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シンエイ通信【令和6年10月1日作成 178号】

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シンエイ通信【令和6年10月1日作成 178号】

◇九州木材商況 

九州・沖縄8県の6月の新設住宅着工数は、合計7508戸で前年同月比18.3%減と大幅に減小した。

住宅需要の低迷とともに木材需要の厳しさが続く。一方、受注が順調な住宅会社メーカー社長は「昨年は受注が落ち込んだが、その反動もあり、今年は順調で顧客も増えている」と話す。

住宅向けの仕事量が減少しているため、プレカット工場の受注競争が激化している。

製品市況も冷え込み、分譲、注文住宅を問わずB品の採用が増えている。一方で、A品の需要は低迷している。引き合いが高まる要素はほぼなく、先行きが不安視される。

丸太価格の安定に加え、製品の売れ行き不振から、杉・桧製品の仕入れ価格が下がっている市場もある。ただ台風10号など天候不良も影響し、出材量は減少している。

慢性的な人手不足や伐採地の奥地化も重なり、昨年同時期も出材が減少していたため、森林組合関係者からは今後の集荷量の減少を懸念する声も聞かれた。

特に桧の出荷量が減少し、量産メーカーは材の集荷に苦戦している。このまま出材料が回復せず、製品が不足すると、桧の製品価格が若干上昇する恐れもある。

【国産構造材】

今後の値下がり懸念

新築住宅向けの製品需要の低迷が続き、製品価格は徐々に下がっている。荷動きは今年いっぱい、良くなるのは難しいとの見方が多く、先行きが不安視されている。

9月からは九州各地の製品市場で記念市が開かれ、市場に出回る製品が増えるため、今後も若干値下がりするとみられている。

市場では当用買いが中心で引き合いは弱いが、B品は安定して需要がある。

【国産羽柄材】

杉間柱は荷動き安定

全体的に引き合いが弱い中でも、杉間柱は比較的安定した荷動きがあるため、価格は横ばいを維持している。

ただ杉小割は他の杉製品と同様に若干値下がりしてきており、今後もう一段の下押しが懸念される。ローコスト住宅向けを中心にB品の引き合いは強く、記念市にはB品を手当てしに訪れる買い方も多い。

市売りの販売で苦戦を強いられている製品市場が多いが、特売での売れ行きは安定している。

【外材】

必要買い中心

米松、欧州材製品は値上げ唱えだったが、流通業者・プレカット工場は戸建て住宅需要の低迷から必要買いに徹している。値上げ前の発注を含めて製品在庫は確保されており、冷静に対応している。

米松羽柄材は流通量が増えておらず、注文への対応が中心になっている。価格は居所高で横ばい。ウッド羽柄材、アカマツ小割材の荷動きは低調だ。杉、桧KD材への代替がみられる。

【集成材】

集成材は盆明け後も鈍い引き合いが続いているが、8月に比べ回復傾向にあり、10月は少ないながらも秋需の動きが見込まれている。ただ、7,8月と輸入化が想定以上に多かったため、在庫消化の進捗によっては、国内集成材メーカーの受注回復まで時間が掛かるとも指摘されている。

9月に入り、国内産Rウッド及びWウッド集成平角と競合する同米松ムク平角が、主力サイズを値下げしたことの影響も懸念材料となっている。集成平角は現状では、今夏に値上がりした水準を維持しているが、同じ輸入材製品の地合いが緩んだことで、夏場まで旺盛だった輸入材の強基調は消え、先安観が広がり始めた。国内集成材メーカーは横ばいの姿勢を堅持しているが、先安観を捉えて当用買いで様子見に入る動きも出てきた。

【合板・建材】

厚物などは堅調

国産針葉樹構造用合板の荷動きは、秋に向けた回復感に欠ける。住宅、非住宅とも先行きの需要を見込めず、現状の流通在庫で対応できるという見方だ。

価格は12mm・24mm・28mmともに横ばい。他地域で値上げが進むが、遠方からの輸送はトラック運賃も上昇し、買い方は地域内で必要買いに徹している。

厚物合板への引き合いは比較的堅調だ。非住宅向けを含めて需要の幅が広がり、流通業者も多めに在庫を確保する。需要全体が厳しいなかでちゅうるう比率が高まり、来年以降もこの流れは続きそう。輸入型枠用合板は、円高傾向で先高観が多少薄れたが、高コスト玉は残り販売に苦戦。針葉樹塗装型枠用合板などへの代替も増えてきた。

 

◇8月の米国新設住宅着工

金利下落も住宅価格は高止まり

8月の米国新設住宅着工は、年率135万6000戸(前月比9,6%増)となった。戸建ては回復傾向だが、集合住宅が微減した。7月の改定値は123万700-0戸で、速報地より下方修正されている。内訳は、戸建て住宅が99万2000戸(同15,8%増、同5,2%増)で半年ぶりに増加。5戸以上の集合住宅は(同6,7%減、同6,2%減)だった。

建築許可件数は、年率147万5000戸(同4,9%増、同6,5%減)内訳は、戸建て住宅が96万7000戸(同2,8%増、同0,5%減)、5戸以上の集合住宅が45万1000戸(同8,4%増、同16,8%減)全体的に前月より回復したが、前年比では集合住宅が伸び悩む。

米国住宅ローン金利は6,15%と2年ぶりの水準まで下落。米連邦準備制度理事会が18日に利下げを発表し、住宅ローン金利がさらに下がることが予想される。住宅需要の盛り返しも期待されるが、住宅価格は高値を維持し、米国住宅市場の回復には時間が掛かりそうだ。

◇NETISの推進技術にANDPADを選定

クラウド型建設プロジェクト管理サービス「&ANDPAD」(アンドパッド)、国土交通省/新技術情報提供システム(NETIS)に登録 | 株式会社 アンドパッドのプレスリリース

国土交通省は、公共工事などにおける優れた新技術の活用を促進するため、新技術の情報を整備したデータベースシステム

「NETIS:NewTechnologyInformationSystem」を運用しているが、このほど、外部有識者の審査を経て、NETIS登録技術のなかで2024年度の推奨技術11件を選定した。そのなかに、アンドパッドのクラウド型建設プロジェクトシステム「ANDPAD」が選定された。

施工管理や図面管理をはじめとした建設プロジェクト管理を行うソフトウェアとして、推奨技術として選定されたのは同製品がはじめてである。

◇地震後の木造住宅「安全チェックリスト」 国交省がパンフ作成

国土交通省は7月24日、地震で大きな揺れを受けた木造住宅の「安全チェックリスト」を掲載したパンフレットを公開した。このチェックリストを使うことで、居住者が自宅の状況を確認し、そのまま住み続けられるのか、専門家に相談した方が良いのかを判定することができる。石川県のホームページのほか、(一財)日本建築防災協会のホームページで公開している。

判定対象は

①震度5強以上の揺れを受けた

②家全体が傾く、柱が折れる、外壁が外れるなどの大きな被害がない

③平屋、2階建て、3階建てのいずれか

④1981年6月以降に建てた―に当てはまる木造住宅。

 

パンフレットでは、木造住宅の傾きや外壁・内壁のひび割れ、窓の開閉といったチェック項目を、目視などにより確認する方法を解説。その状況に応じて、補修などをした上で「このまま住み続けて大丈夫」、耐震性低下の可能性があり「市町村や専門家に相談が必要」の判定を行う。また参考情報として、地域の専門家(被災度区分判定・復旧技術事務所名簿)、耐震支援ポータルサイトなどの情報を掲載している。

同省は、このパンレットについて「地震で大きな揺れがあった地域の住宅は、損傷により構造耐力が低下している可能性がある。能登半島地震を含め、地震で大きな揺れのあった地域に住む方に活用いただけるよう広く周知したい」と説明している。

◇2025年の法改正で業務時間が増える?アンドパッドが独自調査

アンドパッドは、いわゆる“2025年ショック”と言われる、2025年4月の建築基準法改正・建築物省エネ法改正の認知度および業務への影響について独自に調査を行った。回答者の約5割が、法改正により業務が増加すると回答[グラフ1]。

特に設計や施工管理、事務作業で平均10~12時間の増加を予測している。また、増加が見込まれる業務に対して、回答者の約半数はDXの重要性を認識していた。

2025年4月の法改正に伴い、4号特例が縮小され、住宅でも省エネ基準への適合が義務化される。同調査の結果によると、4号特例縮小の認知度は48.6%だった一方、認知していて内容も理解している層は29,9%にとどまった。省エネ基準適合義務化の認知度は 57.4%と、4号特例縮小よりは高いものの、内容まで理解している層は35.7%だった。

法改正の影響による業務量の増加に対する懸念は、設計事務所(68%)、太陽光関連工事業(67%)、ビルダー(62%)が特に強い。工務店で業務量の増加を懸念しているのは57.3%に上がった。

1現場あたりの業務の増加量では、「書類作成・確認・申請など事務作業」と「省エネ・ソーラーパネル・断熱工事関連」が最も多く、それぞれ平均で12時間増となった。事務作業では検査書類などの作成や役所とのやり取りの増加、省エネ関連工事では省エネ機器の選定、建材への入れ替えなどが業務量に影響するという声が上がっている。

次いで「設計監理業務・設計・設計図書に関する業務(図面確認含む)」および「検査業務」で平均11時間、「施工管理業務」で平均10時間の増加となった。設計では仕様変更や設計の見直し、施工管理では法への適合の確認などの影響を指摘する声がある。その他、「特例に適合する旨のエビデンスの取得作業」や「協力会社の社員に施工内容を共有して認識を合わせること」、「下請け業者の人手手配」なども、業務量増加の懸念事項として挙がっている。

DXのためには使いやすさとサポート体制が重要法改正で増加が見込まれる業務への対応策として、全体の46%が「DX(ITツールやシステムの導入)が重要」と回答した。特に、ハウスメーカーと設計事務所でDXを重視する割合が高い。「DXで改善したい業務としては「提出する書類などの作成業務」(27%)、「工程の調査」(24%)、「現場社員の撮影や整理」(22)となった。また、DXの「推進にあたり37%が「誰でも使いやすいITツールやシステムであること」が必要で回答した。「協力会社に対する説明会・サポートが手厚いこと」(21%)、「自社に対する説明会・サポートが手厚いこと」。

◇「職人社長」が全国の工務店と連携 認定工務店を生活者に紹介

平松建築(静岡県磐田市)では、YouTubeチャンネル「職人社長の家づくり工務店」をはじめとして、書籍やメディア露出など情報発信に力を入れている。全国からの問い合わせも増えたため、各地の認定工務店を生活者に紹介する「職人社長の家づくり工務店 未来プロジェクト」を4月からスタート。自社の発信力で、集客難にあえぐ工務店を支援しつつ良質な住宅を普及させていく。

YouTubeチャンネル「職人社長の家づくり工務店」は、登録者15・6万人、視聴回数約5600万回を誇る人気チャンネルだ。社長の平松明展さんが家づくりのポイントや、現場の様子などを紹介する動画を毎日投稿している。

チャンネル自体は2016年に開設したが、運用に本腰を入れ始めたのは2022年の10月。平松さんは「市況の悪化が目に見えてきたので、事業の拡大も視野に入れて、受注を安定して獲得していくために」、YouTubeのさらなる活用を決意した。

成果はまず成約率の向上という形で現れた。YouTubeを事前に視聴している見込み客とは「金額のミスマッチさえなければ大部分は契約に至る」。現在、対面での成約率は約30%だという。集客コストも従来の3分の1まで減り、通常は3%程度が適正だとされる、売上に対する販促費の割合も1%に抑えられている。

現在、同チャンネルの再生時間は年間で約400万時間。営業マン1人が年間1500時間を営業活動に費やせるとすれば2600人分に相当する計算だ。