シンエイ通信【令和元年9月30日作成 118号】
■ 住生活基本計画の検討
国土交通省は2021年3月に見直す住生活基本計画の検討を進めている。9月12日に社会資本整備審議会住宅宅地分科会を開催。現行計画で重点化した住宅ストック政策や空き家抑制を深掘りするとともに、少子高齢化への対応としてAIやIoT、自動運転などの新技術やコンパクトシティ等の都市政策・まちづくりとの連動も論点として追加し検討していく。 今後、分科会では、2020年6月に中間とりまとめをし、2021年2月に見直し案をまとめる予定だ。居住者の視点では、子育て世帯のニーズに立った住宅や高齢者が安心して健康に暮らせる住まい、外国人も含めた住宅確保要配慮者の住宅、サブスクリプション型居住サービスやシェアリングエコノミーなどの新たな「住まう」形態のあり方等を検討する。 住宅ストック関連では、「耐震」「省エネ」「バリアフリー」などの住宅性能の確保や新築住宅中心の市場から既存住宅活用型市場への転換対策、空き家対策、老朽化マンションへの対応等を見直す。 産業・新技術の観点からは、外国人材も含めた担い手の確保と生産性向上対策や住宅産業の海外展開、住宅の維持管理およびリフォーム等の成長促進策、AI・IoTなどを活用した住宅関連産業サービスのあり方等を検討する。 まちづくりとの関連では、コンパクトシティ政策と住宅政策の連携のあり方や郊外の住宅団地の再生、防災対策等を見直す。 住生活基本計画は、社会情勢の変化を踏まえて5年ごとに見直すことになっている。 |
■ リハビリサービスを支援するクラウドシステム
パナソニックエイジフリー(大阪府門真市)は9月25日、デイサービスセンターでの高齢者のリハビリサービスを支援するクラウドシステムを開発したと発表した。
これまでパナソニックエイジフリーの事業所で試験運用を行ってきた結果、リハビリサービスにおける間接業務にかかる時間が約8割軽減されたという。一施設につき2~3ライセンスの導入を想定。介護業界でも人手不足は深刻な問題となっている。同社では介護業界の課題解決に貢献できるシステムとして、2020年度内の製品化を目指す。 |
■ 「賃貸契約者動向調査」の結果
リクルート住まいカンパニー(東京都港区)はこのほど、2018年度の「賃貸契約者動向調査」の結果を発表した。現在住んでいる賃貸物件と以前住んでいた実家の住宅性能(遮音性、断熱性・省エネ性、耐震性)の満足度について、40代以上は賃貸の満足度が高いが、10代・20代は実家への満足度が高く、年代によって大きな差がみられた。遮音性の満足度をみると、40代は新居(賃貸)が36.5%、実家が32.0%であるのに対し、10代・20代では新居が25.3%、実家が52.9%だった。また、実家を建築年・タイプ別に分けて比較すると、2001年以降の建築年の持ち家層は実家への満足度が高いことがわかった。
利用者からの満足度の高い設備1位は「24時間出せるゴミ置き場」(68.3%)。世帯構成別にみると、ひとり暮らし世帯では「独立洗面台」(73.5%)、「宅配ボックス」(67.3%)、「エアコン付き」(65.4%)に対する満足度が高かった。2人世帯では「追い焚き機能付きの風呂」(71.4%)、ファミリー世帯では「24時間出せるゴミ置き場」(66.2%)がそれぞれ1位となった。「室内物干し」は前回調査から大きく上昇した。
次引っ越す際に欲しい設備は、昨年同様「エアコン付き」(71.7%)「独立洗面台」(66.4%)「TVモニター付インターフォン」(58.9%)が上位となった。家賃が上がっても欲しい設備1位は「独立洗面台」。家賃上昇許容額が最も高かったのは「エアコン」で、プラスしても良いと思う家賃額は平均1700円だった。
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■ エクステリア事業の本格的な強化
YKKAP(東京都千代田区、堀秀充社長)がエクステリア事業の本格的な強化に乗り出す。
戸建住宅事業者がエクステリアのグランドデザインも住宅と合わせて一体設計し、詳細デザインの実現はエクステリア専門事業者に外注することで、自社にエクステリア部門を持たない戸建住宅事業者でも高い意匠性のエクステリアを実現する〝分業体制〟のビジネスモデルを地域ビルダーに提唱。当該ビジネスモデルの実施で同社商材の拡販と、地域ビルダーの差別化および受注単価アップを支援する。
提唱するビジネスモデルの普及を目的にエクステリアフォーラムを主要都市で初めて開催した。樹脂サッシに続きエクステリアでも市場シェアを高め、経営構造に厚みを持たせたい考えだ。
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■ ステンレス製のアイデア建材
コボット(大阪府大阪市)は、パッキン工法の土台下2cmの隙間を換気・水道・電気コンセントに活用するステンレス製のアイデア建材「スリットマン」シリーズ3タイプを発売した。 「スリットマン・エアー」は排気用。基礎と土台の隙間に15x200mmの薄型グリルを設置することで、トイレやキッチンの汚れた空気を床下を通じて屋外に排出することができる。外部の新鮮空気を取り込む吸気口にもなるとする。Φ100のダクト継ぎ手を付属。 「スリットマン・ウォーター」は、水道用支柱を建てることなく、直接蛇口を接続できる金物。床下配管のため水道管の埋設工事が要らず、凍結・破損の心配がない。散水・洗車時の蛇口として使うことができる。アルミフレキシブル配管用の18mm高タイプと塩ビ管用の33mm高タイプをラインアップ。 「スリットマン・エレック」は、床下からの配線用ガイドと屋外コンセント固定金具を一体化。壁の穴あけ工事が要らず、屋外電源を住宅の外周どこにでも取り付けることができる。 |
■ なぜ「無電柱化」進まないのか
台風15号がもたらした千葉県の大規模停電は、強風によって電柱が想像を超えて倒壊したことが停電の主な要因で、専門家は根本的な対策として、電線を地中に通して電柱をなくす「無電柱化」の必要性を訴え、政府も加速させる意向を示す。現状は欧州などの主要都市に比べて大きく立ち遅れている日本。なぜ無電柱化が進まないのだろうか。
海外で普及している地中に直接ケーブルを埋める簡略化した工事方式でも1キロ約2・6億円かかるとされるが、電柱の場合、1キロ数千万円で済むとされる。さらに工期の問題がある。無電柱化する際、水道管やガス管を動かしたり、各家庭へ分岐したりする工事などがあり、設計から完成まで約7年かかるという試算もある。
一方、無電柱化自体のデメリットを指摘する声も少なくない。電柱だと目視での点検が可能だが、地中設備ではできず、故障の際は地面を掘り起こす作業を強いられるケースが出てくる。こうしたコストや維持費が電気料金などに跳ね返る可能性もぬぐえないのだ。
それでも秋葉教授はこう強調する。「命を守ることを最優先にすれば、無電柱化は必要。国は負担を伴うものであることの国民の理解を促進させ、一日も早く国際社会と肩を並べる状況にすべきだ」
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