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シンエイ通信【平成29年6月30日作成 91号】

平成29年6月30日作成 91号


■5月住宅着工戸数、3か月ぶりの減少

国土交通省が発表した5月の新設住宅着工戸数は、前年同月比0.3%減の7万8481戸でした。季節調整済み年率換算値は99.8万戸で前月比0.6%の減少となりました。

持家、貸家は増加しましたが、分譲住宅が減少したため全体では3カ月ぶりの減少となりました。

持家は実数ベースで2万3846戸、前年同月比1.5%増。年率換算値は30.2万戸で前月比2.9%増となりました。30万戸を超えたのは2016年7月以来10カ月ぶりとなっています。

■空き家対策中間取りまとめ公表

国土交通省は空き家対策などの中間とりまとめを公表しました。

具体的な取り組みとして、

地方自治体の首長で構成する空き家対策全国協議会を設置
空き家の発生予防策として、相談窓口の設置や相談会の開催などを進める

また、空き家の流通におけるビジネス的なインセンティブを強化するため、宅地建物取引業者の媒介業務に係る負担の適正化を図り、空き家の再生・リノベーションを進めるため、コンバージョンや用途変更が円滑に行えるよう、規制の見直しも進めるとのことです。

空き家対策に関連して、今後の不動産業の発展に向けた取り組みの方向性も提示しました。

サービスの拡大や業務の効率化、新たなビジネスの創出に向け、ICTなどの新しい技術を取り入れ、従来の不動産分野の枠を超え、産学官が連携して分野横断的に取り組んでいくとのことで、「安心R住宅(仮称)」等の既存住宅物件に係る情報提供を充実させる仕組みの構築等により、消費者が空き家を安心して購入できる取引環境の整備を進めることが必要であるとしています。

さらに、空き家等に係る情報提供を充実させるため、「全国版空き家・空き地バンク」を構築し、登録物件に対するインセンティブの付与等を通じて当該バンクを基軸とした施策を強化し、その活用を支援すべきとし、不動産関連団体等の持つノウハウや経験等を活かした取組を推進するため、不動産関連団体等が連携して地域のために行う空き家対策の活動等の支援を一層進めるべきであるとしています。

詳しくは以下
https://www.mlit.go.jp/common/001190538.pdf

■NRIによる2030年度までの
     新設住宅着工戸数およびリフォーム市場規模の予測

株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)は、2016~2030年(度)までの新設住宅着工戸数およびリフォーム市場規模を予測し発表しました。

新設住宅着工戸数は、2020年度には約79万戸、2025年度には約67万戸、2030年度には約54万戸となる見込みです(図1)。

一方、広義のリフォーム市場規模は、2030年まで年間6兆円台で横ばいに推移すると予測されます(図2、狭義の市場はそれより1兆円前後少ない規模)。


また、2030年の既存住宅流通量は34万戸に増加し、空き家は2033年に2,000万戸超へと倍増すると予測しています。

NRIの予測では、既存住宅の除却や、住宅用途以外への有効活用が進まなければ、2033年の総住宅数は約7,130万戸へと増大し、空き家数は約2,170万戸、空き家率は30.4%へと、いずれも上昇する見込みです。

2000~2015年の各年における住宅購入者(日本全国の25~59歳の男女9,204名)を対象にNRIが実施したアンケート調査によると、既存住宅を購入した世帯の比率は、2005年の18%から2015年には29%に増加しました。

この傾向が2016年以降も継続すると仮定すると、既存住宅流通量は2025年に31万戸、2030年に34万戸へ増加すると予測されるとのことです。


■2017年度地域型住宅グリーン化事業の募集スタート

「地域型住宅グリーン化事業」について、2017年度のグループ募集が6月21日より開始されました。予算額114億円が充てられた今年度は、対象の一つであるゼロ・エネルギー住宅について外皮基準が強化され、新たに「BELS工務店」が定義されるといった変更がなされています。

今年度よりゼロ・エネルギー住宅については、工務店様における同事業の活用実績に応じた補助額が設定されました。過去2年度のゼロ・エネルギー住宅の実績が4戸以上の場合は150万円かつ対象経費の2分の1、4戸未満の場合は165万円かつ対象経費の2分の1を上限に補助されます。

また、昨年度同様、主要構造材(柱・梁・桁・土台)の過半以上に地域材を使用する場合は上限20万円が、増額されます。

三世代同居対応住宅とする場合は30万円がそれぞれ加算されます。

ゼロ・エネルギー住宅の要件については、昨年度から4点ほど変更がなされました。

1つ目に、外皮性能の基準がこれまでの省エネルギー基準から強化され、経済産業省によるZEHと統一化されました。外皮平均熱貫流率は地域区分ごとに定められた基準(ZEH外皮強化基準)を満たすことが必要となります。

2つ目の変更点として、外皮性能の向上を図るべく、ZEH外皮強化基準よりも更に高い基準となる「ランクアップ外皮平均熱貫流率」が設定されました。これを達成する住宅の供給割合が高いグループについて優先的に配分を行うとしています。

3つ目に、太陽光発電の普及が進んできている状況から、太陽光発電工事が対象経費から除かれることになりました。なお、再生可能エネルギーとして太陽光発電を用いる場合には、昨年度同様に余剰買取のみが対象となります。

ゼロ・エネルギー住宅における変更点の4つ目として、

①自社建設の住宅でBELS評価を取得した経験があること
②2020年までに自社で建設する全住宅でBELS評価を取得する旨を目標に掲げること
③自社で建設する全住宅のうちBELS評価を取得した割合を少なくとも
 2020年まで毎年度報告すること
④国土交通省などによるBELS普及の取組に協力すること

の条件を満たす工務店様を「BELS工務店」と定義し、その割合が高いグループに対して優先的に配分することが示されました。

ゼロ・エネルギー住宅については、昨年度のBELS評価の原則化に加え、今年度より「BELS工務店」が定義されたことから、国がBELSの更なる活用により「性能の見える化」を進め、省エネ性能の向上を図りたい意向が読み取れます。2020年に省エネ基準適合義務化を控える中、BELSに対応した家づくりが求められるようになってきていると言えます。