シンエイ通信
シンエイ通信【令和元年3月2日作成 123号】
- 2020.03.3 | シンエイ通信
シンエイ通信【令和元年3月2日作成 123号】
◇新型コロナウイルスの感染拡大 住宅業界への影響も深刻化
住宅設備機器・建材の国内メーカー各社は2月中旬、中国での新型コロナウイルスの感染拡大や春節(中国の旧正月)の期間延長などにより、サプライヤーからの部品の供給遅延が予想され、トイレやバス、システムキッチンなどを中心に一部製品の生産・供給に納期の遅れが発生する可能性があると、工務店などに対して相次いで通知を出した。すでにコーポレートサイトで告知しているTOTOをはじめLIXIL、クリナップ、パナソニック、タカラスタンダード、ダイキン工業、永大産業、ハウステックなど多くのメーカーが納期の遅れや受注(出荷)ストップの可能性を知らせている。
まずは顧客(施主)対応を
先の見通しが不透明な中で、今後、事態が長引けば、状況はさらに深刻化する恐れがある。工務店が急いで対応しなければならないのは顧客(施主)対応だ。弁護士の秋野卓生さん(匠総合法律事務所)は、後々のクレームやトラブルを未然に防ぐ意味でも「まずは顧客に状況を告知し、工期変更の合意書を取り交わすことが必要」
工務店に対する緊急アンケート調査の結果によると、入手しにくくなっている設備機器・建材は、トイレ、キッチン、バス、食洗機、内装建具、金物、断熱ブラインドなど広範に及ぶ。工務店経営者の一人は「(部品供給など)あらためて中国に頼っている現状を思い知らされた」と話す。
新型コロナウイルス感染拡大で設備機器・建材が入手しにくくなっていることの具体的な影響については、63%が「工期の延長」と回答。次いで多いのは「着工の遅れ」の24%。新規受注を控えているとの回答が13%、施工現場がストップしているとの回答も9%あり、状況が深刻化し始めていることをうかがわせる。
アンケートに回答した工務店経営者からも「引き渡しの遅延による資金繰りの悪化」や「施主のつなぎローンの金利負担の増加」、「施主からのクレーム対応」などを懸念する声があがった。そのほかにも「工期の大幅な遅れが売り上げの減少につながり、財務体質のぜい弱な零細工務店の倒産を引き起こすのではないか」との見方もあった。
3月末は決算期に当たる企業も多いことから、引き渡しの遅れによって決算内容が悪化することを危ぶむ声も。また、事態が長引いた場合に、補助金を受けて行う工事への影響を心配する声もあった。
新型コロナ、住設なしでも工事完了認める
国土交通省は2月27日、新型コロナウイルスの感染拡大によりトイレやキッチン、バスの他ドアなど住宅設備・建材の納期遅れが広がっていることを受けて、対応の周知を都道府県などに対し行った。施主の理解を前提に、一部の設備などがないことを理由に工事完了を認めないということがないよう、柔軟に対応するよう求めている。
一部の設備などがないことについて「軽微な変更」に該当する場合、完了検査申請書の「確認以降の軽微な変更の概要」欄に、変更内容が記載されていれば問題なしとする。「軽微な変更」については建築基準法施行規則に定めている。「軽微な変更」に該当しない場合は、原則として「計画変更」となるため、申請者となる事業者に対して、時間的余裕を持って対応するよう周知することを求めた。「軽微な変更」や「計画変更」については、施主に十分に説明することも求めている。
国交省では2月27日付で都道府県に対し、管轄の特定行政庁と都道府県知事指定の指定確認検査機関への周知を要請。国管轄の指定確認検査機関の他、住宅生産団体連合会(東京都千代田区)など住宅、設計、施工、不動産といった各業界団体にも周知した。国交省によると2014年2月の大雪で設備工場が被害を受けて供給が滞った際も、同様の周知を行ったという。
◇4号建築物の設計図書保存期間が15年間の義務化
3月1日から建築士法が改正され、4号建築物の設計図書保存期間が15年間に義務化される。
あまり周知が進んでいると思わないが、4号特例廃止の変わる「事実上の4号特例廃止」の効果が見込まれる。
4号特例とは、4号建築物、つまり木造住宅2階建て以下で延べ床面積500平方メートル以下の住宅については、構造計算書の添付を確認申請時省略できる特例である。
構造計算書を作成しなくてもよいという木造業界の身勝手な考え方から、4号建築物で構造計算を行っていないケースが多いとされている。
これが阪神大震災や姉歯事件(耐震偽装事件)など木造住宅の構造に起因する大きな事故の遠因に当たるという主張があり、地震や事件があると4号特例の問題点が浮上する。
しかし、4号建築物の確認審査時に構造計算書の添付を義務化し、これを審査するとなると大変な手間が生じる。
耐震偽装事件後の確認申請の厳格化で確認審査機関に長蛇の列ができ、官製不況と批判を浴びた行政は重い腰を上げなかった。
ただ、リスクを建築士に負わせる施策は建築士には大きな重圧になる。行政は、建築審査の業務量の拡大を避けながら、建築士法改正で構造計算をしないことのリスクを
建築士に15年間負わせることで、大きなプレッシャーを与えられると考えたのだろう。
真面目に構造計算書を作成してきた建築士は何の問題もないのだろうが、設計をすればするほどリスクが増加し累積する。
建築士の責任は増加するばかりだ。
省エネ基準法の適合義務化の先送りも、施主に建築士が省エネ基準への適合、不適合を説明することが求められ、省エネ基準適合への外堀を埋めるような制度だ。
もちろん、こうした建築士への責任拡大、施主、消費者保護が進んでいくのは歓迎すべきことだと思う。
木材・建材業界では、4号建築物の設計図書保存義務化への周知やサポート、積極的な構造計算の提案などもあって良いのではないかと感じる。
特にプレカット工場は構造伏図の確定情報を持ち、それをベースに加工を行う。今回の設計図書保存義務化は罰則規定もあり、
罰金リスクに15年間おびえながら業務をこなすよりは、構造計算をきちんと行い、設計図書保存をした方がどれだけ良いか。
ある意味、プレカット工場にとってはビジネスチャンスだ。
まっとうな仕事をして対価を得る。耐震性能の優れた木造住宅が供給されることが当たり前の世界の現実に向け取り組んでいく時ではないだろうか。
◇太陽光の“卒FIT”53万件をめぐる争奪戦! 電力買い取りと家庭用蓄電システムに商機
2019年11月より、法律にもとづく住宅太陽光発電の電力買い取り期間を終える世帯が大量に現れる。
2009年11月にスタートした太陽光発電「余剰電力買取制度」の初年度認定案件が、買い取り期間の満了を迎えるのだ。
同制度は2012年に「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」に移行し、認定案件は増大し続けた。
買い取り期間を満了した発電設備は総称して「卒FIT」と呼ばれ、エネルギー事業者が大きなビジネスチャンスとして期待の目を向けている。
太陽光発電設備は、国の買い取り保証期間である10年を過ぎても、まだまだ発電し続ける。
そこで卒FITユーザーは、改めて「自由契約によって余剰電力を売電する」、あるいは「家庭用蓄電池などを導入して、
太陽光で発電した電力を可能なかぎり自宅で使う(自家消費)」ことを考えるようになる。そのため、エネルギー事業者はこうした
電力の買い取りサービスや、自家消費に役立つ機器の需要拡大を見込んでいるのだ。卒FIT案件は、2019年だけでも53万件。
2023年には累計165万件、発電設備容量では合計670万kW(キロワット)にも達する見通しだ。
一般住宅にも設置が可能な、電気自動車(EC)用AC充電器「Q-VEC」の販売をこのほど開始した。
家庭の電力契約に合わせ24Aおよび30Aの2モデルを用意している。
EVのより長い航続距離のニーズに伴い、搭載されるバッテリーも大容量化が進んでいる。そうした中、充電器にも高出力が求められている。
Q-VECの30Aモデルは最大6kWで充電が可能であり、30kWhのバッテリーを搭載したEVで約5時間、40kWhの場合は約7時間でフル充電することができる。
充電中の情報なども専用のアプリケーションを利用することで、リアルタイムに監視可能だ。
また、バックエンドサーバとのイーサネット通信や、IP55の防塵(じん)防水による高い耐候性、IK08相当の耐衝撃性などを備えている。
本体の外形寸法は350×400×126mmで、質量は約7kg。充電ケーブルはストレートケーブルで、長さは5mとなっている。
同時発売の専用オプション品であるデマンドコントローラー「EVUJ 100」を使用することにより、家庭の契約電力量を超えないように
EVの充電で消費される電力を制御することができる。Q-VECを設置する際に、契約電力値の大幅上昇を避けることが可能だ。
◇建設経済研究所の2020年度住宅着工予測85万4500戸へ
建設経済研究所は1月30日に公表した建設投資見通しとして、20年度の新設住宅着工予測は前年度比4・2%減の85万4500戸となる予測を発表した。
貸家の減速が大きく影響するという。また持ち家も、消費増税対策の効果が剥落して減少するとの見通し。
分譲マンションは、販売価格の高騰を背景にして19年度以上のマイナス幅を見込む。
一方分譲戸建ては、都市部周辺部を中心に増加すると見通している。リフォーム・リニューアル工事については今後堅調な推移を見込む。
◇マンションの長寿命化等を支援する事業を創設
1.背景・目的
高経年マンションストックが増加し、建物等の老朽化や管理組合の担い手不足等の課題
が見込まれるなか、再生の検討から長寿命化に資する改修等について先導性のあるモデル
的な取組みを支援し、事業の成果を広く公表することにより、老朽化マンションの長寿命化・
再生への取組の広がりや意識啓発を進めます。
2.マンションストック長寿命化等モデル事業の概要 詳細は添付資料をご覧ください。
以下の2つの類型(計画支援型/工事支援型)で募集をします。応募のあった事業の中から
有識者委員会で先導性等を審査した結果を踏まえ、支援するプロジェクトを決定します。
(1)計画支援型
事業前の立ち上げ準備段階において、長寿命化等に向けた事業を実現するための必要な
調査・検討などに対して支援します。
(2)工事支援型
長寿命化等の工事の実施段階において、長寿命化に資する工事のうち先進性を有するもの
に要する工事などに対して支援します。
(※)有識者委員会で認められた場合は、建替えの場合も支援対象となります。
3.今後の予定
・詳細は、今後公表する募集要領等に掲載します。
・募集の開始は今年4月中を予定しており、ホームページ等で公表します。
(※)なお、国と地方公共団体においてマンション施策を一体的に進める観点から、取組みを行うマンションが所在する
地方公共団体において、マンション管理に関する計画や条例等を策定している(策定見込みを含む)こと等が事業
要件となります。(該当する地方公共団体は、国土交通省のホームページで後日公表する予定です。)