」が153万6151件(8.5%減)、「省エネルギー対策」が6万6361件(27.6%減)の順に多い。工事部位別(複数回答)では「給水給湯排水衛生器具設備」が47万9552件(27.0%減)、「内装」が35万7137件(7.2%減)の順に多かった。
◇石綿の事前調査結果の報告が義務化―4月から
建築物などの解体・改修工事を行う施工業者(元請け事業者)は4月1日から、該当する工事で石綿含有有無の事前調査結果を労働基準監督署に報告することが義務づけられる(大気汚染防止法に基づき、地方公共団体にも報告する)。
報告対象は、▽建築物の解体工事(解体作業対象の床面積80m2以上)▽建築物の改修工事(請負金額が税込み100万円以上)▽工作物の解体・改修工事(請負金額が税込み100万円以上)▽鋼製の船舶の解体または改修工事(総トン数20トン以上)――のいずれかに該当する工事。個人宅のリフォームや解体工事なども含まれる。
報告は、原則として電子システム「石綿事前調査結果報告システム」から行う。パソコン、タブレット、スマートフォンから、行政機関の開庁日や開庁時間にかかわらず、24時間いつでも報告が可能。1回の操作で、労働基準監督署と地方公共団体への報告を同時に行うことができ、複数の現場の報告も、まとめて実施できる。
◇民間等の建築工事55.1%増――受注動態統計調査1月分
国土交通省は3月11日、2022年1月分の建設工事受注動態統計調査報告を公表した。1月の受注高は6兆7338億円で、前年同月比1.8%減少した。うち元請受注高は4兆2391億円で同0.4%増加し、下請受注高は2兆4947億円で同4.2%増加。民間等からの受注工事のうち建築工事・建築設備工事は9033億円で同55.1%増。発注者別・工事種類別では、不動産業の「住宅」が1377億円となっている。
同統計調査は、建設業許可業者(約48万業者)の中から、約1万2000業者を対象にして毎月行っている。
業種別では、総合工事業は3兆9220億円(同2.2%増)、職別工事業が1兆356億円(同11.1%減)、設備工事業が1兆7761億円(同10.0%増)。
元請受注高について発注者別にみると、公共機関からは1兆599億円(同21.7%減)、民間等からは3兆1792億円(同10.9%増)だった。また、工事種類別では建築工事(建築設備工事を含む)が2兆7844億円(同14.5%増)、土木工事が1兆310億円(同27.0%減)、機械装置等工事が4237億円(同12.1%増)となっている。
民間等からの受注工事の建築工事・建築設備工事額(1件5億円以上の工事)9033億円を工事種類別にみると、受注工事額が多いのは、宿泊施設2350億円、住宅1978億円、倉庫・流通施設1691億円。発注者別・工事種類別にみると、受注工事額が多いのは、運輸業・郵便業の「宿泊施設」2210億円、不動産業の「住宅」1377億円、不動産業の「倉庫・流通施設」794億円となっている。
◇申請書類の日付が虚偽 長期優良住宅の”認定取り消し”に
いつも通りに長期優良住宅の申請をしていたはずなのに、実は書類の日付に虚偽があったことが判明。社内で調査したところ、過去3年にさかのぼって同様の虚偽申請が16件もあることがわかり、それらの住宅の認定は取り消しに…。処分の対象となった住宅会社クレスト・ホーム(北九州市)にとっても思いもかけない事件だった。
2022年2月8日に北九州市が発表した経緯によれば、不正が発覚したのは、2021年11月のこと。建て主が市税事務所に税制優遇措置についての申請をした際、長期優良住宅の認定記録がまだ届いていないことがわかった。
本来、長期優良住宅の認定申請は着工前にしなければならない。住宅が完成して登記した後でなければできないはずの税制優遇の手続きを、認定がおりる前に建て主がするのはおかしい。市の建築指導課は、対象の住宅がすでに完成しているのを確認したのちに、クレスト・ホームに事情を聞いた。
2021年10月22日に提出した認定申請書には着工予定日について「2021年10月25日」と記載があったが、実際にはその3か月以上前に着工していたという。同社では、申請手続きの書類作成は二級建築士の資格を持つ社員がひとりで担当しており、日付の不正についてはその社員がおこなったものだった。その理由については不明だという。
建築指導課では、同社に調査を求めるとともに、建築計画概要書の記載履歴なども照合。過去3年にわたって同社の同様の虚偽申請は16件あることがわかった。いずれも申請前に事前着工しており、法令の要件を満たしていないということで、長期優良住宅の認定は取り消しとなった。なお、不正があったのは申請書類の日付だけであり、建物の安全性については問題はないという。
長期優良住宅の認定では、基本的に申請内容をチェックするものの、記載された着工予定日と、実際の着工日を確認することは通常はしない。そのため、建築指導課では日付の虚偽については気づくことができなかった。
またクレスト・ホームでも、社内の打ち合わせ時に申請内容について共有する機会は設けているが、申請する書面の作成は担当社員に一任しており、書面そのものを他部署でチェックする仕組みはなかったという。
同社では問題となった社員を減俸処分に付すとともに、新たに書類作成を担当する社員を雇用。今後は受注案件ごとに営業や設計などの各担当者に加え、上長と社長まで全員が申請書類もチェックする体制にあらためる。
今回、認定取り消しとなった住宅については、2022年10月1日に施行される既存住宅を対象として長期優良住宅の認定を行う「建築行為なし認定」の制度を利用して再申請を行う予定だ。
同社にはこれまで現場管理や施工精度には力を入れてきた自負があるという。その反面、申請関連の書類作成や手続きについては担当者を信頼して任せきりにしていたために、今回のような不正を見逃すことになってしまった。
補助金など各種の申請業務が煩雑化する一方、中小規模の住宅事業者では限られた人員で対応しなくてはならないのが現状だ。現場での施工ミスを防ぐのと同様に、書類作成でも不備のないよう、ダブルチェックする体制を整える必要がありそうだ。