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シンエイ通信【令和4年8月1日作成 152号】

シンエイ通信【令和4年8月1日作成 152号】

◇九州木材商況 

九州・沖縄8県の5月新設住宅着工数は合計8062戸で、前年同期比3.5%増となった。5月は昨年よりも着工数を上回っているが、半導体や合板の不足により着工が遅れていたことが関係しており、工務店の受注は伸び悩んでいる。

プレカット工場はロシアによるウクライナ侵攻が始まった際の在庫を抱えている。製品市場でも様子見する買い方が多く、在庫が増えている。そのため出荷先に偏りのある製材メーカーは荷動きが低調だ。

製品市場は価格を維持したい考えで、製品価格の大きな変動はない。九州北部の杉KD柱・桧KD土台などの製材メーカー関係者らは、梅雨明けしたものの住宅着工数が伸び悩んでいるために秋需の雰囲気が見えず、今後が見通しづらいため情報収集を進め状況を見極めている。

【国産構造材】

販売店の仕事量が少ないことやプレカット工場が多くの在庫を抱えていることが影響し、全体的に荷動きが低調だ。販売先から値下げの要望があるが、メーカーは価格を維持したい考えだ。桧KD土台も落ち着いていた荷動きで、製材メーカーによると例年と異なり秋需の雰囲気が見えてこない為、ウッドショック以前より荷動きが低下する可能性もあるという。

【国産羽柄材】

九州外への販売も低調で、杉KD間柱や同小割は値崩れしていないが、低調ない荷動きが続いている。製品市場は高値で仕入れた在庫が残っており、買い方は落ち着いた札を入れているため控えめな集荷をしている市場もある。九州北部の製材メーカーはフル稼働を続けているが、5月と6月は関東や中京、関西向けの販売が落ち着いてきている。小割の量産工場の生産状況次第で九州内の在庫量が増え荷動きや価格に影響する可能性もある。先行きには不安感が見られる。

【外材】

円安やフレート高などに見舞われている中で、米松国内挽き製品の価格は変わらず。九州内外で当初の予想以上に輸入材の在庫がある状況で、販売店などは手当て買いに終始している。国産材への切り替えを進めるところもある。

小割に関しては九州は国産材の市場で、米松やWウッド製品などの流通量は限られる。ロシア産アカ松タルキはロシアのウクライナ侵攻以前から、九州内での取引はほとんどなかったと見られる。

【集成材】

集成材の荷動きは、5月の大型連休明けから一服感が広がり、回復の兆しがないまま月を追うごとに出足が鈍くなっている。

欧州を含めた輸入材が日本側の想定以上に順調に入荷し、全国各地の港では倉庫に置き場がないことが深刻な問題となっている。

在庫の過剰感がつよまるなかで、日本国内、海外産地はともに需給と価格の調整局面に入った。日本国内では昨秋から今春にかけて、RウッドとWウッドの構造用集成材は内外産ともに、価格据え置きで推移している。7月中旬以降より、10%~15%値下がりも聞かれるようになってきた。

国内集成材メーカーでは、需給バランスを回復し相場を引き締めるため、減産する動きが進んできた。

Wウッド集成材管柱にも一定の需要はあるが、輸入缶製品が需要を上回る勢いで入荷しているため、港頭在庫が膨らんでいる。

集成材は屋内で保管すべきだが、屋根の下での保管が限界に来ているとの声も。港以外で新たに倉庫を探す動きもあるが、容易には進まない様子。

昨年の最高値圏に近い輸入コストとなる第2四半期契約分が入り始め、在庫は数量だけでなくコスト重くなっている。

【合板・建材】

全体的に先高観。合板は関東よりも安い水準ではあるものの、国産、外材ともに先月より値上がりしており、先高観がある。

針葉樹構造用合板12ミリ厚は前月より100円高、24ミリ厚は前月より200円高。

九州内の建材メーカは為替により価格が変動する外材の状況を踏まえ、6月中旬に行われた展示会では価格が安定しやすい国産材製品を中心に提案していた。塗料も値上がりしているなか、桧を使用しても着色次第で顧客の要望に合わせて洋風にもなり幅広い使い方が出来ることをアピールしていた。そんななか、中国産針葉樹合板の輸入量が急増している。問題は、日本が輸入を禁止しているロシア産の単板を利用していると見られることだ。短期間で供給を嗅覚だ出来た理由もそこにある。日本向けに輸出できなくなったロシアの単板が中国に輸入され、中国で加工されて日本へ輸入されている。「単板」と「合板」では品目が異なるために違法ではないが、道義的にどうかといえば様々な意見がある。

国内合板メーカーはロシア産の単板輸入禁止以降、様々に手を尽くして代替原料を模索してきた。一部のメーカーは杉やカラ松の丸太を中心に、ようやく代替え材の調達にめどをつけたところだ。ロシア産の単板在庫も払底し、まさにこれから切り替えが本格化するというタイミングだけに、本来は日本向けに供給されるはずだった日本仕様の単板を使った中国産の供給拡大に、やり切れない思いをしているに違いない。

売り手市場の現状は国産より高値で供給されているが、需給が均衡した後に国産を下回る価格で供給されないとは限らない。「国産と中国産の選択になれば国産を選択する」「価格競争力があれば一定の定着はあり得る」など様々な見方が交錯している。成り行きは予想しがたいが、いずれ市場の判断にさらされることになる。

◇国土交通省 4号特例縮小に

6月13日、建築物省エネ法等の改正案が成立。

2025年省エネ基準適合義務化とあわせて盛り込まれていた「4号棟特例の縮小」が確定的になった。木造2階建ても対象になる構造審査には、実は問題があるようだ。

以前から4号特例に疑問を呈していたM’s構造設計代表・佐藤実さんも「思った以上に厄介な改正になるかもしれない」と予測する。

構造区分の「4号」は廃止、木造2階建ては2号建築物に...。

建築士が設計した、一定以下の規模の建築物について確認申請時の構造審査を省略する、いわゆる4号特例は、建築基準法第6条(構造区分)に基づく特例だ。今回の改正で4号の区分はなくなり、木造・非木造で区分されていた2号、3号は構造の別なく、階数や高さ、床面積による区分となる。

現行法で4号に区分される建築物(木造2階建て以下、高さ13m以下・軒高9m以下、延床面積500㎡以下)は、2号または3号建築物に区分される。木造2階建ては2号建築物として扱われることになる。

改正後も構造審査省略の特例がなくなるわけではないが、対象は3号建築物(平屋建て・200㎡以下)に限られる。

工務店がつくる木造住宅の大部分は、構造審査の対象になると考えてよい。施行は省エネ基準適合義務化に合わせ、2025年になると見られている。

具体性に欠ける仕様規定が混乱を招く?

また、300㎡超では構造計算(許容応力度計算など)が義務化される。300㎡以下・2階建て以下の建物は今と変わらず仕様規定で良いが、この仕様規定に問題が潜んでいる。仕様規定中、計算を要する3要目(壁量、壁の配置、柱頭柱脚の仕様)以外の8項目は漠然とした内容で分かりやすい仕様例があまりない。そのため、確実に適合しているかの判断がとても難しい。佐藤さんは「(仕様規定への適合が)検証されないまま、確認申請がおりてしまう」事態も起こりかねない。

許容応力度計算でも仕様規定は絶対

そもそも、許容応力度計算や品確法(住宅の品質確保の促進等にかんする法律)に基づく設計でも、仕様規定への適合は必須だ。この事実を知らない事務者が一定数いるとみており、改正時に混乱が生じうる「大きな勘違い」のひとつとなる。また、4号特例の縮小と聞いて「壁量計算・4分割法・N値計算の結果を提出するだけ」という思い込みも根強い。しかし、これも勘違いの可能性がある。

2020年3月施工の改正建築士法では、4号建物も構造計算書、伏図などの保存を義務化。4号特例の縮小時も同様に、構造計算書、そして「基礎伏図や各界伏図の提出が(確認申請に)必要になるかもしれない。改正までに、実務者が必要な図書を作成できることが必要として、改正の実態が早期に提示されるべきとした。

◇改正建築物省エネ法等の解説動画を配信

国土交通省は、6月17日に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」に関する説明動画(第1弾)を7月22日から配信する。また、説明動画に加え、全国4都市(東京7/26~27・名古屋8/1・福岡8/4・大阪8/5)では、会場での説明会を開催する。

改正建築物省エネ法と改正建築基準法等の全般的な内容のほか、今後の施行時期等を解説・説明するもので、説明時間は約2時間ほど。参加費は無料。動画は申し込み不要。動画配信を行うURLはこちら(国交省HP)。

会場での説明会には申し込みが必要。開催日時・申し込み等の詳細はこちらから。定員に達し次第、申し込みを締め切る。

◇日本板硝子、国内の建築用ガラスを最大40%値上げ

日本板硝子(東京都港区)は7月15日、国内の建築用板ガラス製品の販売価格を10月1日出荷分から30~40%値上げすると発表した。

板ガラス製品、鏡製品の価格を35~40%、建築用機能ガラス製品の価格を約30%引き上げる。

原燃料や各種副資材の高騰、物流費の上昇、円安の進行などによる急激なコスト上昇が安定的な製品供給に影響を及ぼしているとして、製品価格に転嫁するという。

同社はリリースで「一部製品につきましては記載以上の引き上げをお願いする場合がございます」と説明している。

建築用ガラスを巡っては、AGC(東京都千代田区)が7月6日に、国内建築用ガラスの販売価格を10月1日の納品分より最大40%値上げすると発表している。

◇トクラス、調理性・意匠性高めた新キッチンシリーズ

トクラス(浜松市)は、システムキッチンの新シリーズ「Collagia(コラージア)」を9月15日に発売する。

つくることを楽しむ調理性、好みの空間を演出できる意匠性、家族での暮らしを楽しむプランニング力を備えたキッチン。
シンクに付属する2段のプレート・ラックで調理スペースが広げる「スムースワークシンク」をラインアップし、粉を使ったり魚をさばく作業を汚れを気にせず行えるようにした。このほか、使うモノを見つけやすい引き出し「オーバービュー収納」、調理家電が手元で使えるクックコンセントなどを用意する。

意匠面では、人造大理石基材に独自の塗装技術をほどこすことで質感・機能性を高めた「TENOR(テノール)カウンター」の質感を扉にも展開。人造⼤理⽯の端材を粉末状にして塗料に混ぜて吹き付けることで、マットな質感で傷つきにくい塗装扉に仕上げた。カラーバリエーションはグレイッシュ系の10色。販売予定価格は約136万円(I型2550mm標準プラン、税別)。

キッチン部:D888スリムフラット-X・アイランドW2550、収納部:D650

 

 

◇制震筋違デバイス普及へ

「住宅にシェルター並みの強さと安心を」。ハイブリッド構造の制震デバイス

無垢材を使ったデザイン住宅を手掛けるなかやしき(福岡県築上郡)と西日本工業大学(福岡県北九州市)はこのほど、同大学が開発した制震デバイス「ダイナミックファスナー」の普及を目的とした産学連携協定を締結した。

「ダイナミックファスナー」は、耐震性能と地震の揺れを吸収して建物の揺れ幅を抑える制震性能を兼ね備えたハイブリッド構造の制震デバイス。木造住宅の筋交い金物を同デバイスにかえるだけで、住宅の耐震・制震を実現する。

なかやしきでは、このデバイスを設置した住宅を、「おうちまるごと制震シェルター」と名付け販売も行う。

今後は、同大学が専門的な技術支援を実施。両社は同デバイスと揺れ幅解析ソフトの普及啓蒙活動の一環として、見学会やイベント、開発責任者の教授による講演、解析シミュレーション体験など、さまざまな活動を行いながら、「地震で倒壊する家ゼロ」に向けて、安心して暮らせる環境づくりを推進していく。

地震に耐える耐震性能と、地震の揺れを吸収して建物の揺れ幅を抑える制震性能を合わせ持つハイブリッド構造の制震デバイスです。

木造住宅に不可欠な筋交い金物をこのデバイスに変えるだけで、住宅の耐震と制震を実現します。