シンエイ通信【令和5年10月1日作成 166号】
シンエイ通信【令和5年10月1日作成 166号】
◇九州木材商況
九州地域の製品・プレカット市況は盆が明けても盛り上がりに欠け、落ち着いた出足となった。製材品は構造用集成材用ラミナなど個別では荷動きが上向いているが、住宅需要不足を背景に在庫調整は遅れ気味で、全体としては回復途上にある。
原木には品薄感があり、価格も居所は高いが、製品価格は横ばいからジリ安で推移している。製品の値上げを唱えられる雰囲気ではなく、需要者側から値下げを要求される製材メーカーもある。現状で採算割れや採算ぎりぎりといったメーカーが多い。これ以上下落すれば、ウッドショック前の水準に近づいてしまうため、値下げを許容することは難しい。
原木についても、今の製品市況では出荷量の回復が見込まれる秋以降に材価を維持できないのではないかとして警戒感が高まっている。販売店等に在庫を積み増す姿勢。九州の有力プレカット複数社や製材工場は、中国木材鹿島工場の火災については今後の推移を見守っている考えで、目立った動きはない。
【国産構造材】
荷動き不振長引く、住宅需要の不振で、構造材の荷動きが悪い。北部九州の製材メーカーでは例年並みの稼働を続けるが、売れ行きの低迷で製品在庫が増えているという。
製品価格は横ばいからジリ安で推移。値上げを唱えられる雰囲気ではなく、メーカーによっては顧客からの値下げ要求もあり、苦慮している。一部のメーカーではすでに採算割れとなり、
価格を維持するために踏ん張りどころを迎えている。
【国産羽柄材】
手当焦らず、羽柄材は構造材と比べ、杉KD間柱芯去り材や同小割を主体に荷動きはあるが、製品市場では販売店の当用買いが中心だ。仕事量が少ない買い方は製品の市場での手当てを最低限にとどめ、様子見している。先行きについて明るい話をする業界関係者は少ない、と流通関係者は指摘する。荷動きが上向く要素を見出しづらい。
【外材】
米松国内挽き製品価格は変わらない。KD平角は競合するRW集成材を意識した価格設定になっている。平角は杉KD材もメーカーや流通が米松製品を意識し価格を調整している。
米松KD小割類は、九州では杉材の市場で、杉材メーカーがKD、グリン材を安定的に供給している。間柱もWウッドKD材などがある中、工場では国産材活用の流れが続いている。
【集成材】
8月下旬に起きた中国木材鹿島工場の火災の影響で、構造用集成材に代替需要の引き合いが出始めた。当初は、米松ムクKD正角の代替とみられる105ミリ角への注文増加が多少みられる程度だったが、9月14日から始まった米松製材の受注制限を受けて、集成平角を含めた代替え需要が本格化した。
輸入完製品の第4四半期契約分の交渉が始まらないこともあり、現状では本格化した代替え需要は国内メーカーに集中している。ただ、国内メーカーもこれまで、低迷している今年の住宅着工に併せて原料となるラミナの仕入れを絞ってきたため、人手不足も含めて急なフル生産は難しいとの見方が多い。急な引き合い増加には仮需的な注文も混在しているとみられ、メーカー側はウッドショックの経験も踏まえ、今回は実需ベースの引き合いを慎重に見極めたい様子。長らく地合いがぐずついていた集成材の相場も、火災発生後、集成材に限らず木材全体の需給がいずれ引き締まるとの観測から、下げ止まり感が強まった。さらに、長引く市況低迷で採算割れに苦戦する国内メーカーは、火事以前に盆休み前後から相場の底固めと値上げの意向をにじませていた。当初、需要の追い風がない中で値上げは厳しいとみられていたが、想定外の事態で需給バランスと相場の鍵が国内メーカー側に移った今、メーカー側の今後のかじ取りが注目される。
【合板・建材】
在庫は減少傾向、8月は盆の長期休暇や台風などで合板メーカーの稼働が抑えられたが、出荷量自体は変わらなかった。メーカーの製品在庫は減少している。針葉樹合板12ミリ24ミリともに横ばいで推移している。販売店関係者は先行きについて「盆前の大不振の時期を脱した」と話し、同合板の荷動き、値動きも現状のままだ。
建材については、九州外消費地に向けて杉ムク床などの提案を強化するところもあるが、戸建て注文住宅の不振は今後の各メーカーの製品販売に影響を与えそうだ。北部九州の流通業者は、保存処理木材などでデッキ材の取扱品目を拡充し顧客の選択肢を広げている。
◇中国木材、米松製品の受注制限開始
中国木材は、鹿島工場の火災対応について、進捗と今後の生産体制及び供給方針をい発表した。
本社工場のシフトを順次引き上げる一方、製材効率を上げて製材量を最大にするため、一部商品の生産停止または減産を行う。供給体制が整うまで休止するほか、9月納品分から、各製品について6月~8月納品分の月平均実績を下回るように受注を制限する。
同社は、鹿島工場の生産分を保管する対応策の進捗や今後の具体的なスケジュールを初めて示した。
それによると、9月1日から本社の米松製材工場の材業を1時間体制から1.5時間体制に延長し、6%増産を開始している。さらに鹿島工場では同5日に鹿島製材棟の再建プロジェクトチームを編成した。今後は、同19日から本社第8工場を現状の1シフトから2シフトに引き上げ、日当たりの生産を約2倍にする。さらに11月1日から本社第3工場を3班2シフトで土日祝日も稼働し、生産量を計算上1.32倍に引き上げる予定だ。
さえらに、国産材工場である日向工場に米松丸太を移送し米松製材を開始する予定で、まずは1000立方㍍のテスト製材を近日中に実施する。並行して10月5日から、鹿島工場の鹿島管材を再稼働させ、日向工場向けに長さ12メートルの米松丸太を玉刈りする作業を開始する。
対策を進める一方、効果が表れるまでには時間を要するため、特に10月11月の供給減少を懸念している。それを踏まえて、製材効率を上げ製材量を最大にするため、一部商品の生産停止または減産を行う供給方針を定めた。
◇半導体新工場、地価押し上げ 熊本の建設地周辺、伸び率1位
国土交通省が19日公表した基準地価で、熊本県大津町の駅近くにある商業地の地点は32.4%上昇し、工業地や住宅地を含めた全用途で伸び率が全国1位となった。大津町は半導体受託製造最大手台湾積体電路製造(TSMC)の工場が建設中の熊本県菊陽町に隣接する。新工場建設に伴う地価の押し上げ効果が、菊陽町だけではなく、周辺にも広がっていることが示された。
次世代半導体の開発・製造を目指すラピダス(東京)が工場建設を表明した北海道千歳市でも地価上昇効果が出始めた。
熊本県菊陽町のTSMC工場建設地に近い工業地の地点は前年、上昇率が全用途で全国1位となった。今年は同町の商業地に加え、隣接した大津町の工業地や商業地でも地価が大幅上昇した。TSMCが2021年に進出を表明したのを機に、近隣で事業展開を目指す関連企業が相次ぎ、事業所や住宅、店舗など幅広い用途で不動産需要が高まっている。地元の不動産会社の担当者は「菊陽町だけでは用地は足りない状況だ」と話す。
北海道千歳市では今年2月、ラピダスが工場建設を発表。札幌市にアクセスしやすい千歳市は住宅地として人気が高まっている地域だ。ラピダスや関連企業の事業所需要などに押し上げられ、JR千歳駅周辺の住宅地の地点は30.7%上昇して伸び率は住宅地として全国1位、駅周辺の商業地の地点も同様に跳ね上がり、商業地として全国2位となった。
政府は半導体を経済安全保障上の特定重要物資に位置付け、生産体制の強化を進めている。菊陽町のTSMC工場に最大4760億円、千歳市のラピダス工場に3300億円の支援を決めた。TSMCなど半導体産業進出に伴う熊本県内への経済波及効果を、31年までの10年間で約6兆8500億円と金融機関が試算するなど、消費拡大や雇用創出への期待は大きい。
ただ、地価上昇には「いいことばかりではない」(菊陽町関係者)と警戒する声もある。過度な上昇が続けば、地域住民が家を建てたり借りたりするのが困難になるからだ。また、TSMCの工場建設地周辺では、すでに交通渋滞が深刻で、来年の工場稼働後、さらに悪化するとの懸念も強い。
◇2023省エネ改修補助金(120万円) 断熱リフォーム支援事業の概要
今年度も引き続き実施される「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」は、一定の要件を満たす断熱改修に対し国の補助金が交付されるものです。ここでは、この補助制度の概要についてわかりやすく説明します。
この補助制度では、高性能建材を使って、断熱リフォームを行なった場合に、その費用の一部が助成されます。
光熱費削減、冷暖房の快適性向上、結露・カビの改善などの効果を期待できます。
制度の概要について解説します。
補助を受けられる人は、個人の方であれば、年齢・世帯要件に関係なく、自分が住んでいる持ち家を断熱リフォームするなら、どなたでも対象となります。
なお、これから中古住宅を購入し、断熱リフォームをしてから居住する予定の方も対象です。
補助金は、戸建住宅の場合、120万円を上限に、補助対象となるリフォーム費用の1/3が補助されます。
補助の対象となる事業は大きく2つ。1つは住戸全体や広範囲の断熱改修に向いた「トータル断熱」。もう一つは居間の窓改修を行う「居間だけ断熱」です。
高性能な断熱材・窓を使い、住宅全体をしっかり断熱するのに向いた工法です。省エネの効果を、実感だけではなく数字的(15%以上)にも確保できるのが特徴です。なお、全体の改修は必須ではなく、一定の改修率を満たせば、居間や主たる居室を中心に半分だけ改修といった方法も可能です。また、改修部位も屋根・壁・床の全てを行う必要は無く、外壁と窓のみ行う、あるいは窓だけ行うといった方法も可能です。(改修部位の選択によって満たすべき改修率が変わります)高性能な窓を使い、居間の窓のみを改修する工法です。大がかりな工事せず、効率よく断熱効果の実感を得られるのが特徴です。なお、居間の窓改修を行うことで、他の居室の窓改修も補助対象とできます。
◇ダイキン、安定運転時の消費電力を2割削減するエアコン
ダイキン工業(大阪市)は、節電につながる冷房・暖房運転を自動で行う「節電自動」を備えたルームエアコン「うるさらX(エックス)Rシリーズ」を11月1日に発売する。
エアコン運転時間の約80%を占めるという「安定運転時(設定温度に達した後の室温を維持する運転)」の節電に着目。独自のスイングコンプレッサーを使って安定運転時の消費電力量を約20%削減する「節電自動」を搭載した。
設定温度をエアコンに任せる場合は、節電自動ボタンを押してエアコンを起動させると、外気温に応じた設定温度をエアコンが自動的に判断し、節電につながる冷房運転や暖房運転を行う。
好みの設定温度で節電する場合は、通常の冷房または暖房運転を開始した後に節電自動ボタンを押すことで、好みの温度と節電が両立できるという。
節電自動運転は、設定温度に到達した時点の消費電力量を基準値とし、20%削減しながら運転を継続。エアコンへの負荷に応じて基準値は随時更新されるため、日中よりも負荷が小さい夏場の夜間などは基準値が自動で低く設定される。
また、比較的多くの電力を使う23~26畳用の大型クラスの室外機のために、高効率の圧縮機と、容積を最適化した熱交換器を開発。2027年度省エネ目標基準値を達成し、買い替え時期を迎える11年前の同社機種に比べて年間消費電力量を約16%削減できるとする。