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シンエイ通信【令和5年6月1日作成 162号】

シンエイ通信【令和5年6月1日作成 162号】

 

◇九州木材商況 

九州・沖縄8県の3月新設着工数は合計8913戸で、前年同月比5.9%増。

持ち家はほとんどの地域で減少しており、地場工務店は受注に苦戦している。一方で分譲住宅は増加。

住宅ローンが通りづらいと言われる中でも、九州北部で分譲住宅事業を展開する住宅メーカーは好調だ。同社の担当者は「年間の着工棟数が見込める分譲住宅の方が価格優位性があり、顧客も購入しやすい」と話す。

ただ、大型連休がある5月の受注が4月と比べて落ちているプレカット工場が多く、受注競争は加速している。プレカット工場関係者によると北部九州よりも南九州のほうが加工坪数が減少しており「着工はあまり変わっていないため、1個当たりの面積が小さくなっていることが原因ではないか」と指摘する。

製品の荷動きは低調だ。熊本県の製品市場ではほとんどの製品が前月より値下がりした。買い方は今後も下がるとして様子見しており、製品市場の荷物量は増加している。市場担当者は「価格維持したいが、現時点で荷動きが上向く要素はない」と今後を不安視している。

【国産構造材】

製品価格は下がっており、製品の売れ行きも低調。生産調整を続けるメーカーも多い。

九州南部の量産メーカーは丸太価格の値下がりに伴い、今後製品価格への反発も視野に入れる。

九州内の大手プレカット工場では、杉KD柱と同平角、同母屋の仕入れ価格は下がった。桧KD柱、同土台は価格を維持している。

【国産羽柄材】

荷羽柄材も動きが低迷。九州南部の羽柄材専門メーカーでは九州内外向けの4月の受注が3月と比べ1割程度減少している。

5月も4月と同等の受注状況になる見込みだ。そのため4月からの減産を、5月も続ける方針。同社の担当者は「採算性向上のため丸太価格はもう少し下がって欲しい。先行きは読みづらいが、製品価格は現状を維持したい」と話す。

【外材】

国内挽き米松製品の価格は前月比横ばいとなっている。KD平角が競合するRウッド集成材の価格をにらんだ設定にしており、九州では杉KD材メーカーや流通業者も外材に合わせた価格調整を進めている。

小割類は九州では杉材の市場で、杉材の量産工場が多量に供給している。そのため、米松材やWウッド材などの供給量は九州北部地域の一部に限られている。

【集成材】

集成材の荷動きは5月中旬に入っても鈍い状態が続く。例年は5月連休前後にはまとまった荷動きが見られるが、今年は「連休前の駆け込みが無かった。連休明けの立ち上がりが良くない」など目立った変化がなく、需要の回復は4月、5月と足踏みしている印象が強い。

輸入完成品の入荷量は昨年11月以降、月間4万立方メートル台の低水準が続き、国内集成材メーカーも昨年6月頃から1年近く減産を続けている。そのため、輸入完製品の入荷増に伴う荷余りは流通段階ではおおむね解消された模様。

高値在庫を抱えるプレカット工場も、新規手当で在庫コストを薄める動きを見せており、昨年のような会止めはない。このため、現状の荷動き不振は在庫過多による重しが要因ではなく、木造戸建ての新築着工数が昨年4月以降12ヶ月連続で前年比減が続いていることが主要因との見方が強まっている。

【合板・建材】

減産継続で価格維持

国産材合板の引き合いは落ち着いており、価格にも変化はない。針葉樹構造用合板の価格は、12mm・24mmいずれも前月比横ばい。

関東など針葉樹構造用合板が値下がりしている地域もある。

九州内のメーカーは顧客の需要に合わせた生産調整をしており、九州のプレカット工場担当者は今後も価格は変わらないとみている。

住宅資材及び住宅価格の上昇と注文住宅の着工戸数低迷に伴い、住宅向けのムク壁、ムク床材の需要の減少は続いている。

ただ、九州北部の住宅メーカーでは性能やデザイン性を重視して他社との差別化を図るため、分譲住宅の壁や床にムク材を採用し、分譲らしくない住宅設計としている。

 

◇2022年度住宅着工、再び減少86万戸 持家24.8万戸

国土交通省が4月28日発表した2022年度の新設住宅着工戸数は、前年度比0.6%減の86万828戸で、昨年の増加から再び減少した。水準としては、過去10年間で下から2番目の低さとなった。

利用関係別戸数では、持家は前年度比11.8%減の24万8132戸となった。持家が25万戸を割り込むのは1960年度(昭和35年度)以来。オミクロン株の流行やウクライナ問題に端を発した資材価格の高騰などで消費マインドが低下し、受注件数が減少。着工に大きく響いた。

貸家は5.0%増の34万7427戸で2年連続の増加。分譲住宅も4.5%増の25万9549戸で2年連続の増加となった。一戸建ては0.1%増の14万4321戸で2年連続の増加、マンションは10.8%増の11万3900戸で4年ぶりの増加となった。

◇国交省がグリーン化事業のグループ募集開始

国土交通省は4月28日、2023年度の地域型住宅グリーン化事業について、グループ募集を開始した。申請は6月2日まで。

2023年度の補助対象は▽認定長期優良住宅、▽ZEH・Nearly ZEH、▽認定低炭素住宅、▽ZEH Oriented――の予定。さらに加算措置として①地域材等加算(柱・梁・桁・土台の過半またはすべてに地域材を使用)②和の住まい加算(地域住文化加算:地域の伝統的な建築技術を活用)③三世代同居加算(玄関・キッチン・浴室・トイレのいずれか2つ以上を複数箇所設置)④バリアフリー加算(バリアフリー対策を実施)――の併用が可能だ。補助限度額は140万円/戸などとなっている。

「地域型住宅グリーン化事業 評価事務局」WEBサイトはこちら

間取り提案商品に「ChatGPT」活用の新機能

Lib Work(熊本県山鹿市)はこのほど、安心計画(福岡市)と共同開発した「マイホームロボ」にプラン提案時の案内文を自動作成する新機能を搭載したと発表した。OpenAI社が提供するAIツール「ChatGPT」を活用したもので、個々の施主に会った間取りプランを早く簡単に提示できるようになる。

 

提案書作成のイメージ

「マイホームロボ」は、住宅事業者が施主に提出するプレゼンボードを自動作成するAIクラウドサービス。これまでプラン提案時の説明は、営業担当者の経験と知識に左右されてきたが、新機能により効率的で質の高い営業活動を広く展開することができるようになるという。また、プラン説明がシステム化されることで営業全体のスキルが均一化され、人材不足解消にもつながるとしている。

「ChatGPT」は自然言語処理の分野で使用されるAI技術を活用しており、今回の連携では「マイホームロボ」に蓄積されたプラン情報と施主へのアンケート内容をもとに、「ChatGPT」に指示する条件とコンテンツを構築。マイホームロボが保有する全プランの文字データを、アンケート内容に合わせてわかりやすいコメントとして作成し、提案書に自動で掲載する。経験・知識に乏しい若手の営業担当者でも、施主の要望に添った適切な案内文を作成可能となる。自動作成したコメントは自由に編集可能。提案書はWebマイページにも掲載できるため、遠隔の提案にも利用できる。アポイントが取りやすく、早期受注につながるとしている。

◇外構の木質化プロジェクトを募集—住木センター

日本住宅・木材技術センターは4月26日から、林野庁補助事業「外構部等の木質化対策支援事業 企画提案型実証事業」の募集をスタートした。木製外構・木製外装の認知度の向上や知識の普及、情報の収集等の取り組みを支援することで、木材の新たな需要を創出することが目的。応募書類の受付は6月26日17時まで。

1件あたりの助成金の上限額は2000万円で、4件程度の採択を予定している(助成額全体で5000万円の予定)。同事業の実施期間は、採択通知を受けた日から2024年1月22日まで。

支援の対象事業は、(1)木材・製品・技術の性能等の検証に関するもの(外構部等における木材の新たな利用方法等を企画し、性能等を確認するもの)、(2)利用者や社会に及ぼす効果等の把握に関するもの(木質化した外構施設又は外装が利用者や社会に及ぼす効果等を把握するもの)――のいずれかに係るもの。

(1)としては、木製遮音壁、利用者でも交換可能な木塀等、木ならではの質感・デザイン性等を活かした木製外構・外装、これまで木質化が進んでいない外構施設・外装の木質化などを例示。(2)としては、地域材を利用した木塀の広範な整備、木製遊具の整備などを例として挙げている。

対象になる施設は、①屋外に設置される外構施設又は外装(戸建住宅の外構施設又は外装を除く)で固定されているもの、②クリーンウッド法に基づく登録木材関連事業者が施工するもの、③住木センターが企画提案型実証事業として採択する旨の通知をした日付より前に施工着手していないもの、④応募書類に具体的計画、仕様が明記されているもの、⑤木材に利用部位に応じた劣化対策を講じているもの、⑥維持管理計画が作成されており、維持管理方法について施工者等から施主及び施設管理者へ具体的な内容の説明が行われるもの、⑦同事業以外に国、地方公共団体、その他の公的機関からの補助や助成を受けていないもの、⑧「反社会的勢力」が整備し、又は所有するものではないもの――を満たすもの。また、事業の実施体制には、実証する内容の知識・見識を有する学識経験者を必ず含むものとする。