シンエイ通信【令和6年1月1日作成 169号】
シンエイ通信【令和6年1月1日作成 169号】
新年おめでとうございます
旧年中はご愛顧を賜り厚く御礼申し上げます
輝かしい新年を迎え 皆様のご健康とご繁栄を心よりお祈り申し上げます
令和6年元旦
SHIN-EI社員一同 心よりお待ち申し上げております。
◇九州木材商況
九州・沖縄8県の10月の新設着工戸数は合計7164戸で、前年同月比15.4%減だった。
全体に注文住宅の受注で苦戦し、大手住宅メーカーの分譲住宅も余剰感があって来年1月以降建て控えが発生するとの見方もある。
需要が見込める熊本や福岡での住宅販売、コスト削減に力をいれる住宅会社も多い。
半導体工場進出を控える熊本県大津地域では分譲住宅の建設が進む。販売店関係者は「直近2~3年低迷していた注文住宅の受注が9月以降増えている地場工務店もある。製品荷動きも10月以降伸びている」と話す。マンション向けも好調で、来年1~2月にかけて仕事量が多いという。
ただ住宅着工が順調なのは一部で、多くのプレカット工場は受注に苦戦する。
複数のプレカット関係者は「8~10月までは非住宅向けもあり比較的良かったが、年明けに仕事量が落ちそうだ」と話す。
出材は完全には回復していないが、原木価格は杉・桧ともに落ち着いている。製品価格も変わらないが、製材工場の採算は悪い。
製品の荷動きは全体に鈍く、年明け以降の丸太の値下がりによる製品価格の下落が不安視されている。
【国産構造材】
杉KD柱は特に苦戦
9月以降は荷動きが徐々に上向いていたが、11月から市売りでの引き合いは弱まり、買い方は仕事量を手当てしている。
桧製品は杉製品より荷動きが良く、特に外材や杉集成管柱など競合する製品が多い杉KD柱は引き合いが弱い。
米松製品の受注制限の影響で、杉KD平角は比較的需要がある。
製品価格は、杉KD柱・同母屋・同平角など、価格は変わっていないが、住宅需要が伸びず製品の荷動きが上向く要素はない。
このため、年明け以降さらに引き合いが弱まることが懸念されている。
【国産羽柄材】
小割は比較的好調
前月に引き続き、新築戸建て住宅向けのほか、リフォーム向けやマンション向けで需要がある羽柄材は、構造材よりも比較的荷動きが良い。
熊本県の販売店担当者は「マンション向けの受注は来年2月まで好調な見通しで、特に杉KD小割は荷動きが良い」と話す。
製品価格は、杉KD間柱と同小割と桧小割などで前月比横ばい。ただ高騰していた丸太価格は杉、桧ともに落ち着いてきている。
このため、製品の需要低迷と丸太値下げがりが続くと、年明けの製品価格の下落が懸念されている。
【外材】
非住宅向け好調
九州は以前より国産材メーンの市場であるため、外材の住宅向け需要は一部製品に限られる。米松国内挽き製品価格は前月と変わらず、横ばいとのこと。九州北部の外材専門の建材店では、造作材よりも非住宅向けであるセランガンバツなどデッキ材やアピトンなどトラックの荷台床板製品の荷動きが好調だ。トラックの納期遅れにより既存トラックを長く使うため、修理の需要が増加していることが影響している。
【集成材】
米松ムク平角や小角からRウッド及び、Wウッド集成平角や桁角への代替需要は、9月中旬から増え始め、12月も落ちることなく続く。
米松平角の不足感が緩和してきたとの声も聞かれるが、集成材への代替需要が減る気配は見られない。米松の供給制限が始まった当初は、米松の不足分のみを集成材で補填する動きが見だったが、11月頃から梁・桁の使用をすべて米松から集成材に切り替える流れが進み、当初の想定以上に集成材のシャアが伸びているとの見方が増えている。
輸入完製品の浮き玉は引き続き限定的で代替需要の主力は国内メーカーへ集中している。メーカー側も生産量を増やして対応しているが、人手やラミナ在庫量が限れれているなか、慎重な増産となっている。
集成材への代替需要が続くなか、欧州産地と日本との2024年第1四半期契約分の交渉は、12月中旬から本格的に始まった。生産コストが上昇している産地側では、特に今年下半期の価格低下と採算悪化が問題となている。
集成材の採算分岐点は前回から30~40ユーロ高の400ユーロ中盤とみられており、収益改善に向けてコスト転嫁を目指す意向が一段と高まっている。今回の交渉では、主要サプライヤーの一部がWウッド集成管柱を中心にオファー数量を絞ってきたといわれており、需給バランスの引き締めとともに値上げ機運が醸成されつつあるようだ。
【合板・建材】
価格変動せず
針葉樹構造用合板は、荷余り感が出ないようメーカーで減産が続く。
木材市況は全体に盛り上がりに欠けるが、同合板は9月ごろから徐々に動きが出始めている。メーカー担当者も「昨年同期より、今の方が引き合いが強いと思う」と指摘する。流通、販売店頭は当用買い中心だが、価格の変動よりも安定した製品調達を望んでおり、価格に他地域のような変動は見られない。
輸入型枠用合板は円安に伴うコスト高などで価格も強保合で推移する。針葉樹塗装型枠用合板は輸入製品からの代替え需要を得ている。
◇木造建築物の重量化に対応した壁量基準案を公表
国土交通省は、「木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準の見直し案」の概要を発表した。
これは2022年10月28日に公表された同案を、その後の検討を踏まえて更新したもの。さらに、22年6月17日に改正された、簡易な構造計算で設計できる高さ基準の見直しも受け、木造建築物の構造計算の高さの合理化に伴う見直しも示した。
対象となるのは2階以下、延べ面積300平方㍍以下、高さ16㍍以下の木造建築物(木造軸組み工法、枠組壁工法)
さらに令和4年基準案では[ZEH水準等の建物」を対象としていたが、今回の案ではZEH水準の建物に限らない。
必要壁量については木造軸組工法と枠組壁工法での算定式を定め、枠組壁工法でも特定行政庁が定める多雪区域については積雪荷重を加える。
存在壁量には現行法では参入しない垂れ壁、腰壁棟(準耐力壁)も参入対象にする。
参入する準耐力壁等は4分割法、柱頭柱脚の接合方法の確認を不要にするが、壁倍率が1.5倍を超える準耐力壁は柱頭柱脚の接合方法などを検証する必要がある。耐力壁の壁倍率は上限を5から7にする。筋違耐力壁の高さが3.2メートルを超えるものは、算出式による低減を行う。
筋違は木材、鉄筋のほか、鋼材や多段筋違など多様な形状のものを用いられるようにする。柱小径は横架材相互の垂直距離、当該階が負担する単位面積当たりの固定荷重と積載荷重の和とし、積雪荷重は含まない。柱小径を算出する場合は座屈の理論式を用いて検証、設計支援ツールも作成した。柱を拘束し座屈防止効果が期待できる壁が取り付く場合は面内方向の柱小径の確認を不要にする。
構造計算により安全性を確認する場合は壁量と柱小径基準は適用除外とする。
高さについては、22年6月の法改正により簡易な構造計算で設計可能な木造建築物の高さが16メートル以下に拡大されたことで、3階建てでも高さ13メートル超、16メートル以下のものは許容応力度等において検証を行った合成率規定に代わり、各階の壁量充足率を用いた規定を位置づけた。必要壁量の算定のための支援ツールは住木センターで早見表、表計算ツールなどを整備する。この案はパブリックコメントを24年1月まで受け付け、25年4月からの施工を見込んでいる。
◇建築向け電材ケーブルが品薄
太陽光発電システムの配線や住宅の配線に用いる電線ケーブルの供給が不足している。
10月以降、ケーブル需要が増えたことが一因。住宅会社によると、11月頃から入手しづらくなってきたといい、12月に入り入手環境はより厳しくなった。ケーブルメーカー各社も急な需要増に供給・生産の体制が追い付いていない。新規受注を停止するメーカーもある。
住宅用から工場やビルなど様々な建築に用いる電線ケーブルがひっ迫している。
首都圏の地域住宅会社からは「当社の場合は太陽光発電システムのケーブいるが不足しえいる」との声が上がっており、太陽光発電工事の遅れなどへの懸念を示す。西日本の住宅会社は「外部から家に引き込み幹線が不足している」。また全国規模の大手住宅会社は「太陽光向けに限らず、ケーブル全般で仕入れにくい」と話す。その一方、「不測の問題はでていない」という住宅会社もあり、仕入れルート、在庫量、使用料や用途によって、企業間で状況は異なっている。また太陽光発電事業者からは「11月頃からケーブル卸業者の受注が止まり、供給が滞っている」との指摘がある。
大手ケーブルメーカーによると、10月頃から需要が急激に高まり、需給が極端に引き締まったという。当初は工場や建屋内配線に用いる低圧ケーブルで品不足に陥り、徐々にほかの製品にも波及した。
その原因は明確ではなく、複数の要因が作用しているようだ。建築物の省エネ化促進の影響で太陽光発電の設置工事が増えたことが一因との見方があるほか、大型工場建設やそのほかの大規模建築工事もケーブル需要集中の背景という指摘がある。住宅会社や太陽光事業者によると、建築現場からの盗難や、住宅に設置済みのケーブルを切断して盗難する事態も増えているという。こうした盗難は以前から起きているが、直近ではケーブル原料の銅価格上昇が盗難増加を招いているようだ。
主要ケーブルメーカーの生産・供給も、今期前半は縮小傾向だった。前半は出荷が不振で生産を抑えていたという。円安等により原材料の銅価格が上昇し、生産コストが膨らんだことも生産抑制の一因だ。ところが、需要が下期に入って当初の想定を上回ってきたため、在庫対応や生産が間に合わない状況となった。
主要メーカーは、現状で可能な限りのフル生産及び増産をかけている。ただ「増産できても現行の10%増ほどだろう」という。また注文の急増によって、受注済み案件についても対応が追い付かないという。あるメーカーは「12月には新規受注をいったん止めた。今は既存受注分も含めて対応の交通整理をしている段階だ」と話す。他のメーカーも、一部製品の新規受注停止は24年3月末までを予定。状況が好転次第、受注停止期間の短縮や再開に動くという。
需要環境次第だが、メーカーからは「早ければ来年1月ごらから供給不足は徐々に緩和するのではないか」との指摘もある。一方で、ひっ迫緩和は年度末との見方もあり、現時点では先行き見通しはばらついている。不透明な状況だが、メーカーは経験測から「今はパニック状態だが、この先、需要が突然倍増するようなことはないと考えている」と話し、まずは受注状況の整理とフル生産体制継続、供給安定化を図っている。
◇ドローン活用の屋根・外壁点検を開始
屋根・外壁などの外部点検にドローンを活用することで、簡単な操作で点検位置まで移動できるほか、気になる箇所を高解像度のライブ映像で細部まで確認できる。従来7日間かかっていた点検作業・報告書作成が効率化でき、最短で翌日に点検報告書を顧客に提出するとしている。アプリが屋根の面積や勾配を自動計算するため、図面がなくても現地での実測・復元図面を作成することなく見積もりが可能。顧客が自宅の屋根や外壁の状況を網羅的に把握できるため、最適な改修の検討に役立つという。