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シンエイ通信【令和6年12月1日作成 180号】

シンエイ通信【令和6年12月1日作成 180号】

◇九州木材商況 

九州・沖縄9県の9月新設着工戸数は、合計6135戸で前年同期比8・15%減と住宅需要の減少が続く。

1世帯当たりの人数の減少や住宅価格と地価の上昇による狭小化も進む。プレカット工場は夏よりも受注が上向いてアパートや牛舎など非住宅の建設も増えているが、今年は例年みられる秋需がない。複数の業界関係者からは「昨年も秋需がないといわれていたが、若干あった。今年は需要期とは言えない」との声が聞かれた。

国産材メーカーは、競合他社の多い関東や中京地域向けが九州向けより苦戦している。

来年4月の4号特例縮小に向け、製品の品質担保や規格の変化に対応していく必要がある。そのため、JAS材への対応やKD率の向上、高品質化に取り組むメーカーが増えている。

丸太の出荷量は例年より少なく、バイオマス発電向けや輸出向けに直接販売されてるため、市場に出回る量は減っている。製品は杉よりも桧に安定した荷動きがあるため、桧丸太の価格が上昇。ただ、製品は桧も値下がりしている。

メーカーは採算面に不安を抱えており、複数のメーカー関係者から「約1年耐えている」との声がきかれた。

【国産構造材】

柱中心に苦戦が続く

構造材の需要減少が続き、特に柱の荷動きが悪い。九州域内より同域外への販売が苦戦し、製品価格も徐々に下がっている。

一方、丸太価格はほぼ横ばいでメーカーは仕入れ価格を下げれず、採算が悪化しているとの見方もある。

メーカーが休日を増やしたことで全体の製品量は減少している。また木材価格を下げるため、B品の問い合わせが増えている。

【国産羽柄材】

間柱の荷動きが好調

新築以外にリフォームなどでも使われる羽柄材は、構造材より順調に動いている。なかでも間柱の荷動きは好調だ。ただ、羽柄材は丸太の側でとるため、深部を取る構造材の需要回復がメーカーには必要不可欠だ。羽柄材も構造材同様に、ローコスト住宅向けなどでB品の引き合いが強い。

南九州ではグリン材の荷動きが好調な製品市場がある一方、地場工務店の受注減少でグリン材の需要が低下しているメーカーもある。

【外材】

横架材は様子見に

プレカット工場の稼働率は回復傾向にあるが、外材横架材の荷動きは停滞したまま。米松国内挽き大手メーカーが米松平角を値下げしたことで、欧州材構造用集成材の値上げ機運が弱まった。プレカット、流通業者は製品在庫が減らないため新規受注を抑えており、様子見姿勢を強めている。

羽柄材・小割材は、米松・アカマツともに居所高が続く。杉製品の消費地向け出荷が回復し、Wウッドにも引き合いがある。

【集成材】

構造用集成材の荷動きは、10月に上向き、11月も堅調に推移している。国内集成材メーカーの生産が9月までと比べて増えていることに加え、低迷していた輸入品の港頭在庫からの出荷も、10、11月は増えている。

欧州産地との第4四半期契約分の交渉は、日本側の買い気が非常に薄いためこう着状態が長引き、10月積みは一部を除きほぼ見送りとなった。11月も成約は限定的で、11~12月積みの2か月分のうち半分程度しか決まっていないとの声が多く、第4四半期契約分の成約量は全体として通常の半分に満たない可能性が高まっている。

そのため、この成約分が日本に到着する来年1~3月の入荷量は、今年の1~3月と同様に低水準となることが想定される。

Wウッド及びRウッド構造用集成材の産地価格は、全体的に前回の第3四半期契約分から10ユーロ程度値下がりした。

【合板・建材】

落ち着いた荷動き

住宅需要に回復感はなく、国産針葉樹構造用合板への引き合いが盛り上がりに欠けるなか、メーカー、流通業者とも適正量の供給に徹し、荷動きは、荷動きは落ち着いている。全国的に値下がり傾向にあり、今後の影響が注視される。特にビルダーなど大口需要者への対応は課題になっている。

厚物合板は、来年向けの非住宅木造建築への出荷が堅調。省エネ対策の強化などもあり、1物件での使用比率は高まっている。

輸入型枠用合板は港頭在庫が適正水準にあるが、円安傾向を受け再び先高観が出ている。ただ、それに伴う引き合いは多くなく、針葉樹製品への移行がみられる。

◇旧耐震基準、2割が倒壊 能登半島地震の建物被害調査報告

国土交通省は11月1日、能登半島地震による建物の被害状況に関する中間報告書を公表した。1981年以前の旧耐震基準で造られた木造建築物は19.4%が倒壊。一方、81年の新基準で2000年までに造られた建物の倒壊は5,4%にとどまった。

国は2000年にも耐震基準を見直しており、それ以降の倒壊は0.7%とさらに縮小。報告書は「現行規定は倒壊防止に有効だと認められる。(国として)旧耐震基準の建築物について、耐震化の一層の促進を図る」としている。

調査は、石川県輪島、珠洲両市と穴水町で被害が大きい地区内にあった全4909棟の木造建築物を対象に行った。

調査によると、81年以前の建物は3408棟で、このうち39.3%が倒壊か大破の被害を受け、被害を受けなかった12.5%を大きく上回った。被害がなかった割合は81~00年の建物では26.5%、00年の見直し後は65.5%に高まった。

報告書は、耐震基準に地域差を設ける「地震地域係数」にも言及。地域係数は、過去の地震の発生状況などに応じて0.7~1.0で設定され、能登の被災地は0.9だった。地域係数の低さが原因で倒壊した建物はなかったが、係数の在り方について検討の必要性も指摘した。

能登半島地震と津波で壊れた建物などのがれきが残る地区=3月1日、石川県珠洲市

旧耐震の耐震・安全確保に加え新耐震の耐震診断も必要。

同委員会は、年代別の被害状況が熊本地震(2016年)発生後、益城町で実施した調査結果と同様に傾向を示しているとし、特に旧耐震基準は「新耐震基準導入以降の木造建築物と比較して顕著に高い倒壊率だった」とした。

耐震化率も45~51%と、全国平均(2018年で87%)に比べて低い地域だったことで被害が拡大したと分析。今後、耐震化を一層促進していくとともに、国土交通省が今年8月に公開した「木造住宅の安全確保方策マニュアル」の周知で、暫定的・緊急的な方策を含めた木造住宅の安全確保を進める必要があるとした。

一方で新耐震基準、とりわけ接合部の使用などが明確化された2000年以降の基準は倒壊・崩壊防止に有効だったとし、2000年以降の仕様に適合しないものの存在を踏まえた「新耐震基準導入以降の木造住宅を対象とした効率的な耐震診断方法」の周知・普及を、今後の対策の方向性として挙げた。

同委員会ではまた、大地震を経た建築物の使用継続性や、復旧・復興の容易性についても検討。木造住宅については、損傷による構造耐力低下の可能性も指摘しており、日本建築防災協会の被災度区分判定の活用促進策として、今年7月公表のパンフレット「木造住宅の地震後の安全チェック」を周知するとともに、専門家への普及も図っていくとした。

◇住宅建築工事向け「墜落防止マニュアル」最新対策

厚生労働省はこのほど、木造家屋など低層住宅建築工事の労働災害防止を目的とした、「墜落防止標準マニュアル」を公開した。2022年に開かれた実務者会合の中で墜落防止マニュアルの見直しが求められ、「最新の木造家屋建築工事における墜落・転落災害防止対策を盛り込む必要がある」との指摘があったことを踏まえて作成したもの。屋根・屋根上の端、開口部、はしご・脚立からの墜落・転落災害防止策について、写真やイラストを用いて分かりやすく解説している。

建設業における死亡災害のうち、「墜落・転落災害」は4割前後で最多となっている。低層住宅建築工事ではそれよりもさらに多く、7割前後に達している。起因物別では、「屋根、はり、もや、けた、合掌」が46%、「足場」が23%、「はしごなど」が13%で、この3項目だけで全体の8割を占めている。

木建工事の墜落・転落死亡災害起因物発生状況

足場・屋根上・開口部の作業における墜落防止では、基準に沿った足場の設置例や開口部作業における安全対策(スライドレール式安全ブロック工法)、屋根上作業時に足場の設置が困難な場合の安全対策(親綱方式)などについて説明。

足場の設置例では、建物の形状が複雑になりがちな低層住宅工事での安全対策として、軒先からの転落防止の追加措置、作業床の重なり部分や作業床端部・作業床の幅が変わる箇所の措置などについて記載している。また、屋根上など足場の設置が困難な場所で墜落制止用器具を使用する場合には、親綱の設置が有効となるが、マニュアルでは屋根形状に応じた親綱(主綱)の設置例などについても具体的に示している。

親綱の設置例

はしご・脚立などからの墜落防止では、はしご・脚立に関する法規制、設置のポイント、正しい使い方などを解説。一人作業の際に用いられることの多い、アルミニウム合金製可搬式作業台の正しい使い方についても記載されている。

◇ケイミュー窯業系外装材に個性的なレッドシダー柄

ケイミュー(大阪市)は、光触媒機能を持たせた窯業系サイディング「ネオロック・光セラ18セラトピア」シリーズから、新しい木目柄「オッドシダー」を発売した。

レッドシダーをモチーフに、天然木のような色調のばらつき、温かみ、個性的な雰囲気を4割の木目で表現。
モルタルや金属サイディング、セメント質感の建築素材「SOLIDO」など、さまざまな異素材と調和する。横張り・縦張りどちらにも対応し、奥まった1階部分への縦張りアクセント使いもおすすめとする。

◇確認済証交付など建築行政手続をデジタル完結 関係規制改正へ

国土交通省は、「行政手続のデジタル完結に向けた工程表」で示された、建築基準法令に係る各種手続のオンライン化を進めるための環境整備を進めている。主に押印を不要とする様式への改正と、オンライン申請・交付を可能とする規定の整備を行う。

12月9日まで「建築基準法施行規則の一部を改正する省令案」のパブリックコメントを実施した後、12月中の公布、2025年1月1日施行を予定。建築基準法施行規則による確認済証の交付プロセスなどについては今年度中のオンライン化を予定している。

押印を不要とする様式は、以下の処分通知など。
①建築基準法施行規則(確認済証、完了検査引受証、中間検査合格証、適合判定通知書、他)
②品確法施行規則(建設住宅性能評価の検査報告書、住宅型式性能認定書、他)
③長期優良住宅の普及の促進に関する法律施行規則(認定通知書、承認通知書、許可通知書、他)
④都市の低炭素化の促進に関する法律施行規則(低炭素建築物新築等計画認定通知書、同計画変更認定通知書)
⑤建築物省エネ法施行規則(適合判定通知書、建築物エネルギー消費性能向上計画認定書、同計画変更認定通知書、他)。

オンライン申請(提出)を可能とする様式は

①品確法施行規則(住宅型式性能認定申請書、型式住宅部分等製造者認証申請書、他)

②建築物省エネ法施行規則(建築物エネルギー消費性能確保計画書、同変更計画書、他)。

このうち品確法施行規則に係る様式については、オンライン交付も可能となる。