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シンエイ通信【平成30年4月30日作成 101号】

平成30年4月30日作成 101号


■ 一次公募で先着枠

 住宅のネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化の補助事業で、環境省は5月28日から始まる一次公募で事業規模22億円を投じる方針だ。

 1戸あたりの補助額は定額70万円で、一次公募数は約千件となる。これまでにZEHへの補助を一度も受けていないZEHビルダー/プランナーに対して一次公募で先着枠600件分を設ける。新規に取り組む事業者を増やす狙い。また、ニアリーZEHだけでなく、太陽光発電なしでもZEHと認めるZEH Oriented(オリエンテッド)も認める。補助対象を拡大し、ZEHの普及を加速させる。

■ 国土交通省が発表した2017年度の新設住宅着工戸数

 国土交通省が発表した2017年度の新設住宅着工戸数は、前年度比2・8%減の94万6396戸で、3年ぶりの減少となった。利用関係別にみると、持ち家は3・3%減の28万2111戸。3年ぶりのマイナスで、消費増税前の駆け込み需要に対する反動減で27万戸台となった14年に次いで少ない戸数となり、リーマンショックの影響が色濃く出た09年度を下回った。都道府県別にみてもプラスとなったのは9道県のみで、残り38都府県は前年度比で減少した。
 貸し家は4・0%減の41万355戸で、3年ぶりの減少。利用関係別では最も減少幅が大きかった。分譲マンションは3・6%減の10万8278戸で、2年連続の減少。分譲戸建住宅は、2・3%増の13万7849戸で、3年連続の増加となった。
 18年3月の新設住宅着工戸数は、8・3%減の6万9616戸だった。9ヵ月連続のマイナス。季節調整済み年率換算値は89万5千戸となった。持ち家は4・2%減の2万576戸で、2ヵ月連続の減少となった。貸し家は12・3%減の2万9750戸で10ヵ月連続のマイナス推移。分譲マンションは8・0%減の7865戸で、戸建て住宅は0・8%減の1万957戸だった。

■ 2018年度の住宅着工戸数は96万5400戸となる見通し

 建設経済研究所は4月26日、2018年度の住宅着工戸数は前年度比1・3%増の96万5400戸となる見通しを発表した。持ち家の18年度の着工戸数は、5・4%増の29万9千戸との見通し。貸家は1・1%減の40万8100戸、分譲マンションは4・4%減の10万7500戸、分譲戸建住宅では4・6%増の14万4800戸と見込む。なお、18年度の名目民間住宅投資は0・3%増の15兆9000億円。

17年度の住宅着工戸数の推計は、2・2%減の95万2800戸の見通し。持ち家が2・8%減の28万3700戸、貸家は3・4%減の41万2600戸、分譲マンションは1・9%減の11万2400戸、分譲戸建住宅は2・7%増の13万8400戸とみている。低金利の効果が弱まってきているとの判断した。名目民間住宅投資は1・1%増の15兆8500億円としている。

■ 住宅向けフィルム型リチウムイオン電池の生産能力現在の約6倍に

 積水化学工業(大阪府大阪市、高下貞二社長)は23日、住宅向けフィルム型リチウムイオン電池の生産能力を2019年度下期までに、現在の約6倍に引き上げると発表した。19年末には、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の10年間の買取保証期間が終了する太陽光発電システム(PV)搭載住宅が出始める。

 同社は、PVで発電した電気を自宅で効率的に使うための住宅用蓄電池の需要が高まるとみて、約40億円を投資して生産設備を増強する。新築だけでなく、同社のPV搭載住宅でも「自家消費」を積極的に提案する方針のようだ。

■ 改正宅地建物取引業法が施行

 4月から改正宅地建物取引業法が施行され、既存住宅の取引の際には、ホームインスペクション(住宅診断)の説明が義務化された。これによって既存住宅流通やリフォーム市場の活性化への期待が寄せられている。

 インスペクションの実施により住宅売却後のトラブルの回避などが期待されている一方で、その実施の判断は売主や仲介業者に委ねられていることから、売主や仲介業者の理解を深めることがインスペクション普及のカギとの見方が多い。インスペクションの現状、既存住宅市場への影響、インスペクションが定着するための課題について、業界の意見を聞いた。

■ 経済産業省資源エネルギー庁は、省エネルギー性を進める

 経済産業省資源エネルギー庁は、省エネルギー性を従来のZEHよりも進める「ZEH+(ゼッチプラス)」について、事業規模約23億円で展開する方針を示した。補助額は1戸あたり定額115万円で、今年度はおよそ2千件を支援していく。11日に環境省と共催したZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)補助事業に関する説明会の中で示した。資源エネ庁の同事業では、再生可能エネルギーを除いて基準一次エネルギー消費量を25%以上削減することに加え、外皮性能の厳格化基準への適合、エネルギー制御の高度化、電気自動車(EV)用充電設備の設置といった要件を複数満たす必要がある。対象事業者は、昨年度実績のあるビルダーに限り、これまでの実績と目標を評価して事前に採択枠を割り振る。ZEHプラスでは低日射地域や多雪地域での、ニアリーZEHも認める。高度な取り組みを後押しするため、基準を厳格化した上で予算を割り振り、これまではZEH実現が難しかった地域でも柔軟な対応を試みる。

■ ロボットスーツHALを導入

大和ハウス工業(大阪市北区、芳井敬一社長)は10日、全国9つの生産拠点に、サイバーダイン(茨城県つくば市、山海嘉之社長)が開発したロボットスーツHALを合計30台導入した。部資材を持ち上げる際の腰への負担を40%軽減するという。ロボット技術を使って工場の作業環境を改善し、高齢者や女性が働き易い職場環境作りを進める。

■ 「ペット共生住宅」の普及

 世帯ごとの消費支出は年々減少しているのに、ペット関連支出は増加している――この総務省統計局の調査から「ペットのことになると、財布のひもは緩む」との解を導き出したのは、飼主の教育事業などを展開する公益社団法人日本愛玩動物協会だ。同協会は、「ペット共生住宅」の普及に乗り出し、今年1月に共同住宅向けのガイドラインを発行するなど、人だけでなくペットにとっても適正な住環境の整備に注力している。ペットと飼主だけでなく、近隣住民の暮らしやすさ、トラブル防止につながるからだ。ただ、理想の住宅は人それぞれであるように、例えば同じ犬でも個性によって理想の共生住宅は異なる。求められるのはオーダーメード型の住まいだ。「家族としてのペット」にかけるお金は増加傾向。注文住宅が力を発揮できる可能性は大きい。

■ 木は生きている

 インド北東部、メガラヤ州。「雲の住みか」という意味の名前を持つこの州では、モンスーンの季節になると、エメラルド色の谷や深い渓谷を雨水が勢いよく流れる。アッサム地方とバングラデシュに挟まれたこの高原は、地球でも有数の多雨地帯。その一帯に住むカシ族は、森に深く根ざした生活を営む。

 近代的な建築資材が利用できるようになるずっと前から、カシ族は荒れ狂う川を超えて点在する村々をつなぐ巧みな方法を生み出していた。インドゴムノキの根を用いた「生きている橋」だ。
 確かな支えとなるように、木は両岸に植えられる。そして、15年から30年ほどをかけて、竹製の仮の足場に沿ってその根を這わせ、橋をかける。やがて湿度と歩行により土が踏み固められ、根は絡まり合って太く、強くなる。完成した橋は、川や谷の5メートルから75メートル上にかかり、かなりの重さにも耐えられる。一度に最大35人が渡れるほどだ。
 
 
コンクリートや鉄鋼のような近代的な建築資材と違い、この構造は年を経るごとに弾力性を増し、何世紀にもわたって存在し続ける。このあたりでは珍しくない鉄砲水や暴風雨にもしょっちゅう耐えている。生きている根の橋は、急斜面に点在する山村同士をつなぐ低コストで維持可能な方法だ。この伝統的な手法がどのようにして生まれたのか、その正確な起源は定かではない。 
 カシ族は聖なる森を持つばかりでなく、自然への敬意に満ちた日常生活を送っている。メガラヤ州の多くの村と同じように、マウリノンという村には正式な衛生設備はないが、あらゆる人が環境保護を担う。ごみは村のあちこちにある竹製の容器で回収し、多くの村人が従事する農業で肥料として再利用される。
 
 「神の庭」とも呼ばれるマウリノンは、インドで最もきれいな村として知られる。その名前のおかげで着実に観光客が訪れるようになり、地元の経済も潤う。ナレンドラ・モディ首相も、世界屈指の汚染都市を抱えるインドのモデルとして、この村を讃えている。