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シンエイ通信【令和3年6月1日作成 138号】

シンエイ通信【令和3年6月1日作成 138号】

 

◇ウッドショックで変わる住宅

昨年末から徐々に始まっていた木材不足が、社会現象になるまで拡大したのは、4月からだろうか。

日刊木材新聞社ホームページのアクセス数も4月以降は従来比の3倍を記録するなど、

「ウッドショック」への関心の高さがうかがえる。

プレカット工場が受注制限に動くなか、供給難となっている資材の代替え材探しも加速している。一例が、筋違からの構造用合板やMDF、パーティクルボードなどの面材への移行だ。このところ引き合いが大きく増加している。

これまでにも住宅の性能・仕様は進化を続けてきたが、変化のスピードは右肩上がりというわけではなく、建築基準法の改正や政府の各種施策の実施、災害の発生など、その時々の事象に影響を受けて、ジグザク模様で変化してきた。今回のウッドショックも住宅仕様の変更に一定の役割を担うことになるのは間違いないだろう。

 

ウッドショックと並ぶもう一つの大きな変化が、住宅脱炭素化だ。

2050年カーボンニュートラルに向けて、民間部門のCO²削減に最も効果が高いとされる住宅の脱炭素化へ各種施策が今後、強化されていく見通しだ。

そして、面材は、耐震性の向上につながる、省施工に資するなどの利点があるが、気密性を取りやすいことから、住宅の脱炭素とも相性が良い点でも注目されている。

今年4月には、省エネ性能にかかわる説明義務制度が実施されるなど、住宅業界の脱炭素を目指した動きが顕著になっている。

木建ルートでもサッシや太陽光発電機器などの取り扱いが増え、全館空調や空気清浄の仕組みを取り入れた住宅が登場するなど、新常態を探る動きがある。

ウッドショックがいつまで続くのかは分からないが、長期化すればするほど、住宅の仕様に及ぼす影響は大きくなる。

住宅の脱炭素化も相まって、構造用面材や断熱材、太陽光発電システム、蓄電池、国産材などは採用が増えていくだろう。

阪神大震災やエコポイントなどで住宅仕様は変化してきたが、今回のウッドショックが終息したときには住宅の仕様はどのように変わっていくだろうか。

◇建材商況一斉値上げへ

4月の建材販売は、昨年同期には新型コロナウイルスの感染拡大で需要が減少し始めていたこともあり、前年同月比で久しぶりの増加となったところが多い。だが、一昨年に比べると市場環境は依然として厳しい。

一方、折からの資材高が業界を直撃し、大建工業、永大産業、NODA、アイカ工業、南海プライウッドなど木質系を中心に一斉値上げとなっているが、需要面では、ウッドショックによる木材不足の影響は建材には及んでおらず、住宅会社も上期までは木材を確保できているというところが多い。

木材不足による工期遅れで、建材に影響が出ているのは下期以降と見られる。需要減とコスト増に見舞われることになり、環境が一層厳しくなることも予想される

【木質床材】

◇複合フローリング4月の複合フロアの出荷量は、昨年4月の水準が低かったこともあり、17カ月ぶりの前年比プラスとなりそうだ。5月も同様に前年比で増加となるのは確実だが、一昨年の水準には届かず、実需は厳しい状況が続いている。

ウッドショックの影響はまだ建材市場には及んでいない。来月頃から構造材の確保が難しくなるという住宅会社もあるが、おおむね上期分までは木材を確保しているところが多い。そのため、ウッドショックがこのまま解消されずに木材不足が工事遅延に繋がるとすると、建材に本格的に影響を及ぼすのは10月以降となりそうだ。

引き合い低迷するなか、コスト高を転嫁するため、NODA、大建工業、南海プライウッドなどが値上げを打ち出した。

主な値上げは、南洋材合板基材の建材だが、先高観が高まっている国産針葉樹合板基材フロアも値上げしたところもあり、前回の値上げのように、基材を変えれば値上げを回避できるという状況でもなくなっている。

◇無垢フローリングの引き合いは、リフォームを含む戸建てとマンションで例年並みに回復しつつあるが、ここにきて店舗向けの出荷が低調に。

ホテルなどの施設向けも一服しており、受注回復の勢いが落ち着いている模様。一方で資材高の影響は大きく、広葉樹不足に加え、杉など針葉樹無垢フローリングも10%程度の値上げを打ち出す企業が出ている。

 

【断熱材】

原材料価格の上昇で押し出し法ポリスチレンフォーム(XPS)の3社がそろって、現行比で20%の値上げに動いている。ただ、木材の仕入れ価格の高騰で、値上げ交渉は難航するとの見方も。原油価格が上昇しており、今後はボード品を中心に他品目でも値上げの可能性が指摘されている。

原油価格の上昇は断熱材の製造コストの圧迫要因となるだけに、メーカー各社の警戒感はつよい。だが、最大の関心ごとは木材不足だ。

現時点で断熱材出荷に大きな影響は出ていないが、それでも「例年、大型連休前の駆け込み需要などで、大型連休前後は出荷が増える。工場の稼働率も上がるが、今年はそれほどでもなかった。建方遅れの営為協が出ているのではないかと見ている」との声も聞かれる。

木材不足により建方が遅れが常態化すれば、需給バランスが崩れかねない。メーカー各社とも動向を注視している。一方、営業先では木材不足の話題に終始し、省エネ説明義務化制度の追い風はあっても、提案営業がしにくいとの指摘もある。

 

【外装材】

窯業系は着工に連動した荷動きで、前年並み。前年が低水準の出荷だけに、さえない手応えだ。外装材メーカーでは、原油価格が上昇基調で製造コスト高が懸念されるうえ、木材不足が拍車を掛けそうだ。

建て方遅れが生じても、需要が先送りされるだけで蒸発するわけではないとの楽観的な見方も一部で聞かれる。だが、建て方遅れにより出荷の減少幅が拡大すれば、工場稼働率が低下し、製造コスト高につながる可能性もある。さらに、木座価格の高騰で、住宅会社の仕入れ価格がさらにシビアになるのではないかとの警戒感も出ている。

シェアの高い窯業系を筆頭に、他メーカーとの価格競争が懸念されるが、「コロナ禍で込み入った話が出来ず、簡単には仕様転換できない。このタイミングで安くしないから仕様転換するといった話はないのではないか」との見方も聞かれる。

【石膏ボード】

前年同期は、消費増税の影響や東京オリンピック関連特需の消失に加え、緊急事態宣言で現場が止まり、出荷は低水準だった。今月もその水準にいま一歩届かず、悪かった前年をさらに割り込んでいる手応えだ。

だが、市況感は悪くない。非住宅向けは大型プロジェクトの端境期で勢いを欠くが、住宅向けは地道に出荷量を積み上げている。

中堅ビルダーは繁閑がはっきりし、商流で出荷の手応えがばらつく。一部、分譲会社で仕入れ用地が間に合っていないと聞かれ、出荷減の一因となるも、完成物件の販売好調の裏返しでもある。

最大の懸念は木材不足による建て方遅れだが、石膏ボード出荷では、現時点で木材不足の影響は聞かれない。相場は小じっかりしているが、非住宅向けは需要減から価格競争も一部で聞かれる。

一方、石膏ボードメーカーは、原油の強含みで製造コスト高への警戒感が依然として強い。

 

◇ 4月の新設住宅着工 2か月連続増加

国土交通省は5月31日、4月の新設住宅着工を公表した。

総数は7万4521戸(前年比7.1%増)で、2か月連続で増加した。持ち家は6カ月連続、貸家は2か月

4月、全国で着工された住宅の戸数は、昨年の同じ月より7.1%余り増加し、2カ月連続で増加し、マンションも2か月連続で1万戸を超えた。ただし、コロナ禍を経て回復傾向にあるものの、2年前の2019年までは4月も8万戸前後を維持していた。まだ力強さには欠けるものの、コロナ禍の下押し圧力は脱した模様だ。

4月は総数が前年同月より約5000戸増え、このうち持ち家が前年同月より約1800戸、貸家が同約3500戸増加したが、分譲住宅は微減、給与住宅が約300戸減った。総数は21年2月まで20カ月連続で増加した。20年はコロナ禍で過去最低水準からの回復であるため、まだ勢いは感じられない。

例えば持ち家は2万2877戸(同8.8%増)だが、前月比では2.4%増と微増。これまで持ち家は3月までの不需要期を経て、4月から伸びる流れがあった。19年は3月の約2万2400戸から、4月は約2万5400戸へと約3000戸も増加した。

21年1月からの2度目の緊急事態宣言で同月の総合住宅展示場来場者が約半減し、これが5月の大型連休までの受注契約に影響した。

例年2月~3月と来場者は減り、再び5月の大型連休で盛り上がる流れになる。

貸家は2万8825戸(同13.6%増)で19年11月以来、20年4月が約2万5000戸と低すぎたため、21年4月の2万8825戸も多く見えるが、19年は約2万9500戸までは3万5000戸を超えていた。

分譲住宅は2万2483戸(同0.3%減)となり、2か月ぶりに減少した。

マンションは1万776戸(同0.5%増)と2か月連続で増加し、この1万戸超は総数増加に貢献した。マンション着工は傾向から読みにくく、大規模物件など建設で着工件数が左右される。今回はマンション着工が多い3大都市以外のその他地域で増加した。戸建て分譲は1万1595戸(同0.6%減)で、17カ月連続で減少した。ただ、この5カ月は前年同月比の減少比率が縮小し、4月は微減まで回復した。

 

◇掃除後の喚起、レンジフードON14倍効果的に

一般家庭で掃除機をかける際には、家具や敷物を動かすことで室内にほこりの粒子が舞い上がる。そこで、室内に浮遊したほこりの喚起による屋外への排出量について、解析ソフトを使ったシュミレーションをおこなってところ、換気開始から10分後のほこりの排出率は、「窓開け」のみでは約5%であるのに対し、「窓開け+レンジフード」では約70%となり、約14倍の差があることがわかったという。

 

◇国土交通省、住宅の部分断熱の改修費用を補助

国土交通省は5月21日から、「部分断熱等改修実証プロジェクト」の本年度支援事業の募集を開始した。平成11年(1999年)3月30日より前に建築された戸建住宅に関して、寝室やLDKなどの部屋単位、1階部分だけなどフロア単位での、所定の要件を満たした断熱改修等が対象。100万円/戸(補助対象工事費の1/2以下)を上限に改修費用を補助する。

同プロジェクトは、住宅全体を改修するのではなく、空間や部分単位で改修することで、 世帯人数・構成等の変化に応じた柔軟な暮らし方を実現することが目的。実証事業の結果を踏まえ、部分断熱改修のガイドラインの作成等を予定している。

採択事業は、改修効果を明らかにするため、改修前後に住宅の温熱環境について、 調査・測定を行うことが求められる。どのような調査・測定を行うかについては、 補助採択時に、対象物件ごとに指定する。今回の募集期間は7月21日(水)まで。夏頃に追加公募を予定している。