シンエイ通信

シンエイ通信【平成29年7月31日作成 92号】

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平成29年7月31日作成 92号



■EPA 木材関税引き下げ

本とEU(=ヨーロッパ連合)のEPA(=経済連携協定)で大枠合意し、構造用集成材を含む林産物10品目における輸入時の関税について即時撤廃は回避されましたが、EPA発効から7年間の段階的引き下げを経て、8年目に撤廃されることとなりました。

林産物10品目とは、SPF製材、構造用集成材、パーティクルボード・OSB、加工木材、くい及びはり、CLTを含むその他建築用木工品、たる・おけ、造作用集成材、針葉樹合板、広葉樹合板です。

日本からの輸出時における関税は、製材、合板など、木製品の全てで即時撤廃されます。

今回の大枠合意を受け、山本有二農林水産大臣は、「農林水産業の国際競争力の強化と輸出産業への成長を目指し、万全の対策を講じる」とし、木材製品については「日本産の競争力を高めるため、加工施設の効率化競争力のある製品への転換原木供給の低コスト化などを推進する」としています。

既に価格面で競争力のある欧州産の集成材の関税がなくなることで、国内の林業にも競争激化の波が及ぶと予想されます。

日本が欧州産集成材にかける3・9%の関税はEPAの発効後から段階的に引き下げられ、八年目にゼロになります。集成材のほか、木を削った細長い削片(ストランド)を並べて接着した板(OSB)などにかかる2・2~6・0%の関税も同様です。

欧州から集成材の輸入量が増えれば、スギやヒノキなどの丸太から切り出した木材(無垢(むく)材)を生産する林業にも影響は及びます。現在も欧州の集成材は国産の無垢材よりも安価で、関税がゼロになれば価格面での競争は厳しくなるとみられます。

輸入材との価格競争だけでなく、人口減に伴って住宅着工数が減少する中、良質な木材をお客様お届けし、付加加価値をお届けしていきたいと思います。


■国土交通白書が公開されました

土交通省は平成28年度国土交通白書を公表しました。
この中で、人口減少に伴う労働者の高齢化や中長期的な担い手不足、自然災害の激甚化などの課題を克服し、持続的な経済発展を目指すためには、イノベーションにより生産性の向上を図ることが必要としています。

そのため、「イノベーションが切り拓く新時代と国土交通行政」をテーマに、先進的な取組事例を紹介すると共に、今後のイノベーションの創出と社会実装に向けた課題や、国土交通行政の方向性を示しています。

我が国を取り巻く環境と社会経済状況は、

少子高齢化社会、人口減少
済成長率の鈍化
科学技術の大きな進展

となっています。

特に少子高齢化では、建設分野において、建設現場で働いている技能労働者約326万人(2016年時点)のうち、55歳以上が約1/3を占める等、労働者の高齢化が進行しています。
さらに、今後、高齢者の大量離職の可能性に直面し、中長期的には担い手不足が生じることが懸念されます。

このような人口減少に伴う供給制約や担い手不足を克服するため、一層の担い手育成を進めるとともに、イノベーション(技術革新)による生産性の向上が必須の状況になっています。

また、我が国が直面する課題は

切迫する巨大地震、激甚化する気象災害等
加速するインフラ老朽化
地方の疲弊
財政状況の悪化

となっています。

これらの現状を踏まえ、我が国は人口減少や少子高齢化、それに伴う生産年齢人口の減少、あるいは厳しい財政状況といった制約条件の下で、切迫・激甚化する災害に備え、加速するインフラ老朽化に対応し、地域を活性化し、厳しい国際競争に勝ち抜いていくための競争条件を整えて行かなければならないとしています。

そうした状況の中、IoT、ビッグデータ、AI、ロボット・センサーなどに代表される第4次産業革命が世界的に進みつつあり、生産や消費といった経済活動だけでなく、働き方やライフスタイルも含めて経済社会の在り方が大きく変化しようとしている。我が国は、こうした世界的な潮流をとらえ、イノベーション(技術革新)を創出し、我が国を含めた世界各国で創出されたを社会実装していくことにより、生産性を飛躍的に高め、様々な課題を克服し持続的な経済成長を実現すイノベーション(技術革新)する必要があるとしています。

詳細は以下をご参照ください。
http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h28/hakusho/h29/pdfindex.html


■平成28年度森林・林業白書が発表されました

平成28年度森林・林業白書が発表されました。森林及び林業の動向として、

1 新たな森林・林業基本計画の策定
2 「森林法等の一部を改正する法律」の成立
3 「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(クリーンウッド法)の成立
4 CLTの普及に向けた基準の整備と新たなロードマップの公表
5 平成28年熊本地震や台風災害の発生と復旧への取組

と言ったトピックがあります。各トピックの詳細は、

■10年後見据えた「建設産業政策2017+10」
~若い人たちに明日の建設産業を語ろう~

国土交通省の建設産業政策会議は10年後も建設業が現場力を維持するための提言「建設産業政策2017+10~若い人たちに明日の建設産業を語ろう~」をまとめ、発表しました。

提言では、10年後の建設産業を背負う担い手を確保するため、働き方改革や生産性向上などを柱に建設業法をはじめとする『制度インフラ』を再構築する必要性を指摘しています。

具体的な施策として、不当に短い工期設定の禁止、専門工事業の評価制度、地域建設業と市町村との連携強化、技術者資格の確認制度の対象拡充などを提案しました。

許可・法制度、企業評価、地域建設業のワーキンググループや「適正な施工確保のための技術者制度検討会」での議論を踏まえ

▽働き方改革
▽生産性向上
▽良質な建設サービスの提供
▽地域力の強化

の四つの視点で今後の建設産業政策の方向性をまとめています。

働き方改革

処遇改善や長時間労働の是正などに取り組む企業ほど価格競争で不利になるとして、改革に取り組む企業が評価される競争環境を整備する必要があると強調。受発注者双方に適正な工期を設定する責務を建設業法に位置付け、不当に短い工期による契約を禁止。不適切な契約を強要する注文者(元請け、上位下請け)に対する勧告制度も創設する

一方、建設産業に繁忙期と閑散期の波があることが、非正規雇用や日給制の技能者が多い要因になっている。社員化と月給制で処遇を改善するため、発注者による施工時期の平準化を推進。受注者側でも「労働の平準化」に取り組むべきだとして、企業間で人材を効率的に活用する仕組みを検討するとしました。


生産性向上

建設生産システム全体で生産性を高め、建設産業の国際競争力を高める必要性も指摘。経営事項審査に企業の生産性の指標を追加する他、建設業許可・経審の申請書類の簡素化と電子化を図る。主任技術者の配置義務を緩和し、同業種の上位下請けに主任技術者を配置すれば、下位下請けに主任技術者を配置しないことを例外的に認める。

良質な建設サービスの提供

建設業従事者や専門工事業の姿を見える化し、良質な建設サービスを提供することも求めた。国交省が各業種の専門工事業団体を認定し、団体を通じて専門工事業者を評価する制度を創設。元請けの主任技術者の実務経験を確認する「確認制度」も構築する。


地域力の強化

「地域力の強化」では、地域建設企業の経営力を強化する必要性も強調。市町村が主体的に建設産業政策を担う枠組みを整える他、防災協定を締結したり、建設機械を保有したりする建設企業に対する経審の加点を拡充する。

建設産業政策会議の石原邦夫座長は7月4日、石井啓一国交相にこの提言を提出するとのことで、国交省は7月中にも中央建設業審議会を開き、経審や標準契約約款を改正するなど、提言に盛り込まれた施策を順次実行に移すとのことです。


■九州北部豪雨の被害と地球温暖化

九州北部豪雨の被害にあわれた方々へ謹んでお見舞い申し上げます。

今回の九州北部豪雨の被害額は1200億円近くに上ることが判明しました。

「九州北部豪雨」で被害を拡大した要因の1つが「流木」です。
「九州北部豪雨」の被災地に押し寄せた流木。福岡県だけで少なくとも20万トン、50メートルプール144杯分に相当すると推定されています。

山の至るところで土砂崩れが起き、大量の流木が発生。住宅などへの被害を拡大したうえ、救助や復旧活動の妨げにもなりました。

深刻な被害を受けた福岡県朝倉市の杷木林田地区では、地区を流れる赤谷川が広い範囲で氾濫し、多くの家屋が流木に破壊されました。橋に流木がたまって流れをふさいだことで、川が氾濫したり川の流れが大きく変わったりする現象が多発したと考えられています。

流れが変わったことでもともと川から離れていた家にも水が流れ込んだり、流木が押し寄せたりして被害が出ました。流木が水をせきとめたことで予想もしなかったところに水が流れてきたとのことです。

被災地の各地で猛威をふるった流木。土木学会の調査団で九州大学大学院の矢野真一郎教授は、大分県日田市の花月川にあり、今回の豪雨で流されたJRの鉄橋に注目しています。

矢野教授は、現地調査の結果などから橋脚に流木がたまったことで予想外の大きな力がかかったことが、橋が流された要因の1つではないかと考えています。矢野教授は、「流木が橋に引っかかったのは間違いない。もし橋が流されずに、流木が大量に集積してダムのような状態になってしまえば、周辺があふれた可能性は否定できない」と話しています。

近年は、豪雨の発生数が増加傾向にあります。特に、災害につながる可能性がある「日降水量100mm~200mm以上」の豪雨が増加しているというデータもあり、九州北部豪雨では一時間雨量が120mmを超えていたほか、24時間雨量では500mmを超えており、災害が起きるレベルを完全に超えていました。

豪雨の増加は地球温暖化が影響していると考えられており、今後も温暖化が改善されなければこの豪雨発生率も増加し続けるのではないかと考えられています。

豪雨が増加傾向にあるのは日本だけではなく、東アジアエリアでも同様です。温暖化によって豪雨が発生している主な理由は水蒸気量が世界的に増加していることだと考えられていますが、これは確実な結果ではありませんので、現在も原因解明のための研究が進められています。

さらに気象庁による地球温暖化予測実験によると、今後も24時間雨量100mm以上の豪雨の発生率や「6月~9月に現在よりも降水量が増加する可能性」は増すと言われています。

また、台風についても要注意です。今年は7月末の時点で発生している台風の数が10となっており、8
~9月にかけても多くの台風が発生するとみられています。台風の原因となるのは強い熱帯低気圧です。1970年以降は、この熱帯低気圧が増加傾向にあるため、台風の発生率も上昇していると考えられています。

熱帯低気圧が増えている原因は、地球温暖化によって氷が溶けて、海面が上昇したことが関連しているというデータもあります。

また、地球の気温が上昇したことで海面からの水分蒸発が活発になり、これによってより多くの水蒸気が大気中にとどまることになります。この水蒸気が多い状態で熱帯低気圧が発生してしまうと、さらに強い熱帯低気圧に成長してしまうということです。

地球の温暖化が改善されなければ、今後も強い熱帯低気圧の数は増加し続けるでしょう。

私たち建築に係る者もZEHや低炭素といった対策をお客様と一緒になって推進することで地球温暖化を少しでも防いでいきましょう。