1

シンエイ通信【平成29年10月31日作成 95号】

平成29年10月31日作成 95号


■ 戸建住宅

 2016年度はハウスメーカー間で明暗が分かれ始めた。順位は一部で入れ替わったが大きな変化はなく、ほとんどの企業は横ばい水準で落ち着いた。やはりアーネストワンが強かった。2年連続で1位を堅持し、今回唯一の1万戸超。飯田グループ内でも早くから飽和した首都圏市場から抜け出して全国展開し、積極的に地方に進出したことが奏功している。2位の一建設は前回の1万戸は惜しくも割ったものの、ほぼ横ばい。飯田グループ内でも、アーネストワンに次いで地方展開が多い。3位の住友林業は、微増の8000戸台で堂々のトップ3。やはりビッグフレーム工法が今回も強かった。そして挽回してきたのが4位のタマホームで、全壊6780戸から841戸も増加して順位を上げた。
 2011~2012年ごろに1万戸前後まで拡大したが、その後7000戸前後まで減少。中期経営計画を策定して事業層の拡大を図り、改めて定価格帯の商品を見直すなど、挽回に向けた施策が実った形となった。続くミサワホームは、7000戸は割ったもののほぼ横ばい。住友林業とも共通して、高い技術力を背景にしたブランド力が絶大で、特に耐震に対する顧客からの信頼度が高い。これが、後を追う大手ハウスメーカー群との決定的な違いかもしれない。2社の影を踏まんとするのが飯田産業で、恐らく2015年度の6500戸前後から、2016年度は7000戸弱まで増加している。そして、例年どおり4000戸台と3000戸台後半が群裕割拠の激戦区だ。ここに飯田グループのアイディホームが参戦し、4000戸台の枠トップ。加えて、躍進を続けるのがオープンハウスだ。前回の3544台から555戸も増やして順位も2つ上げた。

 東京23区内の分譲住宅建設では、ほとんど敵なしだ。順位は多少入れ替わったものの、積水ハウスと東栄住宅、LIXIL住宅研究所が4000戸前後の横ばいで続き、この3社も安定感が強い。3000戸前後のゾーンでも強豪がひしめき、三井ホーム、ポラスグループ、桧家ホールディングスが名を連ねる。三井ホームが数年連続で戸数を落としている一方、ポラスグループが落ち着いた足取りでじわじわと増加。桧家ホールディングスも全館空調を積極展開。続く住友不動産は軸組も展開し、アイダ設計、北陸の雄である秀光ビルド、ケイアイスター不動産が2000戸台だ。

■ 国土交通省 賃貸改修事業募集

 国土交通省は、住宅確保が難しい要配慮者専用の賃貸住宅改修事業の申請を募集する。また同時に、家賃債務保証業者の登録規定も定めた。
どちらも25日に施行される新住宅セーフティネット制度に合わせたもの。賃貸住宅改修の申請期間は2018年2月28日。 家賃債務保証業者の登録制度も25日に施工し、同日に登録申請の受付を始める。新たな住宅セーフティネットとは、民間賃貸住宅や空き家などを活用し、住宅確保が難しい要配慮者向けの賃貸住宅を登録する制度。登録された住宅の改修・入居への支援措置や、住宅確保要配慮者への家賃債務保証の円滑化も進めていく。
 そのための住宅を早期確保し、供給促進を図るため、既存住宅などを改修して住宅確保要配慮者専用の住宅とする民間事業者などに対し、国がその費用の一部を補助するもの。 新たな住宅セーフティネット制度は主に3点からなる。住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度、登録住宅の改修や入居者への経済的支援、住宅確保要配慮者の居住支援の3つだ。賃貸住宅の改修事業における補助要件は、住宅確保要配慮者専用住宅として登録されるもので、登録専用として10年以上登録するものなど。また補助率と限度額は改修工事に要する費用の3分の1以下の額、限度額は戸当たり50万円。ただし共同居住用住宅に用途変更するための改修工事、間取り変更工事、耐震改修工事のいずれかを含む場合は同100万円。

■ クリーンウッド法

 クリーンウッド法基づく木材関連事業者の登録を受け付ける登録実施機関が、公表された。日本合板検査会、日本住宅、木材技術センター、日本ガス機器検査協会、日本森林技術協会、建材試験センターの法人で、11月以降順次、登録を希望する事業者の申請受付を開始する。
今年5月に施工されたクリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)では、木材・木材製品を加工、流通、使用する工場や商社、住宅会社などの木材関連事業者を対象とした登録制度を新たに設けた。
登録事業者は、合法性が確認された木材を積極的に取り扱っていく企業姿勢を表明し、実際に取り扱い、その実績等を報告する。
登録機関はその申請受付と登録を行う機関で、登録事業者になることを希望する木材関連事業者は、今回決定した機関のいずれかに申請を出すことになる。
機関の中で日本合板検査会と日本ガス機器検査協会、建材試験センターはすべての木材関連事業者を対象とし、日本森林技術協会は取り扱う主たる木材が国産材であるものに限り、日本住宅・木材技術センターは第2種木材関連事業で建築関連に限る。
機関ごとに申請受付の開始時期や登録料は異なるが、早い機関は11月中に申請受付を開始する。登録料も機関で大きい差異はない見通し。

■ 人手不足の対応様々 福岡、熊本ハウスメーカー
 
 福岡、熊本県などの都市部を中心に、大工などの職人不足が慢性化している。福岡県では全国ビルダーや地域有力ビルダーなどが施主と相談、仕事量を平準化させるなどの取り組みも行われている。
 熊本県の地域ビルダーは、大工の仕事を建て方のみに集中させることで効率化を図っている。回転数を上げることで職人不足に対応しようとするものだ。
 そのほか施工に関連する協力業者を増やすなどして、同県外での事業拡大も視野に入れる。ある地域ビルダーの社長は「今後の施工能力を熊本地震前比で2倍まで引き上げたい」と話す。
 福岡県は県内のプレカット工場の稼働率が高い。「加工賃は上がっていないが、部材の入荷に1カ月程度掛かっている」状況だ。
 同県は昨年比で新設住宅着工数は横ばいだが、木造住宅の占める割合は微増となっている。沖縄県の木造住宅比率が徐々に高まっていることも特徴となっている。
 昨年4月に地震が発生した熊本県は、昨年10月から新設住宅着工数が月1000戸を超える状況が続いている。
 昨年8月ごろから地震前に受注していた新築住宅が動き出した。その後、被災地の周辺地域などで新築着工や補修が進んだ。
 同県内の有力地域ビルダーのなかには一時的に受注制限を行う動きもあった。受注から着工まで1年を要し、工期も伸びていたことが背景にある。来年夏ごろをめどに平準化を目指す。
 今年の九州地区は梅雨時期から国産材製品の荷動きが堅調に推移している。構造材などの資材不足で現場工事が遅れる事態を警戒する声が、流通業者を含めて関係者から聞かれている。

■ インスペクション事業開始
 
 日本木造住宅耐震補強事業者協同組合は、改正宅建業法対応の既存住宅状況調査を行う。「木耐協インスペクション」事業を始める。
 同組合がこれまでに実施した16万棟の耐震診断と5万棟の耐震改修の実績・技術を生かしてインスペクションを提供するもの。木造戸建て住宅を対象とし、既存住宅状況調査技術者の資格を持つ木耐協事務局と組合員が調査を実施する。
 検査・報告システムには、構造計画研究所が開発した木耐協インスペクション版「つなぐハウス」を使用する。調査費用は、165㎡以下が5万円(税別)、165㎡を超える場合は別途見積もり。耐震診断、耐震基準適合証明書発行、フラット35適合証明検査、証明書発行などのオプションもある。

■ 木の建築 神勝寺

 神勝寺(広島県福山市)は、1965年に当時の神原秀夫常石造船社長らによって設立・建立された臨済宗建仁寺派の寺院。境内には鎌倉から移築され信仰活動に使われる大徹堂(非公開)をはじめ、史料に沿って復元された2棟の茶室、浴室、滋賀県から移築された茶房、寺事務所等を備える。
「禅と庭のミュージアム」と位置付け、昨年は禅の道程を光と音で表現するインスタレーションが体験できるアートパビリオン「洸庭」がオープンした。
 神勝寺は、造船業を営んでいた神原氏が海難事故の犠牲者の供養のために開いた。洸庭の建築やインスタレーションを監修した彫刻家の名和晃平氏はその由来に基づき、建物のモチーフに「舟」を選んだ。
 16本のコンクリートの柱に支えられた建物本体は鉄骨造。幅19㍍、長さ46㍍、高さ10㍍の規模は大型船を思わせるスケール感がある。周囲の景観になじむ形を模索した屋根は、寄棟の形状だ。建物を短辺から見ると、屋根は富士山のような美しい稜線を描く。長辺側から横に広がる屋根は、古刹の大伽藍を彷彿させる。
 下部の軒天は、大型船の船底の形となる。柱の足下の地面には、ゴツゴツとした割り石を敷き詰めて海原を表現している。
 建物全体がサワラのこけら葺きで覆われ、その数は約59万枚。軒天には厚さ6㍉、10㌢四方の板を整然と張り巡らし、屋根には、伝統の製法により手作業で1枚ずつ薄く割かれた、短冊状のサワラのこけら板が竹釘を使って丁寧に葺かれている。紫外線によって銀色に色あせた屋根面と、まだ瑞々しい木肌色を保つ軒天部分のコントラストが鮮やかだ。
 境内にある寺務所の木造建築は、著名な建築家・藤森照信氏が設計した。瀬戸内海沿岸に多い松をイメージして松堂と名付けられた。近くの山から伐り出された松丸太の表面を削り、歩廊の柱として使う自然と調和した建築になっている。
 このほか、京都御苑内にあった旧華族邸宅の総ケヤキ造りの総門などが移築されている。それらは同寺の禅画コレクションとともに鑑賞に値するものだ。

■ 木材業界 今後は有望

 日本で林業が「もうからない産業」の代表格のように言われて久しい。1950~60年代は戦後復興と高度経済成長を支える花形産業だったが、60年代後半になると状況が一変。安い外材の輸入に押され、人件費の高騰とともに、きつい作業を嫌う若者の増加で就業人口が減り、もうからない衰退産業になった。こうしたストーリーが「常識」として定着していた感がある。だが、近年、こうした常識を覆すような研究や事例が相次いで浮上し、林業関係者や森林を守る非営利組織(NPO)などで議論の的となっている。その内容を精査すると、日本の林業は今「もうかる林業」へ生まれ変わる転換点にあるのかもしれない、と思わせるものが多い。そんな議論の最先端を垣間見たのが6月9日、「我が国の森林・林業再生をいかに進めるか」をテーマに東京で開かれた「震災復興支援フォーラム」だった。
 「現在の日本には60億立方メートルもの森林蓄積がある。世界最大の林業国、ドイツの2倍もの規模で、我々は宝の山の上にいるようなものだ」。基調講演をした内閣官房国家戦略室の梶山恵司・内閣審議官は、日本の山林の有望性をこう説明した。「日本林業はよみがえる」という著作もある梶山氏は、4月に公布された改正森林法で推進する「森林・林業再生プラン」の策定などに携わった森林・林業問題のスペシャリストだ。森林蓄積とは、木材用として使える立木がどれだけ山林に残存しているかを示す。日本は森林蓄積が20億立方メートルしかなかった高度経済成長期の60年代前半に、毎年6000万立方メートルを伐採し続けたことで「木材資源を、ほぼ刈り尽くしてしまった」(梶山氏)。当時の木材需要は年1億立方メートルもあったとされ、この不足分を補うため外材の輸入が自由化された。

 伐採後の森に針葉樹の植林を続けてきた日本だが、材木用途で伐採に堪えるようになるまで、長きにわたり利益の出ない「蓄積の時代」をさまよってきた。その間、戦後すぐには全国で45万人いた林業の担い手は、現在5万人を切るまでに激減。うち65歳以上の就業者が3割近くと高齢化も進んだ。だが、梶山氏は、安い外材や人件費高騰といった林業疲弊の原因とされる要因も、「従来の常識を冷静な目で見直せばチャンスがあると分かるはず」と強調する。 高い人件費についても同様だ。前述の梶山氏の著作によれば、欧州の主要林業国、オーストリアでは伐採などに使う林業機械の作業員に支払われる人件費は1時間あたり29ユーロ(約3400円)。1日では3万円超にもなり、日本に比べて2倍近いという。それでいてオーストリアの林業家はきちんと利益を確保しながら森を健全に維持している。現在の日本の森林を健全に保つには毎年5000万立方メートルの伐採が必要で、それだけ切っても年間1億立方メートル分ずつ森林蓄積は増えていくという。「人材とともに持続可能な森林を育成すれば、今後40~50年はまともな林業を日本に根付かせることができる」 仮に年間5000万立方メートルの木々を国内消費すれば、木材の国内自給率は50%になると試算されている。こんな豊かな資源を抱えた日本の山を見直す時期は、確かに今しかないかもしれない。

■ 国土交通省 省エネ基準適合率向上へ向け

 国土交通省は9月28日、省エネ基準適合率向上の為研究会を立ち上げた。
2017年度から全面施工された建築物省エネ法の施工状況を把握するとともに、住宅・建築物の省エネ基準適合率向上に向けた課題を整理するもの。  
2018年3月まで半年間、月1回の会合を開きとりまとめを進めていく。2020年の住宅適合義務化へ向け着々と進めれている。