平成27年5月31日作成 68号
|
■空き家判定「1年使用なし」目安
危険な空き家の所有者に対し、市町村が撤去や修繕などを命令できる「空き家対策特別措置法」が26日より全面施行されました。全国の住宅に占める空き家の割合は約13.5%、約820万戸(2013年、総務省まとめ)に上り、今後の人口減少に伴って更に増加する懸念があるため、特措法で空き家対策に関する市町村の権限を強化し、空き家増加の抑制を図ることが目的となっています。
特措法では、
地震などで倒壊のおそれがある
著しく不衛生で有害
管理されず景観を損なう
周辺の生活環境保全のため放置が不適切
などの空き家を「特定空き家等」と定義し、市町村は特定空き家に立ち入り調査行い、撤去や修繕に向けて所有者などに指導や勧告、命令することができるようになります。
所有者が命令に応じない場合、行政代執行による強制的な解体・撤去が可能で。命令に違反すれば50万円以下の過料、立ち入り調査を拒んだり妨げたりした場合は20万円以下の過料を科すこともできます。また政府は空き家の所有者把握のための固定資産税納税情報の内部利用や、空き家に関するデータベースの整備などの対策を自治体に求めていて、これらの情報も今後は活用される模様です。
施行までは住宅が建つ土地には固定資産税が最大6分の1に引き下げられる税制上の特例がありましたが、この減税措置が空き家放置の一因との指摘もあり、自治体が所有者に勧告した時点で固定資産税の特例は解除されることになりました。具体的な空き家認定の基準は「1年間使用がない」ことがガイドラインに示されています。
なぜ地方では空き家が増えるのか?
地方では都心部より空き家が多く見受けられます。人口減少、少子高齢化が今後も進むことを考えれば、地方でよりいっそう空き家・空室の問題が深刻さを増すことはたやすく想像できます。では、どのような理由で空き家が増える原因となっているのでしょうか?
「貸したらとられる?」
こういう考えは今も根強く残っています。更新が前提の賃貸借契約だと出て行ってもらえないという不安が残るかもしれません。一度貸したら出ていってもらえないとの恐怖から貸すくらいならそのまま放置というパターンが多いようです。このような場合、「定期借家契約」を利用して契約を結べば、更新を前提としていないので、最初からある一定で返すという契約の元、貸すことができます。また契約者との人間関係が築かれれば数十年といった長い契約もあります。
「ご先祖様に面目がたたない?」
田舎では家を「ただの物件」とみる感覚は少なく、「代々続いてきた家を守る」という観念は今でも強く、「みんなの思い出の場所」「そこに家族の歴史がつまっているもの」としての愛着が大きいのです。ですから子供や孫が帰ってきたときのことを考え、貸さずに放置している場合が多いようです。ですが、子も孫も出て行ってしまい、空き屋になったまま数十年誰も住んでいない家は日に日に劣化します。その姿を果たしてご先祖様は喜んでくれるのでしょうか?
本当に必要としている人に貸して、もう一度灯をともすということ。血はつながっていなくても、この土地を大切に思い、その家を愛してくれる人につなげていく。その行為こそ、ご先祖様も喜ぶ行為ではないでしょうか?
「家具や日用品がそのままで貸せない?」
使わなくなった家には、色んなものがあちこちから集まってきます。とりあえずあそこに置いておこう的なもの。または、住んでいた当時のものがそのままあることもあります。「こんな状態じゃ貸せないよ」という方も多いですが、今はその処理も含めて貸す(そのかわり家賃は安いとか、改築してもいいとかの条件もつける)ということもできます。
「貸すのはもったいない?」
実際はもう誰も使ってなくて、朽ちていくばかりの家ですが、「家を貸すのはもったいない」「中にあるものがもったいない」という考えに取り付かれてしまうことも多いようです。普段明らかに使わないものに対して「もったいないし、とりあえず置いておくか」ってことが人にはよくあります。けれど、「とりあえずとって置いたもの」っていうのは、結局一切使わないものがほとんどです。ですので、借り手が見つかるうちに貸して活用するのも重要です。
これからの時代、新築ばかりではなくリノベを含めたリフォームを行って空き家をうまく活用していくことも重要になってくるでしょう。空き家が持っている『賃料の安さ』や『自由度の高さ』といったメリットを、もっとオーナーだけでなく借り手にも知ってもらうことも重要です。今後の住宅業界の突破口は空き家をいかにリノベ・リフォームに繋げ、甦らせるかにあるのではないでしょうか?