シンエイ通信【令和8年6月1日作成 198号】
シンエイ通信【令和8年6月1日作成 198号】

◇九州木材商況
ホルムズ海峡の事実上の封鎖の影響は九州内でも大きく、住宅会社からは現場で断熱材、バスなどの住設機器、外壁工事用のコーキング材など、さまざまなものが不足しているとの声が聞こえる。
供給先行きが見えないことから「6月以降は家を建てたいといわれてもなかなか見積りできない」と一部住宅会社は話す。住宅が建たないためプレカット工場も仕事が少ない状況だ。
4月は住宅資材の値上げや不足を見越した駆け込みがあり、2~3月に比べて稼働率は持ち直したが、5月に入り再び落ち込んだ。
接着剤不足などが影響し、合板メーカーは生産調整に入っている。
構造用合板の生産量が減少したため、桧合板用丸太は荷動きが鈍く価格も下落している。
低質材の下支えが弱まったことで、桧製材用丸太価格も4㍍土台取を中心に弱含み、2万円を大きく下回っている。
一方、原木輸出は輸出コストが増加しているが、円安の影響で依然として好調。
そのため、杉大径材には引き合いがあり、桧大径材も2万円を維持している。
【国産構造材】
価格引き上げに一服感
製材コストの増加から、製材所は2月以降、製品価格の引き上げを唱えている。ただ、住宅着工戸数の減少により、九州内の杉KD柱の荷動きは鈍い。また、中東情勢の影響で、住宅資材の不足によって着工の遅れも出てきており、引き合いが弱くなっている。そのため、5月に入ってからは、製品価格の引き上げには一服感が見られる。一方、桧KD土台も、九州内は杉柱同様に動きが鈍い。一部製材所は関西や北陸、関東などに出荷しており、そちらは米材からの転換などの影響もあり引き合いがある。
【国産羽柄材】
杉間柱の引き合い強く
Wウッドなどの外材からの転換により、杉間柱の引き合いは強い。ただ、市売問屋では製材所からの仕入れ値が上がる一方で、販売価格への転嫁は進んでいない。
中東情勢の影響による接着剤不足で、合板メーカーは生産調整をしているが、構造用合板と競合する杉野地板には大きな動きは見られない。構造計算が必要な場合、構造用合板から杉野地板への転嫁は難しく、杉野地板の引き合いは依然として弱い。桧羽柄材は、外材からの転換で関東向けなどは引き合いがあるが、九州内では荷動きは鈍い。
【外材】
接着剤は当面確保
米松平角や欧州材構造用集成材の値上げは通っているが、中東情勢の混乱は続いており、原油や船運賃、接着剤高などから今後もう一段の価格上昇が見込まれている。
懸念された接着剤不足は、大手集成材メーカー向けなどで大きな混乱は起こっていない。杉集成材を含めて夏場までの生産・供給は問題ないが、それまでに接着剤供給が安定するかはまだ不透明。
現状で米松KD値上げにより、杉KD平角へ引き合いは増えている。
【集成材】
接着剤値上がり
集成管柱や集成平角の荷動きは、4月に盛り上がった後、5月の連休明けから一服している様子。国内集成材メーカーには4月の受注残もある様で、極端な仮需の注文には慎重な対応も見られる。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖を背景とした接着剤の供給不足から、国内メーカーでは生産を調整する動きも出始めた。今のところ、減産の動きは限定的で、市中に品薄感も出ていない。
ただ、集成材用の接着剤は、6月にかけて現行から2~3割の値上げが見込まれている。
国内集成材メーカーは4月にかけて3000円値上げ固まったばかりだが、接着剤の値上げと、今夏に入荷するラミナのコスト上昇分の転嫁を図るべく、6月以降の値上げ姿勢を強めている。今春の値上げに比べメーカーの足並みはまだ一様ではないが、現行から約5000円高が一つの目標となる様だ。
一方、欧州では、世界的な市況から接着剤や梱包資材などが値上がりしているが、日本の様な供給不足や集成材の生産・出荷に影響が及ぶ懸念は聞かれない。原油をノルウェーや米国から調達する割合が高く中東依存どが低いことが背景にある様だ。
接着剤の観点からみた欧州産集成材の生産安定性や、国内産集成材との価格差がなくなってきたことなどから、輸入完製品の先物契約への関心が上向き、第3・四半期契約分への引き合いが前倒しで出てきたとの声もある。
【合板・建材】
冷静な荷動き
針葉樹構造用合板は、接着剤不足による合板メーカーの生産調整が続いており、これまでの実績に応じた供給になっている。ただ、九州内の住宅需要は低調で、流通業者から仮需のような目立った動きはない。
一時は売り玉確保のため、他地域や輸入合板などで、玉を探す動きもあったが供給はどこも同様の状況。原料面では桧原木の値下がりでフェースバック用材は集荷しやすくなっている。
輸入型枠合板は供給減、産地高などから安値では売れない状況。価格は強基調だが、公共事業も端境期に入り、買い方は冷静な対応。ただ、型枠は南洋材に根強い需要があり、引き合いは増えている。
◇みらいエコ事業、分譲・賃貸の申請開始 注文第2期もスタート

国土交通省と環境省が実施する「みらいエコ住宅2026事業」において、5月13日から新築分譲住宅の購入、および賃貸住宅の申請受付が開始された。あわせて注文住宅の新築についても、第2期の交付申請受付を開始した。いずれも予約申請を含む。
新築分譲住宅の要件は注文住宅と同様、GX志向型住宅および長期優良住宅、ZEH水準住宅。長期優良住宅およびZEH水準住宅は子育て世帯、若者夫婦世帯に限る。
賃貸住宅の新築はオーナー(個人または法人)が対象。住宅の要件はGX志向型住宅、または長期優良住宅かZEH水準を満たすことで、長期優良・ZEH水準では安全性、防犯性の向上など子育て世帯への配慮が必要となる。
同事業における新築への補助金は、タイプに応じた段階的に申請を受け付け、期別に設定された上限額に達し次第、受付をいったん停止するとしていた。第1期(3月31日~5月13日)は注文住宅の新築のみの受付で、GX志向型が上限200億円(予算の約26%)、長期優良・ZEH水準住宅が400億円(同約27%)だった。
5月13日時点で、申請額が予算総額に占める割合はGX志向型が17%。長期優良・ZEH水準が3%となっている。
◇シロアリ対策は軽視できない

この時期、シロアリの活動が目立つようになってきた。特に日本の木造住宅で問題となるシロアリ被害は、主にヤマトシロアリとイエシロアリによるものだ。
ヤマトシロアリは北海道北部を除く日本全土に分布し、湿った木材を好み、床下、土台、浴室、台所、玄関廻りなど建物下部を中心に危害を加える。一方、イエシロアリは主に西日本や太平洋側の温暖な沿岸部、南西諸島などに多く、大きな巣をつくり、水を運んで乾いた木材まで湿らせながら食害するため、被害は建物全体に及びやすい。いずれも木材内部を先に食べるため、外観だけでは被害に気付きにくいことが厄介だ。
木材業界でもこれまでにシロアリ研究や試験が行われており、防腐防虫木材を生産・販売している会社が、名古屋大学との共同研究で木材中の有効成分の分布を可視化し、防腐防蟻性能の裏付けを行った例がある。
また、実地試験では日本合板工業組合連合会が原料転換技術開発事業として、過去にイエシロアリが多い小笠原・父島で、防蟻処理した合板やLVLを暴露し、無処理剤との食害差を見る研究を行うなど、室内試験だけではわからない、湿度・気温・蟻道形成・実際の食害圧を確認している。
もちろん、木材の薬剤処理は大変重要なことだが、シロアリ被害を低減するには住宅を「侵入されにくく、点検しやすい構造」にすることも必要だ。
住宅デバイス共創機構設立準備では、シロアリ被害低減を目的としたベタ基礎・二度打ち工法を推奨している。ベタ基礎の住宅でも、立ち上がり部と土間コンクリートの打ち継ぎ部、配管周り、玄関ポーチ周辺などはシロアリの侵入経路になる可能性が高い。そこで、シロアリの侵入を難しくするとともに、シロアリが移動に使う蟻道を発見・除去しやすい基礎を設けることを提案している。
また、シロアリ防除会社と気象データ会社が提供する「シロアリ発生マップ」の利用も、建物内や羽アリが発生していない赤を確認するきっかけになりそうだ。
木造住宅の価値を守るには、感想を保つ設計や点検しやすい床下、防蟻処理剤の活用、定期点検を一体で考える必要がある。シロアリ対策は地道だが、住宅寿命と資産価値を左右する基礎技術であるため、軽視できない。
◇ノダ 建具など15%値上げ

ノダは、7月1日出荷分から内装建材を値上げする。
対象は、造作材、建具、収納、造作材、階段、框関連で値上げ幅は現在の仕切り価格から一律15%UP。
中東情勢の緊迫化に伴う原材料の高騰とサプライチェーンの不安定化を受けたもの。
これに先立ち同社は6月1日出荷分からフロアと板物関連の15%値上げを発表していたが、商品点数が多い内装建材は状況の精査が追い付かついていないとして、値上げの詳細は改めて公表するとしていた。
ホルムズ海峡問題で原材料のサプライチェーンが安定しないなか、接着剤や添加剤をはじめとする主原料だけでなく、梱包資材など副資材の仕入れ価格だけが先行して値上がりする異例の事態に陥っている。
今回の品目を分けての値上げ発表はこうした事情を反映したものとなった。
同社は「中東情勢が不透明ななか、先の見通しが立たない。一方で製造コストの上昇は過去例を見ない状況だ。今後の状況の不透明さを考慮し、状況に応じ顧客に誠実に対応できるように今回は設計価格ではなく、仕切り価格の改定を決めた」と話している。
先の見通しがつかないなか、木質建材は商品点数が多い商品だけに、設計価格の改定によるウェブカタログと紙カタログの2重価格化による顧客の混乱を避けた意向もあるとみられる。
◇断熱等級6、夏の電気代削減効果は限定的
住宅の断熱性能の違いが夏季の電気代に与える影響を検証した。
東京大学大学院工学系研究科の前真之准教授の監修のもとで実施した実証実験の結果、断熱性能を等級5から等級6へ高めても、検証した3地点のうち2地点では電気代削減効果は小幅にとどまることが分かった。

実験は2025年7~9月の3カ月間、温熱地域区分が異なる3地点(3地域:長野県佐久市、4地域:栃木県那須塩原市、6地域:埼玉県八潮市)で実施した。各地点では床面積や設備条件をそろえた2階建て延べ床約30坪の戸建て住宅を用い、現場吹付発泡断熱材「アクアフォーム」を使用した断熱等級5と等級6の消費電力量と電気代を比較。空調は全館空調「Z空調」を用い、各階居室の室温を26℃に維持した状態で終日稼働させ、外気温や室温、電力使用量を測定した。
その結果、断熱性能向上による電気代削減効果が明確に確認できたのは、埼玉県の6地域のみで、等級6の建物のほうが月平均で2,780円安かった。他の2地域では差は小さく、月平均で200円から500円程度、等級6のほうが安くなる結果にとどまった。
また、6地域では気密性の異なる断熱材(グラスウール)を使用した等級6の住宅も加えて比較。
電気代は月平均で2,391円、アクアフォーム仕様のほうが安かった。

2025年6月に冬季の検証結果も公表しており、地域差はあるものの、断熱性能の違いが暖房時の電力消費に影響を及ぼす傾向が確認されている。これに対し、今回の結果は夏季については冬季よりも差が生じにくいことを示した形だ。
今回の検証結果を今後の商品やサービス開発に活用し、高気密・高断熱で付加価値の高い家づくりを進め、快適な住環境の提供につなげるとしている。