1

シンエイ通信【平成30年1月31日作成 98号】

平成30年1月31日作成 98号


■ 内閣府 1 月月例、基調判断 7 カ月ぶり上方修正/個人消費・雇用情勢も上方修正

内閣府が 19 日発表した 1 月の月例経済報告によると、国
内景気の基調判断を「緩やかに回復している」とし、前月までの「緩やかな回復基調が続いている」から上方修正し た。判断の引き上げは 17 年 6
月以来 7 カ月ぶり。項目別に も「個人消費」を 7 カ月ぶり、「雇用情勢」を 2 年 1 カ月 ぶりに上方修正した。

 企業業績は回復が目立ち、雇用関連の指標も高水準を維 持している。個人消費も若干持ち直しの傾向が見られる。 まだ景気回復はハッキリと実感できないが、所得の上向き が明確になればもう少し景気回復を実感できそうだ。春闘 が注目される。


 住宅市場は、12 月受注に若干上向きの兆しが感じられる。 新春集客も数・中身とも前年をやや上回ったようだ。ラン クアップの仕掛け、丁寧なフォローを徹底し一件でも多く の受注に結び付けたい。

■ 市場構造変化の2017年、住宅業界10大ニュース
 2017年、住宅市場は転機を迎え、市場構造や勢力図の変化が起こった年と言えるだろう。まず賃貸住宅市場が失速し、マイナスに転じた。2016年度は出来過ぎなくらいに賃貸着工が伸び、住宅着工は上振れた年の反動である。引き続き堅調に推移しているのは建売住宅で、オープンハウスを始め、大手分譲系は好調に推移した。ビルダー上位陣は業績好調で、低層住宅でビルダーが県№1を取った数が初めてメーカーを上回った。ビルダー上位のシェアも一段と拡大した。

 業界再編が動き出した年でもある。16年末に発表された、トヨタホームのミサワホーム子会社が実際に動き出し、10月にはパナソニックがパナホームを完全子会社化。M&Aの動きも活発化した。特に目立ったのが、ハウスメーカーによるゼネコンの買収や資本提携である。11月に発表されたのは、住友林業と熊谷組の資本提携。そしてパナソニックは松村組を傘下に収めると発表した。新築住宅市場の先細りを見据え、各社非住宅にも力を入れ始めた。


 同時に海外強化も進み、住林、大和、積水の3社が海外企業の買収等、国内市場に留まらない動きが活発化した。


 ストック市場では、空き家問題に注目が集まった一方で、引き続き中古マンションの動向は好調であり、買取再販ビジネスも多くの企業が注力した。大手ハウスメーカーはスムストックを強化し、空き家活用の一つとして民泊事業への参入表明も多く見られた。今年6月には民泊新法が施行され、市場は活発化しよう。また今年は4月からの安心R住宅始動や改正宅建業法によるインスペクション斡旋も進み、今まで以上に中古流通は活性化する年になる可能性がある。


 戸建住宅以外の分野が目立った年とも言えるが、AI、IoTでの市場開拓にも取り掛かり始めた年でもあり、あらゆる面での住宅市場の転機の時期が訪れている。今年も増税へ向けての最後の1年とあり、大きな動きが出てくる年となりそうだ。

■ 地域型住宅グリーン化事業

国土交通省が続けている「地域型住宅グリーン化事業」の2018年度事業では、長期優良住宅などの補助限度額を1戸当たり100万円から110万円に引き上げる。認定低炭素住宅および性能向上計画認定住宅も同様に1戸当たり110万円とする。補助率は長寿命化や高度省エネ化のために必要となった掛増費用の2分の1以内となっており、施工経験4戸以上の事業者は今年度と同じ1戸当たり100万円までとする。ただゼロ・エネルギー住宅については引き下げる計画だ。

■ クリナップ初のセラミック製ワークトップ

クリナップ(東京都荒川区、佐藤茂社長)は2月1日、同社システムキッチンのフラッグシップモデル商品『CENTRO(セントロ)』を発売する。同商品の発売は昨年11月16日に行った2018年3月期第2四半期決算説明会の中で「2月頃、システムキッチンのフラッグシップモデルとなる新ブランドを投入する」との表現で表明しており、今期が最終となる中期3ヵ年経営計画における「収益重視経営に向けた変革」の実現として掲げる『中高級品の販売強化』および『リフォーム市場で競争優位となる商品の開発』の施策を実行したもの。『セントロ』の概要については昨年11月下旬から同社の商品を扱う流通・施工店がホームページやブログで情報発信を行っており、クリナップ初のセラミック製ワークトップなど、その高級感とデザイン性に注目が集まっていた。

■ 2018年の景気動向・住宅着工動向についてアンケート

住宅産業新聞社では地域ビルダー各社に対して2018年の景気動向ならびに住宅着工動向についてアンケートを行った。それによると、景気動向については各社が「良くなる」もしくはの「横ばい」と見ていることが分かった。また住宅着工動向については、「前年並み」が4社、「やや減少」が3社、「やや増加」が2社であり、着工数の見通しも88万戸から100万戸と各社の見方はバラツキが感じられた。来年10月に予定されている消費税増税の影響については、各社が「駆け込み需要がある」と考えているが、その対応策は各社それぞれの考えがあることが浮き彫りとなった。

■ 「ノンリコース」化の新制度

一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)は、一定の条件を満たした長期優良住宅などに融資するフラット35などの返済をJTIが肩代わりする「ノンリコース」化の新制度をスタートさせる。返済が困難になった住宅ローンについて、建物と敷地の権利の移転を条件に、残債を引き受けるもの。2017年10月には、ミサワホームが同制度を導入したシステムをスタートさせており、早ければ2月にも、一部モーゲージバンクが取り扱うフラット35などの付加サービスとして、実施するという。

■ 住宅を長寿命化させるためのガイドライン

国土技術政策総合研究所は、木造住宅の新築・購入検討者や居住者向けに、住宅を長寿命化させるためのガイドラインを策定した。施主など住まい手の認知を高めることで設計者や施工事業者など造り手側と住宅の品質につながる情報を共有し、国内の木造住宅の技術レベルの底上げにつなげたい考え。ガイドラインには、耐久性に関わる部材や設計、施工についての情報を盛り込んだ。また、購入検討者が希望する家や現在居住している家について、各ハウスメーカーや工務店の回答する仕様を比較することができるツールも用意。高品質や高い安全性につながる仕様を誇るハウスメーカーや工務店が、他社との比較結果から自社の訴求につなげられるようにした。

■ 大建工業が畳おもて事業

大建工業(大阪市北区、億田正則社長)が畳おもて事業の生産・販売を強化する。同社のグループ会社で主に東日本エリアの供給を担う会津大建加工の工場の生産体制を合理化・増強し、9月に稼働させる。販売強化では昨年12月下旬に発売した機械すき和紙を原料とする畳おもての新商品『銀白 極(きわみ)』と既存品『銀白』の新柄『銀白 市松(いちまつ)』の販売を強める。『市松』は2020年の東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムにも採用された日本の伝統柄。生産・販売の強化は共に、訪日外国人の増加や20年のオリンピック・パラリンピック対応で、宿泊・商業施設事業者が和室対応を強化することを予想しての施策。生産強化では会津大建加工の現状の生産量である月産3万畳を、19年3月までに33・3%増の4万畳に引き上げる計画だ。

■ ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化の補助

経済産業省資源エネルギー庁は、2018年度のネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化の補助として30億円を盛り込んだ。これまでのZEH補助事業は環境省の事業となり、同庁では、さらに省エネ性の高いZEHを「ZEH+(ゼッチプラス)」として補助する。また、マンションなど規模の大きい共同住宅の支援にも乗り出し、この30億円で対応する。補助額は1件当たり、115万円。省エネ性を引き上げるのに、より高性能な設備・建材が求められることから増額した。環境省や国交省などはZEH補助への予算案の額を明らかにはしていないが、経産省では3省連携となることから、「合算するとだいたい前年と同額」という。ZEH+の基準は厳しく、件数は絞り込まれる可能性もあることから、他省との連携を通じ、同規模の事業を展開する予算は確保したとの認識だ。